マツバの部屋
夕食を食べ終わると、マツバは自分の部屋の本も見せたいと言ってきた
「辞典もあるし、小説もあるよ」と
月子はすぐに「見たいです」と返事をしたが、はなが湯の支度が出来たと呼んできたので、じゃあその後で、となった
月子はどうやって支度をしたのだろう、と思ったが、どうやら洗面室がお付きの部屋と繋がっているらしい
一人には充分の湯船に身体を沈めて、月子は贅沢だと思った
ゆっくりと身体を清めて、夜着に着替える
そして鏡を見遣ると、その前には綺麗な化粧びんがいくつも並べられていた
月子はそれらを興味深く眺めて、ひとつを開けて匂いを嗅いでみた
花の匂いがする、と月子は思う
そしてまた明日、はなに使い方を聞いてみようと思った
マツバの部屋に行くと、確かにたくさんの本があった
月子の部屋とは正反対の造りの部屋で、入ると広い部屋の真ん中に同じく数段高くなった座敷がある
そこには今は布団が敷かれ、右側に大きな窓、一番奥に本棚が壁一面に設えてあった
「どれでも好きなのをどうぞ」と、夜着である白い襦袢姿でマツバが言う
月子は壁面全体の本棚を見て、祖母の家や父の仕事部屋を思い出していた
どこか懐かしいと思いながら、本を目線で追っていく
月子は気になった本を手に取り、パラパラと読み始めた
そして促されるまま、布団の端に腰掛ける
マツバは布団に寝転ぶと、先ほど月子から借りた本を読み始めた