Prologue(4)
『――どうした遊馬、何か見つけたのか?』
「はい、そして対処に困っているので相談したいんです」
『なら、合流しよう。場所はさっき別れた場所だ。……どうせどうやって帰るか分からなくなっているだろうから、火でも焚いとく、煙を頼りに戻って来い』
「流雅さん、流石ですね。俺のことなんでもお見通しって感じで」
この人には敵いそうにないな。
さて状況を説明しよう。
さっきのワイルド翼野郎は、俺の有無に関わらず少女を渡すと、映画の撮影で見る空中アクションのように翼を羽ばたかせ飛んでいってしまった。
意味が分からずしばらく突っ立っていたが、自分の無い頭で考えても時間の無駄と理解し流雅さんに連絡したのだ。
なんか、この少女のことを聞いたら答えてくれたんだけど意味不明だった。
何やら、タイプ不可視(Invisible)バトルスタイル温度調節(Regulate The Temperature)という訳の分からないことを最初に言われた。
……訳が分からないって言い訳はもういいか、信じられないが無理に理解するとしよう。
タイプってのはさっきの男は鷹の翼っぽいのがついていたから見た目で判断できそう、俺が抱えている少女もなんか透けてるし。
でも、バトルスタイルとかなんとかは理解が困難だ。
さっきの男の翼は分かるけど、温度調節ってなんだろう?
能力をまだうまく使えないから体とかに直接触ると死ぬかもしれん、気をつけろよ?って、言い残して行っちゃったんだもんなぁ。
そういえば、変なことは教えてくれたのに、名前とか教えてくれなかった。
またあったら、名前が分からなくても絶対に気付くけど。
「うぅ……すぅー」
いきなり少女が寝息らしき音をだして、びっくりしたのは秘密……。
幻想的な銀色の髪に少し隠れた可愛らしい顔、両手で抱えているので柔らかい体の感触が若干、俺の理性に危険を知らせている……なんか守ってあげたいと思えてしまっているんだけども、俺は一体どうすれば……。
「分からん」
嗚呼、早くみんなと合流したい。
しばらくあたりを見渡していると、薄っすらと見える煙が見えた。
これで、取り合えず一安心だな。
「知らん」
俺の期待は、ばっさりと裏切られた。
「遭難していたのにも関わらず女の子を誘拐してくるなんて、遊馬くんって結構やるのね。会長びっくりよ」
そして、俺の第二の期待も裏切られた。
それどころか、俺の話を信用していないのか無視されたのか、ひどいことを言われている。
「ホントの話なんですよ! 翼を生やした男がささーっとやってきて、少し打ち解けたら空にひゅーんって飛んでいっちゃったんだけど、その時この少女をぽとっと忘れていってしまったって話!!」
「本当かどうか以前に、遊馬には説明するという能力が低いと思うのだが、井之上どう思う?」
「言うまでもなく、そうじゃないかしら?」
そこを指摘されるとは思わなかった。
分かりやすく効果音までつけたのに、そんなにひどいのかな?
「それより今日はもう疲れたわ。帰りましょうよ」
「久しぶりに熊を相手したからな」
そっちの三人組の探検も壮絶だったのか……?
というか、一名会話に参加していないのは気絶していて(理由は多分分かる)井之上さんの背中いるからだ。
「……取り合えず、あなたの家に置いて上げなさいな。2ヶ月間は家に遊馬くん一人でしょ?」
正直、思いついてはいたけど、今日の所はそれしかないのかな。
「そうですか……って何で知ってるんですか!?」
「フフフ……気にしてはいけないわ」
やっぱり恐いよ、この人。
「今日は解散するが、その少女のことはとても興味深い。今度、詳しく話を聞こうではないか」
と言いながら、さっきからものすごくうるさい音を出しているヘリに井之上さんに続いて流雅さんは乗った。
バタンッ
「それでは、ごきげんよー。頑張って帰るのよ」
「自転車無しでここから帰るのはきついだろうが、走ればたった1時間だ! 君ならできる!」
そして、俺はまた一人にされた……。
「すー……」
いや、謎多き少女と二人。
――今日この日、俺の変わった日常はさらに複雑に変異した大変なモノへとなることになった。
求めていたわけでも、今の日常に不満を感じていたわけでもない俺の日常が、
この可憐な少女のおかげで……。
これにて Prologue 終わりです!
週一回以上のペースで更新していこうと思いますので、これからもよろしくお願いします^^
さて、作者の話になりますが、先週あたり新型インフルエンザにかかってしまいました。
去年は全く病気をしなかったので、久しぶりにきついきつい。
皆さんも風邪等には気をつけてくださいね!
私も今は元気いっぱいで学校生活頑張っているので^^