表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物喰いの境界線Ⅱ ~卒業した俺と五人の愛しき乙女たち。世界最速の移動拠点(テツクズ号)で巡る、未知の食材と神殺しの美食旅~  作者: ヒデまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/29

第3話:『銀色の再会と、獣人国の異変』

北の街道を突き進む『テツクズ・マークII』の車窓から見える景色が、荒涼とした岩場から、巨大な樹木が立ち並ぶ原生林へと変わり始めていた。


 獣人国『アイアン・ファング』。

 力こそが正義とされるその国の国境が、目前に迫っていた。


「……空気が、重い。……懐かしいけど、嫌な匂い」

 助手席のミーニャが、窓の外をじっと見つめながら呟いた。彼女の銀色の猫尻尾が、心なしか落ち着きなく揺れている。


「ミーニャ……。大丈夫ですわ。今の貴女には、私たちがついています」

 後部座席からリィネが優しく手を重ねる。リィネの千里眼には、国境の検問所に集まる兵士たちの殺気だった様子が、すでに映し出されていた。


 検問所に到着すると、重武装した狼の獣人兵たちが、槍を突きつけてテツクズ・マークIIを包囲した。

「止まれ! この先は、現在『戒厳令』下にある! 許可なき人間と……――なっ!?」

 兵士の一人が、窓から顔を出したミーニャを見て絶句した。


「……その銀の毛並み。……数年前、里を呪ったとして追放された『忌み子』か!」

「……っ!」

 ミーニャの肩が小さく震える。だが、その震えを止めるように、運転席から降りたシュウが、兵士の槍の穂先を素手で掴んだ。


「……道を開けろ。……俺たちは、旅の調理師だ。……この泥の匂いを、掃除しに来た」

「な、何を……ぐわっ!?」


 シュウが軽く手を振るうだけで、屈強な狼兵たちが木の葉のように吹き飛ぶ。レベルはリセットされても、限界突破した基礎ステータスは、もはや常人の理解を越えていた。


「騒がしいわね。王家の紋章を見せれば、少しは大人しくなるかしら?」

 フィオナが黄金の髪をなびかせながら車から降りると、兵士たちはその気高さと圧倒的な魔力に圧倒され、膝をついた。


「……待て。争いはそこまでだ」

 低い、地響きのような声が響いた。

 奥から現れたのは、全身に古傷を持つ巨大な虎の獣人――獣人国近衛隊長、タイガだった。

 彼はミーニャを鋭い目で見据えた後、視線をシュウへと移した。

「……その包丁。……お前が、アスモデウスを解体したという例の『魔物喰い』か」

「……ああ。……腹を空かせた客なら、歓迎するが」


「ガハハ! タイガの旦那じゃねえか! 相変わらず強面だな!」

 ガストンが車から顔を出すと、タイガの表情がわずかに和らいだ。


「ガストンか。……今のこの国に、もてなす余裕はない。……迷宮から溢れた『黒い泥』が、我らの誇りである『牙の聖域』を侵食している」

 タイガによれば、獣人国の力の源である聖域の泉が泥に汚れ、戦士たちが次々と狂暴化し、理性を失っているという。


「……ミーニャ。お前を追放した里も、今は泥に飲まれ、滅びの淵にある。……それでも、行くというのか」

 ミーニャは一瞬、伏せ目がちになった。

 かつて自分を「銀色は不吉だ」と石を投げ、追い出した故郷。

 だが、彼女はシュウの服の裾をぎゅっと握りしめ、顔を上げた。

「……シュウの料理、食べさせたい。……泥なんて、美味しくないから」

 シュウはミーニャの頭を無造作に撫でた。


「……決まりだ。……タイガ。……その聖域とやらを案内しろ。……最高に不味い『泥』を、俺が最高の『晩餐』に変えてやる」

 一行はタイガの案内で、獣人国の深部へとテツクズ・マークIIを走らせる。

 道中、一行を襲ったのは、泥に侵食された『影蜘蛛シャドウ・スパイダー』の群れだった。

「……ミーニャ、出番だ。……お前の影で、こいつらを捕らえろ」

「……ん。……やってみる」


 ミーニャが影を伸ばすと、これまでとは比較にならないほどの巨大な漆黒の網が展開された。前回の『岩塩猪』のバフにより、彼女の影魔法は一段上のステージへと進化していたのだ。

 動けなくなった蜘蛛たちを、シュウが閃光のごとき包丁捌きで次々と解体していく。

「……よし。……蜘蛛の糸はガストンの素材に。……足の身は、今夜の天ぷらだ」


【今回のキャンプ飯バフ・ステータス更新】

メニュー:影蜘蛛の脚のサクサク天ぷら(浄化済み)

獲得効果:【影の親和性】(影の中を移動可能に)、【敏捷性+50】

名前:シュウ

レベル:5→12

新称号:【異国を歩む美食家】


パーティ状況:

ミーニャ:新スキル【影のシャドウ・ケージ】習得

ガストン:新素材【影蜘蛛の鋼糸】獲得(テツクズ号の装甲強化に使用)


「……ん。……美味しい。……少しだけ、勇気が出た」

 天ぷらを頬張りながら、ミーニャが小さく微笑む。

 一行の目前には、ドス黒い霧に包まれた獣人国の聖地が広がっていた。

 ミーニャの過去を「解体」するための戦いが、幕を開けようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ