第11話:『白銀の空戦、空を泳ぐ龍の解体』
王都を飛び立った『テツクズ・マークII・アブソリュート』は、白銀の翼を広げ、雲海を突き抜けて北へと爆走していた。
高度一万メートル。地上の景色はもはや抽象画のように霞み、空の色は深い紺碧へと染まっている。
「……ガハハ! 見ろ、この安定感! 空を飛ぶのも悪くねえな!」
操縦桿を握るガストンが、気圧の変化などどこ吹く風で笑い飛ばす。
「……静か。……風の精霊たちが、車を運んでくれてる」
エレインがパタパタと耳を震わせ、大気中の精霊と同期して機体の姿勢を制御していた。
だが、安穏とした飛行は長くは続かなかった。
突如、機体を揺るがすほどの凄まじい雷鳴が轟き、前方の雲がどす黒く渦巻き始める。
「視えましたわ! ……『真の主』の斥候、雲を喰らう古の支配者――『雷雲龍』ですわ!」
リィネの千里眼が、雲の中から現れた全長数百メートルの巨大な龍を捉えた。
その鱗は泥に汚染され、紫色の放電を撒き散らしている。それは空の因果を乱し、嵐を呼ぶ「生ける天災」だった。
「グォォォォォォォン!!」
龍が口を開き、極大の雷ブレスを放つ。
「フィオナ、重力障壁! エレイン、雷を風で受け流せ!」
「任せなさい! ……重力偏向!!」
フィオナが手をかざすと、直撃コースだった雷がテツクズ号を避けるように大きく湾曲し、雲海へと消えた。
「……さて。……空の獲物は、初めてだな。……あいつの胸元、一番熱い『雷核』……俺が解体してやる」
シュウが、テツクズ号の天面に立ち上がった。
神殺しの黒包丁が、超高速の風にさらされてキィンと鳴る。
「……ミーニャ、影で繋げ。……一瞬でいい」
「……ん。……影の鎖、最大展開」
ミーニャが放った影の鎖が、龍の角とテツクズ号を強固に繋ぎ止める。
シュウが地を蹴った。
空中に足場などない。だが、シュウはリィネが指し示した「風の継ぎ目」を階段のように踏み抜き、龍の懐へと飛び込んだ。
【境界解体:雷天両断】。
漆黒の一閃が、龍の胸元を十文字に切り裂く。
泥の呪いが込められた雷のエネルギーが噴き出すが、シュウの包丁がそれを「美味なる魔力」へと強制的に変換していく。
龍の巨体が静かに霧散し、後に残ったのは、透き通るような白身の肉と、パチパチとはじける黄金の心臓だった。
戦闘後、テツクズ号の展望デッキでは、前代未聞の「スカイ・バーベキュー」が開催されていた。
「……龍の肉は足が早いからな。……新鮮なうちに、雷の熱で一気に焼き上げるのがコツだ」
シュウが、龍の肉を薄く切り、自身の包丁に纏わせた雷属性の魔力で、表面だけをカリッと炙る。
「……っ!! ……何これ、口の中で弾ける! ……お肉なのに、炭酸みたい!」
一口食べたフィオナが、驚きで目を丸くする。
「……美味しい。……体中に、電気が走るみたいに力が湧いてくる」
ミーニャの尻尾が、静電気でふわふわに膨らんでいた。
【今回のキャンプ飯バフ・ステータス更新】
メニュー:雷雲龍の瞬間雷火焼き ~雲海ソルトを添えて~
獲得効果:【迅雷の加護】(移動速度・反応速度3倍)、【飛行能力の恒久付与】
名前:シュウ
レベル:限界突破進行中(神域に到達)
新スキル:【天駆の包丁】(空中での自由自在な戦闘が可能に)
パーティ状況:
エレイン:精霊魔法に「雷属性」が追加。
テツクズ号:龍の心臓をエンジンに組み込み、超音速巡航が可能に。
「……ガハハ! これで予定より早く『境界の断崖』に着けるぜ!」
龍の力を得たテツクズ号が、青い炎を吹き出しながら空を切り裂く。
眼下には、ついに大陸の端が見え始めていた。
そこは、海さえも滝となって虚空へ落ちる世界の終わり。
そして、すべての「泥」が流れ込む、神の食卓の入り口だった。




