第1話:『卒業、そして鋼鉄の怪物(テツクズ号)との再会』
【前作までのあらすじ:境界の捕食者】
神託のゴミスキル【魔物喰い】。魔物を喰らわなければ成長できず、人としての尊厳を捨てた獣だと蔑まれた少年シュウ。だが、その呪われた力は、実は喰らうほどに境界を越えて進化する唯一無二の捕食者だった。
学園最深部で古の悪魔アスモデウスを「解体」し、世界を救ったシュウは、共に戦った四人の乙女たち、そして無二の親友ガストンと共に、ついに卒業の日を迎える。
学園の講堂に、重厚な鐘の音が響き渡る。
それは数千人の生徒たちにとっての終わりの合図であり、そして俺――シュウにとっては、本当の意味での「自由」の幕開けを告げる音だった。
壇上に上がり、校長から羊皮紙の卒業証書を受け取る。
かつての嘲笑は、今や畏怖と、隠しきれない期待の眼差しに変わっている。だが、俺の鼻を突いたのは、祝祭の華やかな香りではなかった。
(……嫌な匂いだ。泥のような、腐った魔力の……)
アスモデウスを倒し、浄化されたはずの迷宮。その奥底から、微かな、だが決定的な「綻び」の匂いが漂っていた。客席で、リィネの狐耳がピクリと跳ね、フィオナの周囲で理由もなく小石が浮き上がったのを、俺は見逃さなかった。
式典後、俺は喧騒を避けて地下へと向かった。
向かう先は、学園の片隅、地下深くへと続く古びた階段。俺が最も多くの時間を過ごし、最も多くの「味」を学んだ場所――ガストンの鍛冶場だ。
「ガハハ! 待ってたぜ相棒! 卒業おめでとう、なんて湿っぽい挨拶は抜きだ!」
地下に足を踏み入れた途端、爆風のような笑い声が鼓膜を震わせた。
ドワーフの親友、ガストン。彼は巨大な槌を置き、その背後にある「怪物」を誇らしげに指し示した。
鈍い銀光を放つ巨大な魔導装甲車――『テツクズ・マークII』。
前作の『テツクズ号』をベースに、神鋼や龍鱗を贅沢に継ぎ足し、ガストンが心血を注いで打ち直した究極の移動拠点だ。
「……シュウ。……迷宮の底、見てきた。……黒い泥、溢れ始めてる」
装甲車の影から、銀色の猫尻尾を不安げに揺らしながらミーニャが現れた。
「ええ。私の千里眼にも映りましたわ。獣人国、エルフの森、ドワーフの聖地……世界中の迷宮が、今まさに『真の主』を迎えようと脈動しています」
リィネが豊かな狐尻尾を揺らし、詳細な地図を広げる。そこには、各地の迷宮から染み出す「泥」の予兆が、赤黒い斑点のように記されていた。
アスモデウスは、単なる門番に過ぎなかったのだ。
彼を喰らい、境界が消えたことで、世界はその深淵にある「真の理」に晒され始めている。放っておけば、世界中の食材は泥に汚れ、魔物は正気を失うだろう。
「……ふん! だったら、私たちが全部焼き払ってやるわよ! そのための、この車でしょう?」
エレインが耳をパタパタさせながら、エンジンの出力を上げる。
「そうね。私たちが旅をするのは、ただの食道楽じゃない。世界の泥を掃除し、最高の食材を取り戻すためよ!」
フィオナが黄金の髪をなびかせ、不敵に微笑んだ。王女の地位を捨てた彼女の瞳に、迷いはない。
俺は、ガストンが「神の骨」を混ぜて打ち直した一振りの柄を握った。
知性ある「人型」は決して喰らわず、だが世界を汚す「深淵の泥」に汚染された魔物たちは、俺がすべて解体し、浄化して喰らってやる。
「……よし。……行くぞ。……最初のターゲットは、泥の影響で狂暴化した『岩塩猪』だ」
テツクズ・マークIIが地響きのような咆哮を上げた。
この旅の目的は、美食の探求。そして、世界を蝕む「深淵」を喰らい尽くし、最高の晩餐を世界中に届けること。
「……最高の塩加減にしてやる」
境界の先へ。
俺と彼女たちの、美味しくて騒がしい伝説が、今、再び動き出した。
【今話のステータス更新】
名前:シュウ
職業:境界の調理師
レベル: 1(限界突破リセット)
スキル:【魔物喰い・極】【魂の解体】【万象晩餐(未覚醒)】
現在の目的:迷宮から溢れ出す「深淵の泥」の浄化と、美食の探求
パーティ:ミーニャ、リィネ、エレイン、フィオナ、ガストン




