マツバ
23/8/13 加筆
迷ってましたがやっぱり、衣装にもう少し言及することにしました
このあとにも、いつもの髪型で…とか書きたかったので
洋服も着物も着る設定なので、男性は洋髪で、烏帽子はなしにしました
(でも、女性の洋服での描写はないと思います。私が和装が好きなのでw)
月子はぼんやりと、座敷の向こうを眺める
こちらと同じくらいの部屋で、窓はなく、上から灯りが下がっている
彼らの後ろには、年老いた男性と10から12歳くらいの男の子が2人ずつ控え、全員が黒い狩衣姿だった
衛兵は、こちらの座敷にしかいない
座を仕切っているのは、月子の目の前の男の子で、この場を設けたのも彼らしかった
「自己紹介をしよう」と、彼は持ちかけ、まず自らをマツバと名乗った
彼らはマツバの隣から、灰色のお召姿のギン、マツバと似た薄緑の狩衣を着たヤナギ、黒の狩衣のゲン、茶のスーツ姿のカヤと順に名乗った
男性はみな、洋髪である
妃たちはカヤの前に座る、赤い振り袖の華から順に、生成り地の絹にオレンジの花模様の着物を着たひな、緑の振り袖の千、白い襦袢も顕に、紫の着物をはだけるように着た結、そして木綿の藍絣に白い道中着を重ねた月子と挨拶をした
華は日本髪に金の簪やつまみ細工を刺し、帯は前側でふわふわと華やかに結んで軽く垂らすようにしていた
ひなは流行っているのか、藤の家で奥さまが着ていた着物と似たものを着ていて、これは絹ではあるが振り袖では無さそうだった
帯は簡素に後ろでまとめ、髪は高くお団子にし、とんぼ玉の簪で留めている
千は総刺繍の豪奢な振り袖で、帯にも金糸や銀糸が使われていそうだった
けれど後ろで結ばれた帯の結び方は、あまり華やかではない
髪もハーフアップにリボンと、言われたから仕方なくこの振り袖を着ましたという風だった
結の着物にも金糸は使われている
わざと肩を落として着ているので、袖が手元を覆って、いかにも私家事はしませんの、といった風情だった
髪は珍しく巻き髪にして前髪をかきあげ、落ちないように金の髪飾りで留めている
そして華姫と同じく前で帯を華やかに結んでいた
「月、と申します」と、他の姫たちに倣って月子も名前から一文字だけを名乗る
これから月子も、他の妃たち同様その一文字に姫と付けて月姫というように呼ばれることになる
だがその装いは、とても庶民的で髪も幼子のようなおかっぱだった
それぞれ後ろに控えているのは、それぞれのお付きになる従者らしかった
御子たちの従者が2人いるのは、15になったからだと、またマツバが口を開く
これまでは年輩の者が教育係も兼ねて付き添っていたが、これからは彼らが導く側になるからだそうだ
月子は、目の前にいるマツバに嫁ぐのだろうと思いながらも、不思議な違和感を覚えていた