第18話:『銀色の風と影の散歩道(ミーニャ・デート編)』
黄金のスープで浄化された王都は、かつてないほどの色鮮やかな花々と、芳醇な香りに満ちていた。
復興の喧騒も少し落ち着いたある休日。シュウは『テツクズ・マークII』のデッキで、一人の少女を待っていた。
「……シュウ様。……お待たせ。……これ、似合うかな」
現れたのは、いつもの冒険者装束ではなく、淡い藤色のワンピースに身を包んだミーニャだった。
銀色の髪は丁寧に編み込まれ、その先で揺れる猫耳は、期待と緊張で小さく震えている。虹色へと進化したその尻尾は、彼女の心の高鳴りを隠しきれず、パタパタと空を叩いていた。
「……ああ。……よく、似合ってるぞ。……行こうか」
「……ん。……ずっと、二人で歩きたかった」
二人が向かったのは、かつて泥に沈みかけた、学園の裏手に広がる『精霊の湖』。
かつては戦場だったその場所も、今はシュウが浄化した黄金の魔力が溶け込み、水面が宝石のように輝いている。
「……世界が、こんなに綺麗になった。……シュウ様が、私を影から連れ出してくれたから」
ミーニャがそっとシュウの手を握る。その掌は小さく、少しだけ冷たかったが、握り返すと温かな魔力が通い合うのが分かった。
「……俺の方は、お前が影で支えてくれなきゃ、とっくに不味い結末を迎えてたよ。……ありがとな、ミーニャ」
「……ずるい。……そんなこと言われたら、また影に隠れたくなっちゃう。……恥ずかしくて」
ミーニャの顔が林檎のように赤くなる。
二人は湖畔の芝生に腰を下ろし、シュウがこの日のために用意した『特製のピクニック・バスケット』を開いた。
「……今日は、戦いのためじゃない。……お前が一番好きな、あの味を再現したぞ」
差し出されたのは、ミーニャの故郷の伝統料理をベースに、神の涙のドレッシングで仕上げた『虹色サーモンのサンドイッチ』。
「……っ!! ……美味しい。……懐かしいけど、もっと、幸せな味がする。……これ、私の『心』まで解体されそう」
一口食べたミーニャの瞳に、うっすらと涙が浮かぶ。
かつて孤独な影の中で震えていた少女は、今、愛する人の隣で、世界で一番甘い昼下がりを享受していた。
「……ねえ、シュウ様。……これからも、ずっと私の隣にいて。……私の影は、貴方を守るためにあるから」
ミーニャがシュウの肩に頭を預ける。
銀色の髪が風に揺れ、二人の影は重なり合い、一つの大きな幸せな形となって大地に刻まれた。
【今回のデート・リザルト】
デート相手:ミーニャ
獲得アイテム:【約束の銀の鈴】(ミーニャをいつでも召喚可能)
ミーニャの状態:【至福】(愛の重みが100%に到達)
シュウの感想:……影の味も、悪くない。
「……次は、リィネの番だね。……彼女、千里眼でずっとこっちを覗き見してたみたいだけど」
ミーニャが少しだけ悪戯っぽく笑う。
王都の空は、どこまでも澄み渡っていた。




