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魔物喰いの境界線Ⅱ ~卒業した俺と五人の愛しき乙女たち。世界最速の移動拠点(テツクズ号)で巡る、未知の食材と神殺しの美食旅~  作者: ヒデまる


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第20話:『風に舞う翠の翼、精霊と踊るパタパタ耳(エレイン・デート編)』

「シュウ! 遅い、遅すぎるわよ! 私の耳、待ちくたびれてもう三千回は振動しちゃったんだから!」

 朝日が昇ると同時に、テツクズ・マークIIのハッチを激しく叩く音が響いた。

 外に出ると、そこには新緑を思わせる軽やかなドレスに、革のベルトをアクセントにしたアクティブな装いのエレインが立っていた。彼女の代名詞である長い耳は、プロペラのように高速でパタパタと回り、周囲に微かな旋風を巻き起こしている。

「……エレイン、まだ朝の六時だぞ。……精霊たちも寝ぼけてるだろ」

「ふん! 精霊たちはね、『シュウとデートなら叩き起こして!』って言ってたのよ! さあ、行くわよ、世界一の料理長さん!」

 エレインがシュウの腕を強引に引き、二人は王都の北側に広がる『世界樹の若木』の丘へと向かった。

 ここは、かつて泥に汚染された世界樹の種子を、シュウが浄化して植え直した場所。今では青々と茂り、心地よい風が吹き抜ける絶好のピクニック・スポットだ。

「……見て、シュウ。……私の耳、今は里の誰にもバカにされないわ」

 エレインが丘の頂上で立ち止まり、風を聴く。彼女の耳がパタパタと、一定のリズムで美しく振動し始めた。

「……これが、私の『歌』。……貴方の包丁の音と、精霊たちの声が混ざり合って、私の中に響いているの」

 エレインが踊るようにステップを踏むと、周囲の空気が虹色に輝き、無数の小さな精霊たちが彼女を囲んで輪を作った。かつて「欠陥品」と呼ばれたその耳は、今や世界で最も美しい音楽を奏でる指揮棒となっていた。

「……お前の耳、……いい音だな。……最高に『響き』がいい」

 シュウがそう言って、特製の『精霊蜂蜜のパンケーキ』を差し出した。

 エルフの森の恵みと、神の脳髄から得た真理の甘みが凝縮された、究極のスイーツだ。

「……っ!! ……ふわふわ……! ……耳の振動が止まらないくらい、美味しい……! ……これ、私を溶かす気でしょ!」

 一口食べたエレインは、幸せそうに頬を緩め、そのままシュウの胸に飛び込んだ。

 パタパタと、彼女の耳がシュウの頬を優しく叩く。

「……ねえ、シュウ。……私、もっともっと、貴方のそばでいろんな音を聴きたい。……不味い音も、甘い音も、全部貴方と一緒に……ね?」

 翠色の瞳を潤ませ、エレインが真っ直ぐにシュウを見上げる。

 風が吹き抜け、世界樹の葉が祝福するようにざわめいた。


【今回のデート・リザルト】

デート相手:エレイン

獲得アイテム:【風を呼ぶ耳飾り】(エレインの精霊魔法を借り受けることが可能)

エレインの状態:【共鳴】(耳のパタパタ速度が音速を超え、愛の旋風を巻き起こす)

シュウの感想:……耳が当たってくすぐったいが、……この音は、嫌いじゃない。


「……さて。……最後は、あの一番『重い』愛の持ち主が、王宮のバルコニーで指をくわえて待っているわよ」

 エレインが、遠くに見える王宮を指差してニヤリと笑った。



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