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(元)社畜OL、国母となるぅ?!  作者: 蒼良 美月
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04 社畜女、助ける

 ──「はぁあ、疲れた!! 何なのよもう! 何にもないじゃない!! 川も海も全くないし、家一つないし!!」


 私は、靴を草の上に脱ぎ捨てて、大の字になり、草の上に寝そべった。

 空は抜けるように青く、鳶が数羽舞っていた。

 スゥーっと頬を駆け抜ける風がとても気持ちよかった。


「仕方ない、このまま暮れてきても困るし、もう一回頑張るか!」

 そう口にすることで自分を再び鼓舞して私は再度歩き出した。



 歩き周ること数時間。



「あったぁ!! あったわ! これだわ!」

 水の匂いがしてきた。私は嬉しくなり、水の匂いがする方向目掛けて走った。


「あった!」


 そこには程よく流れている小川があり、近くには、木造の古ぼけた小屋があった。

 とりあえず私は急いでバッグの中から、水筒を出し、小川の水を汲んで飲んだ。


「はぁぁ。美味しい!!」

 ただの水がこんなに美味しいと思ったのは大袈裟かもしれないが今まで生きてきて初めての経験だった。あまりの美味しさに一気に飲んでしまい、また小川から水筒いっぱいに水を汲んでしまった。


 無事喉を潤すことが出来た私は、近くにあった小屋に恐る恐る近づいた。


「あのぅ。すいません。誰か居ますか? ごめんください。何方かいらっしゃいませんかぁ?」


 古ぼけた小屋の戸を何度か叩いてみたが、反応はなく静まり返っていたままだった。


 念のため、近くにあった小枝の棒切れを手に取り、ゆっくりと小屋の戸を開けてみた。


 ──ギィッー


 戸はゆっくりと開いたが、そこは案の定誰も居なかった。

 私は中に入り、何か人の気配の感じるもの、手掛かりになりそうな物を探してみた。


 木で作った食器のような物や、土で作ったような? 土器のような鍋等があり、人が使っていた気配が感じられた。

 それを知った私は、何だか安堵した。


「ここに食器があるってことは、誰か居る? か? 誰かが、ここを利用していたか? 利用しに来るってことよねぇ? ならば、ここで待っていたら、その人に会えるってことかしら?」


 小屋にあった物から私は冷静に色々と分析してみた。食器の数や、傷み具合なども調べていた。

 状況を手帳にメモしていると。



 突然!



 ドサッ


 バタン!


 ドアが開き、人が倒れていた。



 ──状況が全く掴めない私は、暫く声も出ず、立ち竦むしか出来なかった。


「血?」


 地面に流れた、ドス黒い液体を見て、ハッっとした。


「ちょっと、あなた、大丈夫?」


 血のような物を見て、ハッっと我に返った私は思わずそう言って、その人の元に行き傷を負っていると思われた肩を触っていた。


「触るな!」


「ヒッ」


 その男? は低い声でそう言い、鷹のような鋭い目で私をキッっと睨んだ。

 思わず声が出てしまった。


「でも、その傷……早く手当しないと……」


「俺に構うな! 女、ここはお前の家か? 悪かった直ぐに出て行く」

 そう言って彼が立ち上がろうとした瞬間、背中からも血が流れていたことに気づき、私は思わず言っていた。


「何言ってんのよ! そんな身体で何処に行こうとしてるのよ! 早く止血しないと死んじゃうわよ!」


「何だと? 誰に向かって言って……イテッ」

 小声で最後は聞き取れなかったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。


「いいから、早く横になって!」


 私は自分のバッグからハンカチを出し、傷口をしっかり抑えた。

 そして、常に持っていた替えのストッキングを取り出し、包帯の変わりにそれを巻いた。

 だが、背中の傷はそれだけでは到底足りず困っていると、男は自分の服を破りそれを私に無言で差し出した。私はその布を使い背中の傷の手当を行った。


「女、世話になった」

 そう言って彼は立ち上がろうとした。


「え?」


「は? 何だ礼が欲しいのか? それなら後日使いの者に持たせよう。悪いが今は持ち合わせがない。家はここか?」


「は? 礼? 何よそれ、そんな物いらないわよ! そんな怪我をした身体で何処に行こうってのよ!」


「ん? そんな怪我ってこれか? こんなのかすり傷だろ? 今回はちょっと俺もドジ踏んだが、まさかあそこで狙われるとはなぁ……」


「狙われる???」


「いや、何でもない。ゴニョゴニョ……。と言うことで、礼は必ずする。ありがとな」


 そう言ってニタッって笑った顔は、先程までの、怖い顔じゃなく、なんだか少年のような爽やかな笑顔だった。

「って青い瞳?……」


「ん? 目の色か? まあ少ないとは言え、別に碧眼は珍しくないだろ?」


「いや、そうじゃなく、ここって日本じゃないの??」


「ニホン? 何だそれ?」



「…………。」


「じゃあな!! ありがとな!」


「ぢょっとまでぇええええええええええええええ!!!」

 私は思わず彼の足を掴んでいた。


「イタッ! お前!!」

 鋭い眼光で私を睨みつけた。その目は先程までの温かみのある目ではなく、冷たく氷のようだった……。








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