第15話:『神の脳髄、システムと個人の境界線』
黄金の門を突き破った『テツクズ・マークII・アブソリュート』を待ち受けていたのは、まばゆい光に満ちた幾何学的な結晶の世界だった。
そこには空も大地もなく、無数の「文字」と「数式」が星々のように瞬き、世界のすべてを定義し直している。
「……気持ち悪い。……私の体が、ただの『数値』に書き換えられそう……」
フィオナが自身の腕を見つめ、震える。彼女の重力魔法さえも、ここでは「不適切な命令」としてかき消されようとしていた。
「リィネ! 視えるか、この世界のルールが!」
「……ええ、シュウ様。……ここは神の『思考回路』そのものですわ。……私たちの存在が、単なる『データ』として消化されようとしていますわ!」
その時、光の海から巨大な胎児のような姿をした、この世界の主――『原初の知性』が具現化した。
それは目も口も持たず、ただ膨大な演算処理の残響として、シュウたちの脳内に直接、冷酷な「真実」を叩き込んできた。
『――個体名「シュウ」。貴様は、この世界の「バグ」に過ぎない。魔物を喰らい、境界を曖昧にするその力は、システムの循環を乱す不純物だ。……ここで、世界の記述から抹消されるべし』
ロゴスが手をかざすと、シュウの周囲の空間が「0」と「1」分解され、存在そのものが消滅し始める。
「……バグだと? ……上等だ」
シュウが『神殺しの黒包丁』を抜いた。
だが、刃を振るう相手はロゴスではない。シュウは、自分を消そうとしている「空間の記述」そのものに包丁を立てた。
【万象晩餐:記述解体】。
「……お前の書いたレシピは、あまりにも精密すぎて、遊び(味)が全くない。……俺が、隠し味を足してやる」
シュウの包丁が、光の文字を次々と切り刻み、それを自分の魔力で「再構成」していく。
消滅しかけていたシュウの体は、逆に神の演算能力を取り込み、黄金のオーラを纏って再構築された。
「……ミーニャ、影でロゴスの『思考速度』を遅延させろ! エレイン、聖歌でシステムのノイズを増幅させろ!」
「……ん。……影の鎖、神の思考に繋ぐ」
「任せて! ……精霊よ、神の計算を狂わせる狂詩曲を!」
仲間たちの支援を受け、シュウがロゴスの頭上に踊り出る。
ロゴスは防衛策として、数億通りの「死の未来」をシュウに押し付けるが、シュウはそれをリィネの千里眼で視切り、包丁で一つずつ「廃棄食材」として切り捨てていった。
「……これが、お前の『主菜』だ。……喰らえ」
【境界解体:終焉の晩餐】。
シュウの一閃が、ロゴスの中心核――世界の全記録が収められた『真理の水晶』を真っ二つに叩き割った。
黄金の光が弾け、神の脳髄に「死」という名の、初めての「味」が染み込んでいく。
戦闘後、崩壊を始めたロゴスの欠片を、シュウは自身の包丁で集め、一振りの「黄金の粉末」へと変えた。
「……名付けて『真理の金粉・システム・エラー』だ。……これを料理に振りかければ、もはや神の言葉に縛られることはない」
シュウは、テツクズ号のキッチンで即席の『神の脳髄のシャーベット』を作り上げた。
「……っ!! ……冷たいのに、熱い……! ……世界のすべてを知ってしまったような、不思議な感覚……!」
一口食べたリィネの瞳が、虹色に輝き、定着する。
【今回のキャンプ飯バフ・ステータス更新】
メニュー:原初の知性の「真理の金粉シャーベット」
獲得効果:【システム権限の奪取】(世界のルールを任意で書き換え可能)、【全能力値:無限】
名前:シュウ
称号:【世界の料理長】
状態:【神域・最上位】
パーティ状況:
リィネ:【全知の瞳】へと進化。過去・現在・未来の全事象を同時に把握。
テツクズ号:神の演算能力を移植し、ワープ航法(次元跳躍)が可能に。
「……よし。……思考は止めた。……あとは、こいつの『心臓』を止めるだけだ。……世界の最奥、神のゆりかごへ向かうぞ」
テツクズ号が、崩壊する脳髄を脱出し、次元を跳躍する。
いよいよ物語は、最終決戦の三連戦の真の終へ。




