第4話:『聖域の浄化、ミーニャの真実』
獣人国の聖地『牙の聖域』。
かつては清冽な魔力が満ちていたはずの古城と泉は、今やドス黒い「深淵の泥」に飲み込まれ、不気味な心音のような拍動を繰り返していた。
「……あそこ。……私の、生まれた場所。……でも、もう、何も聞こえない」
ミーニャが指差したのは、泥の繭に包まれた巨大な拝殿だった。
里を追放された彼女にとって、そこは恐怖と孤独の象徴。だが、シュウは無造作に彼女の背中を叩いた。
「……聞こえないなら、俺たちが『美味そうな音』を響かせてやる。……行くぞ」
拝殿の奥から這い出してきたのは、泥に侵食され、異形へと成り果てた聖域の守護獣『黒泥の双頭獅子』だった。
人型ではない。だが、その巨体からはアスモデウスに匹敵する、禍々しいプレッシャーが放たれている。
「グルル……アァァァァン!!」
咆哮一閃。衝撃波で周囲の石柱が粉砕される。
「リィネ、急所を視ろ! フィオナ、重力で動きを縛れ!」
「了解ですわ! ……シュウ、眉間の一点! そこが泥の核(心臓)ですわ!」
リィネの千里眼が、泥の奥に潜む「不純物」を射抜く。
「逃がさない! ……沈みなさい、出来損ないの神獣!」
フィオナの重圧が獅子を地面に叩きつけ、その巨体を釘付けにする。
シュウが地を蹴った。
手にした新たな包丁が、七色の光を帯びて唸りを上げる。
「……人型は喰らわんと言ったが、……その泥の奥に眠る『本来の命』……俺が救い出してやる」
【境界解体:一刀浄化】。
シュウの振るった刃が、獅子の眉間を正確に断ち割った。
鮮血は流れない。代わりに、噴き出したのは浄化された白い光と、剥がれ落ちる黒い泥の塊だった。
シュウはそのまま、獅子の体内にあった「泥の核」を掴み取り、虚空へと放り投げた。
「……喰え、ミーニャ! ……それは呪いじゃない。……お前の『本当の力』だ!」
シュウの叫びに、ミーニャが目を見開く。
投げ出された泥の核が、シュウの包丁によって一瞬で「最高級の魔力結晶」へと調理されていた。
ミーニャがそれを口に含んだ瞬間――彼女の銀色の毛並みが、夜明けのような神々しい光を放ち始める。
「……温かい。……これが、私の……?」
その背中から、影で構成された漆黒の、しかし美しい翼が展開された。
かつて「不吉」とされた銀色の毛並み。それは呪いなどではなく、かつてこの国を治めた伝説の『月光の王族』の証――影を光に変える唯一の血統だったのだ。
戦闘が終わると、聖域を覆っていた泥は霧散し、清らかな泉が戻っていた。
呆然と立ち尽くす隊長タイガと、里の長老たち。彼らの前で、シュウは慣れた手つきで『テツクズ・マークII』のキッチンを展開する。
「……さて。……お前たちの国の宝、獅子の肉(※浄化済み)だ。……最高のカルパッチョにしてやる」
浄化された獅子の肉は、透き通るような白身。それに獣人国特産のハーブと、シュウが生成した魔力岩塩を合わせる。
「……ん! ……力が、湧いてくる。……悲しい記憶が、消えていくみたい」
一番に食べたミーニャの頬が、桜色に染まる。
【今回のキャンプ飯バフ・ステータス更新】
メニュー:聖域獅子の月光カルパッチョ
獲得効果:【月光の加護】(夜間戦闘力2倍)、【魔力制御+80】
名前:シュウ
レベル:12→25
新スキル:【境界浄化】(広範囲の泥を一瞬で消し去る)
パーティ状況:
ミーニャ:【真・影翼】解禁。ステータスが「王族」へと覚醒。
リィネ:ミーニャとの合体技【千里の影矢】を習得。
「……シュウ。……ありがとう。……私、もう、怖くない」
銀色の翼を小さく羽ばたかせ、ミーニャがシュウの腕に顔を埋める。
彼女の「過去の因縁」は、今、シュウの包丁によって最高の思い出へと調理された。




