Episode2 少女の記憶 (1)
「すぅー……すぅー……」
俺のベットにまた移動した少女改めカレンは、しばらくするとすぐ眠ってしまった。
時間はすでに2時、あゆみは台所で氷枕を作りに行った。
「ふぁ~……はぁ」
流石に眠い……。
俺には毎日の日課が二つある。
帰宅部である俺は毎日筋トレしてるんだけど、それは腕がパンパンだし、今日ぐらいは休みでもいい。
けどもう一つ、毎朝の近所の空地に住んでる猫たちのエサやりは眠いけどかかしたくないとは思う。
が、寝たらもう起きれなそうだし、ここは鏡先輩に頼むしかないかな。
一食抜きなのは、猫たち可哀想だしね。
えっと、鏡真(Kagami shin)、鏡先輩は俺の憧れの先輩で、猫のエサやりの夜を担当してもらってる。
同じ学校の3年C組、人間関係が苦手みたいだけど、昔剣道をやっててとっても強くてとても優しい人なんだよね。
『ドゴォォォー……バババッッ……』
……ケータイから出た音は、いつものことだからスルーしようと思うけど。
あと、夜だったらいつ電話してもいいってことにもなってたりする。
『俊か、どうした?』
「いつも悪いんですけど、猫たちの朝のエサやりお願いしてもいいですか?」
『そんなことなっ――』
……切れた。
とりあえず、かけ直してみる。
『……ただいま、電波の届かない場所にいるか、電源が――』
もう一回。
『……ただいま、でん――』
よくわからないけど、鏡先輩大丈夫だろうか……。
今日はどうも、災難の続く日のようだし、いちいち気にしないことにしよう。
「カレンちゃんの様子、どう?」
あゆみが氷枕を右手に戻ってきた。
「さっき熱が38度あったし苦しそうだったけど、今は結構落ち着いてるかな」
「よかった。……いきなり倒れちゃったからどうなるかと思ったよ!」
本当に落ち着いてなによりだな。
このまま寝かせておけば、明日には元気になってくれるだろう。
……改めてカレン寝顔を見ると、すごく愛らしく感じる。
あゆみも静かにしてれば純粋に可愛いと思えるんだけどなぁ。
「そういえば……前にもこんなことなかったっけ?」
あゆみは、カレンの頭の枕を優しく氷枕に変える。
「こんなことって?」
「小学生の頃、私が風邪引いて学校休んだときだよ」
「あゆみって、前は結構身体弱かったからな」
いきなり話し始めてなんのことかと思ったけど、思い出した。
小学校に入ったばっかりのこと、あゆみは転校してきたんだ。
転校生ってのもあるけど、それに身体も弱かったことも重なって友達がすぐできなかった。
けど、俺はあゆみがこっちに引っ越してきた日にたまたま出会いそれからずっと幼馴染。
んで話を戻すと、あゆみが風邪を引くと俺は窓からあゆみの部屋に侵入。
あゆみの親は、今は旅行に行くほど時間に余裕があるが、両親共々ずっと仕事仕事って状況で、あゆみが風邪を引いても会社を休めないことも多々あったのを前の俺は知っていたからだ。
「最初はすっごくびっくりしたよ! 二階の窓から人が現れるなんて思わなかったもん」
「俺の部屋のベランダからだと容易に行けるんだよ。とはいえ、今思うとちびの時の俺はやんちゃだったなぁ」
「今だって、無茶ばっかりしてるじゃん!」
「そうか?」
自覚ないのは我ながらまずいな。
「……しゅんちゃんがそばにいてくれたから、安心して寝られたんだよ」
「にやけてるぞ」
年頃の乙女がふにゃけた顔しちゃまずいだろ。
「そういうこと言わないの!」
「本当のこと言っただけなのに」
「ふんっ!」
わざとらしくそっぽを向かれてしまった。
「まぁ、それにしても懐かしいな」
最初はこっそり窓から侵入してたけど、いつの間にあゆみの母親も家のことに専念できるようになって、親公認で窓から侵入するというおかしな状況になって、あゆみも休みがちにならなくなって、今じゃこんなに明るくなって、学校の休み時間になればあゆみの周りには友達が集まってくるようになった……。
俺もちびの時から、成長してるんだろうかね?
「なぁ……あゆみ、俺ってあの時と比べてどう?」
といって、あゆみの方を見る。
「……」
カレンの寝ているベットにしがみつくように眠っていた。
話すだけ話して、俺が話を振ったらこれですか。
「……あゆみの布団でも用意してやるかな」
そういや、先輩電話してからか、目が冴えてきた気がする。
疲れも若干和らいで……って気のせいか。
とりあえず、あゆみが風邪引かないようにしないと。
更新遅れ気味ですいません^^;
Episode2は過激なことは一切なしです。
電話の向こうだけです。