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月姫
自分に充てがわれたのは不思議な人だとマツバは思った
他の妃たちはみな、絹の着物に長い髪を結っているのに、幼子のようなオカッパで、輿入れだというのに木綿の藍絣を着ている
まるで途中で妃が逃げ出したため、代わりに女中が来たかのようだとマツバは思う
けれど、月と名乗った目の前の女性は、特に動じた様子もなく、しゃんと座っている
御子と影武者、妃たちと名乗ったあとには、お付きのものたちもそれぞれ名乗って挨拶をした
そしてマツバは、それぞれのことを知りたいとにこやかに口にして、衛兵や従者たちを全て玄関や土間に下がらせた
「何か質問は?」と尋ねるマツバに、妃たちは何も言わずに冷たく前を見ている
月子はそこで、おずおずと手をあげて発言した
「あの…私、誰が殿下か分からないと聞いてきたのですが…?」
そう聞くと、マツバ含め、全員が頷いた
「では、なぜ…ええと…」
月子が言い方に窮していると、隣に座っている結姫が口を挟んだ
「あなた、とても偉そうに見えてよ?」と
これには、月子と結姫以外の妃たちが同意して頷く