第16話:『神の心臓、愛と憎しみの最終調理』
次元跳躍を果たした『テツクズ・マークII・アブソリュート』が降り立ったのは、全てが脈動し、真っ赤なオーロラが吹き荒れる「感情の海」だった。
そこには物理的な壁も天井もない。ただ、巨大な太陽のように輝く『原初の心臓』が、世界の因果をポンプのように吸い込み、吐き出していた。
「……熱い。……空気が、誰かの『涙』の味がする」
ミーニャが胸を押さえ、うずくまる。ここでは神が喰らってきた無数の生命の「未練」が、熱風となって吹き荒れていた。
「シュウ様、視て……! 心臓の周りに、幾重にも重なる『拒絶の膜』が張られていますわ。……あれは神が自分を守るために作り出した、究極の孤独ですわ!」
虹色の瞳へと進化したリィネが、絶望的な防壁を指し示す。
その時、心臓が大きく一度跳ねた。
ドクン――。
衝撃波と共に、神の最も柔らかい感情が具現化した防衛騎士『忘却の愛』が、漆黒の剣を引き抜いて立ちはだかった。
『――去れ。……これ以上、私の孤独を汚すな。……世界は、私の中で一つに溶け、安らぎを得るのだ』
アモールが放つ剣筋は、触れる者の「記憶」を切り裂き、存在を希薄化させる。
「……孤独だと? ……一人で食べる飯が、どれだけ不味いか分かってねえな」
シュウが『神殺しの黒包丁』を逆手に構えた。
だが、その刃からは殺気ではなく、温かな湯気のような魔力が立ち上っていた。
「フィオナ、お前の『重すぎる愛』で、この偏った感情を中和しろ! エレイン、聖歌でこいつの孤独を調律しろ!」
「任せなさい! ……これが私の、独占欲じゃない、皆を守る愛よ! ……重力結界・マザーズ・ハグ!!」
フィオナの重力が、アモールの拒絶を包み込み、その鋭さを和らげる。
シュウが、アモールの懐へと飛び込んだ。
【概念調理:愛憎の乳化】。
シュウの包丁が、アモールの剣を「解体」するのではなく、その「憎しみ」と「愛」を高速でかき混ぜ、一つの「調味料」へと昇華させた。
拒絶の膜が、シュウの刃に触れた瞬間から、芳醇な香りを放つ「最高級のソース」へと変質していく。
「……お前の孤独、俺が全部『煮込み料理』にしてやるよ」
シュウの一閃が、アモールの胸を貫き、その奥にある『原初の心臓』に到達した。
包丁を通じて、シュウの「魔物喰い」の力が、神の積年の孤独を吸い上げる。
心臓は激しく痙攣し、どす黒い感情は黄金の雫へと浄化され、世界中に「慈雨」となって降り注いだ。
戦闘後、沈静化した心臓の傍らで。
シュウは、アモールの残核から抽出した、甘酸っぱくも深いコクのある『愛憎のシロップ』を、特製のアイスにかけた。
「……名付けて『孤独の終わり・愛憎のパルフェ』だ。……これを食えば、お前の愛も少しは軽くなるだろ、フィオナ」
一口食べたフィオナの瞳から、大粒の涙が溢れ出した。
「……っ!! ……切ないのに、すごく、満たされる……。……私、もう、独り占めしなくても、貴方が隣にいるだけで幸せだわ」
フィオナの背中から、重力の翼が四枚に増え、彼女は真の「守護神」へと昇華した。
【今回のキャンプ飯バフ・ステータス更新】
メニュー:忘却の愛の「愛憎パルフェ」
獲得効果:【魂の共鳴】(パーティ全員のステータスが互いに100%共有される)、【不死身】
名前:シュウ
称号:【概念の解体師】
状態:【完全覚醒】
パーティ状況:
フィオナ:【真・重力女神】覚醒。世界の「重み」を全て肩代わり可能。
ミーニャ:影の翼が「虹色」へ。神出鬼没の神速を得る。
「……よし。……思考も心臓も、俺が『下ごしらえ』を済ませた。……残るは、こいつの『魂』……真の主の正体だ」
テツクズ号が、心臓の奥底にある「虚無の座」へと突き進む。
そこには、これまで沈黙を守り続けてきた、この世界の創始者にして終焉の王が待っていた。
いよいよ、物語は神殺しの三連戦・最終章へ。




