2/3
アイスクリーム
この世界はどうしようもなく壊れてしまったみたいだ。
教室の真ん中には真っ黒な深淵がその口を開け、悪臭を放っている。それゆえに生徒全員と、そのクラスに入る先生すべてがマスクをつけている。そのマスクには朝は真っ白でも、学校から帰る夕方には、深淵から滲み出す瘴気によって黄ばんでしまい、時にはどろどろとした液体を垂れ流す。
その液体は、アイスクリームよりも甘く、癖になる独特の風味があり、実はクラスのほとんどの人間が帰った後それを舐めていたが、それは鼻水を舐めているような気持ちになるものであり、全員が隠したうえで、「そんなことしている人はいないよね」みたいな話で滑稽に探り合っていた。
その液体は肉体を内側から変質させ、特殊な能力を目覚めさせるものであるということが、後に判明するが、まだ彼らはそれを知らない。