第10話:『祝宴の夜、そして世界の果てへの地図』
黄金の光が降り注ぎ、王都を飲み込んでいた泥は、最高級のコンソメのような澄んだスープへと変わって大地に染み込んだ。
崩れかけた石畳には奇跡のように青々とした草花が芽吹き、怪我を負った人々は、そのスープの香りを吸い込んだだけで活力を取り戻していく。
「……シュウ、貴方の料理は、死にかけた世界さえも蘇らせるのね」
フィオナが、シュウの腕の中で安らかな寝息を立てる。国を支えきった彼女の肌からは魔力の亀裂が消え、かつてないほどの清浄な魔力が満ち溢れていた。
その夜、王都は未曾有の「復興の祝宴」に包まれた。
王宮の前庭に展開された『テツクズ・マークII』。ガストンが腕によりをかけて設置した巨大な自動調理機と、シュウの包丁が次々と「泥から浄化された食材」を最高の料理へと変えていく。
「……ん。……これ、美味しい。……土の味がするけど、すごく甘い」
ミーニャが、泥の心臓の欠片を煮込んだ『深淵の根菜シチュー』を頬張り、猫尻尾を嬉しそうにパタつかせる。
「ええ、ミーニャさん。精霊たちが、泥に閉じ込められていた数万年分の『記憶』を旨味に変えてくれていますわ」
エレインの耳も、精霊たちの歌声に合わせて軽快なリズムを刻んでいた。
だが、祝宴の喧騒から少し離れた場所で、シュウとリィネ、そしてガストンは、リィネが千里眼で映し出した「真実」を見つめていた。
「……シュウ様。視てくださいまし。王都の泥を浄化したことで、逆に『世界の境界』が薄くなっていますわ」
リィネが虚空に広げた因果の地図。そこには、王都を中心として世界各地に広がる血管のような光の筋――『龍脈』が、すべて北の最果て、未踏の地『境界の断崖』へと吸い込まれている様子が映っていた。
「……あそこに、あいつがいるんだな。……この世界を『腐らせて喰おうとしている』不味い奴が」
シュウが鋭い眼差しを北へと向ける。
「ガハハ! ああ、間違いない。俺のじいさんの代から伝わる古い歌にもある。『世界の端に、すべてを呑み込む空腹の神がいる』ってな」
ガストンが巨大なジョッキを置き、拳を握りしめた。
アスモデウスも、王都の泥も、すべてはその「空腹の神」が世界を調理するための「下ごしらえ」に過ぎなかったのだ。世界が完全に泥に溶けた時、その神は世界を一気に飲み干すだろう。
「……よし。……デザートを食われる前に、俺たちがそいつを『解体』しに行くぞ」
シュウの宣言に、仲間たちが集まってきた。
フィオナは王族としての衣装を脱ぎ捨て、再び冒険者の装束に身を包む。
「お父様(国王)には言ってきたわ。『世界を守ることが、一番の親孝行よ』ってね」
「……行こう。……テツクズ・マークII、最終換装だ!」
ガストンの掛け声と共に、装甲車が変形を開始する。地底での戦闘データと、王都の神聖な魔力を得たことで、車体は白銀の輝きを放つ**『テツクズ・マークII・アブソリュート』**へと進化した。
夜明けの光が、王都の地平線から差し込む。
目指すは世界の最北端。
すべての因果が収束し、神が口を開けて待つ「境界の果て」。
「……待ってろよ。……世界を不味くした罰だ。……たっぷりと、後悔させてやる」
【今回のキャンプ飯バフ・ステータス更新】
メニュー:王都復興の祝宴・深淵の根菜シチュー
獲得効果:【世界の寵愛】(自然界の全属性耐性+50%)、【限界突破】
名前:シュウ
レベル:100→限界突破:無制限(レベル表記消失)
新スキル:【因果の調理】(過去や未来の事象さえも食材として干渉可能)
パーティ状況:
テツクズ号:『アブソリュート形態』へ進化。飛行可能に。
目的地:世界の最北端『境界の断崖』へ設定完了。




