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ナタリアと悪徳領主(1)

 ナタリア一行は六魔晶を打倒すべく南へと向かっていた。…が、4日間ずっと野宿をしていた事によって、女性陣のストレスがピークを迎えていた。

 「そろそろ体洗いたいよー。どこでもいいからその辺の町で泊まろうよー」

 「そうは言ってもな、俺はしばらく宿には泊まりたくないんだよ。わかるだろ?」

 「…いやわかるよ?でもね、フィリップくん、…私虫苦手なんだよ?そこら中虫しかいないよ??」

 ダリアが珍しく不満を口にした。

 「…あのさ、あたし敵意感じたら嫌でも目ェ覚めるからさ、気にせずどっかに滞在しよ?少しはあたしに頼りな?」

 フィリップはしばらく頬に手を当て考えていたが、ナタリアのその発言が決め手になった。

 「…わかった。近くの町に滞在しよう」

 「そうこなくっちゃ!」

 ナタリア達は現在地から一番近いキラノパルナの町に滞在することにした。

 「やっと町でゆっくりできるわー。あたしウェノハにもっといたかったのに滞在時間たった一時間だったんだもん」

 「また言うのかよそれ…。あれはしょうがなかったんだよ。俺がフィリップ・アハートだって一瞬でバレちゃったんだからさ。あんなデカい都市にあのままいたらさすがにお前も誰かに正体バレるよ?」

 ウェノハでは半島の他の商魂たくましい都市と同様に、貴族は身分証を提示することによりさまざまな施設で多種多様な恩恵を受ける事ができる。フィリップはいつもの癖で身分証を提示してしまったために、ウェノハのありとあらゆる商人に付きまとわれた。

 「…でもあれはフィリップがズボラなだけじゃないの?あたし街で身分証見せた事なんてないよ?」

 「俺にとってはそっちの方が意味わからんのだよな。使えるもんは使った方がいいだろ」

 「つーかさ、どこで何買ったのさ?銀行は基本秘密守るらしいからあんなことにはならないじゃん」

 ダリアとナタリアはフィリップがどこかから追いかけられている様しか見ていないので、その時フィリップがどこで何をしていたのかよくわかっていない。

 「…まあ、そのうち分かるよ」

 「えーまたそれかよ、この秘密主義者!ねーダリアからも何か言ってよー」

 「…いやーあれだよ?私は多少は秘密があってもいいと思うよ?」

 「そんな…。ダリアはフィリップの肩を持つというのか…?」

 「いやーあはは…」

 「ガーン…」


 ナタリアはしばらくの間、拗ねて馬車の中でふんぞりかえった。

 「おいナタリア、もうすぐキラノパルナに着くぞ、準備しろ」

 「ふーんだ、やーだよーだ」

 「そんな態度だと最悪門番に処されるぞ。…甘いもの食わしてやるからちゃんと用意しろ」

 「ふーん?…じゃあ張り切っちゃおうかな〜」

 

 しかし、フィリップの予想とは裏腹に、代表者であるフィリップの身分証を一瞥しただけで門番は軽々と全員を中に通した。

 「…この町はマズいかもしれない。『門番がザルな街は治安がクソだ』って俺の友達が言ってた」

 「…一応聞くけど、それ誰が言ってたの?」

 「…リエト・オルランディだが?」

 「またリエトくんかよ。リエトくんありとあらゆる物の悪口言うから信用できないんだけど」

 「でもサントタオエンが危険っていうのは当たってたじゃん」

 「それはそうだけどさ〜」

 「…こないだもその人の名前聞いたけど、そのリエトって人はそんなに口が悪いの?」ダリアが興味津々でナタリアに聞いた。

 「そうなんだよー。常に何かの悪口を言い続けてる人だからさー、当てになんないんだよね、彼の評価」

 ナタリアは小さく溜め息をついた。

 「まあでもリエトは口は悪いけど頭がいいからな、ある程度は信用していいと思うんだけどね、俺は」

 「本当か〜?…でも何だろう、言われてみれば何だか暗い町って気がするね」

 「そうだろ?」


 キラノパルナの町の規模感は、ナタリアの生まれ育ったトレノよりも大きいのだが、トレノに比べて明らかに鬱屈とした空気が漂っている。

 「…一日だけ滞在したらさっさと出ようぜ」

 「…そうだね」

 ナタリア達は門番に教えてもらった、町外れの小さな宿屋の扉を叩いた。

 「いらっしゃいませー!」

 町の雰囲気とは打って変わり、女将さんの元気な声がナタリア達を迎え入れた。

 「この町は大して見どころもないけどゆっくりしていってね!あとねえ、夜になったらお酒安くするからぜひ飲みに来てね!」

 「あ、はい…」

 チェックイン時にナタリア達は心のこもった歓迎を受けたが、サントタオエンで酷い目に遭ったのでナタリア達は複雑な気持ちになった。

 「…好意なんだろうけど、やっぱり気が引けるな」

 「…まあそうだけど、あたしはお言葉に甘えて飲ませていただこうかな」

 「え?マジで?」

 フィリップとダリアは顔を見合わせた。

 「本気だよ。人付き合いは大事だし、もしかしたら六魔晶の詳細な場所とか聞けるかもしれないしさ」

 「…そうか。だったら俺はお前に何かあった時のために今日の夜は起きとくかな」

 「フィリップは寝てなよ。あたし敵意向けられたら目覚めるし」

 「…いや、この間はお前の身に危険が迫ってるにもかかわらず起きれなかったからさ、今日は徹夜しとくよ」

 「…わかったよ今日の決意すごい固そうだしね。好きにして頂戴な」

 「ああ、任せておけ」

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