表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ComPliCaTion  作者: Shinji
5/12

Episode1 眠り姫 (1)

「どうしよっかなぁ……」


 先輩達と別れて2時間以上、やっと家についた。


取り合えず、未だに目を覚まさない少女を俺のベットに寝かしとく。


……身体が冷えてる気がするけど、死んでないよな?


先月ぐらいにしまったばっかりの毛布を引っ張り出してきてかけて置く。


 明日絶対に筋肉痛であろう腕が、毛布を出すという作業をするだけで悲鳴を上げる。


2時間以上も人間一人の全体重を支えていたんだから、当たり前っちゃ当たり前だけど。


「それよりも……、さっきより透けてるっていうか、ほとんど消えかかってる?」


 人間が消えそうってどういうこっちゃ……透けてる時点で普通ではないのは気づいてるけどさ。それにしても、まじでどうしようか。


 こうして、考えなしに家まで連れてきちゃったし、未だに目を覚まさないし、腕は張ってるし、帰る時にはもう日が暮れてたし、てかもう透けてるっていうか見えないし……?


「マジで?」


 布団は盛り上がっているが、実態があるか不安になって手を伸ばしてみる。


通り抜けたりするんじゃないかという考えも浮かんだが、触れるので実体はあるようだ。


顔の部分っぽいからすぐ離す。


「この状態でも大丈夫なのか? というか、この状態が普通だったりして」


 今は布団の中だからいいけど、歩き回られちゃったらどこにいるか分からなくなっちゃうよなぁ……。


てか、今更だけど透明人間ってことか。男の夢じゃないか! ……って、何考えてんだ俺は。


 取り合えず、身体が冷えてるようだし、目が覚ました時のために温かいコーヒーでも入れてくるとしよう。


透明人間への対処の仕方なんかしらんからな。






「……状況変わらず、か」


 自室に戻ってきた俺は、両手に持ったカップを膝ほどの高さもない程度のちゃぶ台の上に置く。


 そういえば、晩飯食べてないな。


今はもう10時過ぎ。


空腹感を感じるには十分の時間だ。


でも、買い物するの忘れちゃったし、好きじゃないがカップラーメンを食べるしか無さそうだ。


自分で作った飯の方が好きだし、作るのも結構好きだったりするんだけど、しょうがないか。


……この少女、そろそろ目を覚まさないと本気で生きているか不安になってくる。


特に何もせずにしょうもないことを考えるというどうでもいい日課が残っているのに……。


「……い」


「わっ!?」


 微かに声が聞こえた?


「さむ……い、さむいよぉ……」


 今度は擦れている声を聞き取れた。


「さむい!? 寒いんだな! って、えぇーとっ」


 周りを見渡すと、さっき持ってきたカップが目に入り手に取る。


「ちょっと上半身起こせるか? コーヒーあるぞ?」 首筋あたりであろう場所に手を当て起き上がらせよう……とした瞬間、少女に触っている手に違和感を感じた。


というか、手だけじゃない。


全身の血の気が引くような感覚、無意識に身体が震える……。


この感覚は――寒気?


 そういえば、身体とかに直接触ったら死ぬかもしれないってワイルドな翼野郎が言っていたようなー……。


「って、いちゅまでっ!?」


 寒さで呂律が回っていないが咄嗟に手を離す。


一応、いつまで触ってんだよ俺、って言おうとしたんだよ。


「あっ!」


 全身が寒さで言う事を聞かない状態で、カップを少女に向かって落としてしまった。そして、俺も何も無いのに後ろに倒れそうになっているので助ける事は出来ない訳で……というか、少女は透けていたけど今見えるようになっていたような?


「あっちぃーっ!!」


 後ろのちゃぶ台の上に置いておいたコーヒーを倒し、身体に引っかけた。


「きゃっ!?」


 取り合えず、眠り姫という現状を打破できたようだ。


てか、眠り姫から聞く最初のはっきりとした声が悲鳴になるとは思わんかったなぁ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ