Episode2 少女の記憶 (3)
「できました」
風が吹き抜け埃舞う部屋で、カレンの返事が聞こえた。
「……あぁ、出来たな」
屋根のない室内はまだ熱が篭っている。
ベットを見ると、
「あれ?」
「……さむい、です」
カレンがまた見えなくなっていた。
「……ここか? 手、だよな?」
「え……?」
俺はベットの上に慎重に手を伸ばし、見えないが細いものを掴んだ。
「能力に早く慣れてもらわないといけないし……。俺の体温、少しずつ奪える?」
内心はドキドキ……、下手したら凍死する気がするもん。
「……やってみます」
何もないところから、カレンが徐々に透けて見えてきた。
「も、もうぞろそ、そろそろ、ストッッ!!」
「はい」
まだ、若干透けているカレンから手を話す。
「コ、コーヒーでも、あとはコーヒーでも飲もうか……」
これ以上は無理、さ、寒すぎ……。
「もう、寒くないか?」
リビングに移動し、俺はカレンがコーヒーを飲み終わったのを待ってから言った。
「はい、大丈夫です」
俺の部屋のことは……あとで考えよう。
てか、忘れよう、あれは気のせいだ。
『午前中は晴れているところも多いですが、午後になるにつれ全国的に雨が降るで――』
降りてきてリビングの来た時になんとなく付けたテレビをなんとなく消した。
「昨日は何も食べてないし、お腹空いてるだろ?」
「……」
カレンはお腹をさすってから頷いた。
「カップラーメン……いや、トーストの方がいいか?」
カップラーメンは伸びたの食べて嫌なイメージが出来ちゃってるかも、とか無駄に考えをめぐらせ、すぐに作れる別の案を出してみる。
「はい……?」
一応頷いたけど、頭の上に?マークが見える。
「んじゃ、少し待ってて。ついでにコーヒーのおかわりいれとくから」
ふと時間を見ると、3時20分を少し過ぎた所だった。
今日は火曜日……学校休んでいいだろうか。
「はい、おまたせ。簡単だけどね」
トーストはトースターで作り、コーンスープも用意。
あとは、マーガリン、イチゴジャム、ブルーベリージャム、ピーナッツバターを持ってきて終了。
「そういえば、どこから来たんだ? 話して大丈夫なら、知ってる事を教えてほしいんだけど」
今更な質問をしつつ、トーストを食べた事が無さそうなので、取り合えずトーストにマーガリンだけを塗って皿に乗せてカレンの前に置いた。
「……」
カレンは質問を聞いていたのかいないのか、トーストをしばらく見つめたあと両手で持ち、恐る恐る一口食べた。
「おいしいか?」
「……普通です」
おいしくもまずくもないのかな?
二口、三口と全部食べたから、嫌いではないようだ。
「まだ食べるか?」
「……あつっ、熱いです」
容器を持ち、コーンスープを飲もうとしたが想像以上に熱かったようで、あたふたしている。
というか、さっきから返事になってないんですけど……。
「これはどうだ?」
次はトーストにイチゴジャムを塗って渡す。
その前に、カレンを観察しながら俺はコーンスープを飲み、ピーナッツバターでトーストを一枚食べていたけど、それはどうでもいいか。
「……おいひいでしゅ!!」
「おいしいのは分かったから、食べながらしゃべるな……」
予想以上の反応に驚いていると、あっという間に食べてしまった。
「次にこれはどうだ?」
俺はブルーベリージャムを持って見せようとしたが、カレンは俺が持っているものには目もくれず、イチゴジャムを凝視していた。
その輝く目は、もう一枚くださいと要求しているように見えるので、素直にもう一枚作る。
「……結構食べたな」
「はい」
その後、カレンは黙々とイチゴジャムを塗ったトーストを10枚食べて大人しくなった。
「あっ、……私はずっと深い深い眠りの中にいました」
カレンが何かを思い出したように語り始めたので、びっくりしつつも俺は静かに聴くことにした。
俺の質問、ちゃんと聞いてたのな。
屋根が無くなった後は、まったり、そしてちょっとシリアス?
基本的には面白くいきたいですが、次は――。