Episode2 少女の記憶 (2)
「う~ん……」
なぜか眠気が覚めていた俺が部屋に戻ると、布団から唸るような声が聞こえた。
「寝言? 起きた?」
顔を覗き込んでみると、いきなりカレンが目を開いた。
「お、おはよ」
「……」
カレンは瞬きをしながら沈黙、俺がすぐに一歩下がると上半身を起こした。
やましいことはないつもりだけど、鼓動が早まる。
「汗掻いてたし、水でも飲む? 今持ってくるからさ」
と言って、なんとなく居心地が悪くなった俺は部屋をまた出ようとする。
「……」
が、静かに服を捕まれた。
「ど、どうした?」
不意打ちで、驚いた俺がいるのは秘密。
カレンに向き直る。
「一人に……なりたくない」
よく見ると、カレンの瞳からは涙が流れ零れていた。
とても弱弱しく、今にも崩れてしまいそうな表情……。
「……分かったよ」
理由は分からないけど前の自分と重なり、とてもじゃないけど見捨てられない。
俺はベットの端にそっと座る。
とはいえ、どうしたらいいのか分からない。
カレンはずっとこっちを見ているので、気まずく感じ部屋を見渡す。
寝ているあゆみを移動することに抵抗があって、用意した布団に寝かせてある。
静かなせいか、時計のカチッカチッって音がやけに大きく聞こえる。
服は捕まれたまま。
あゆみに殴られた顔がまだ少し痛い。
あゆみが目を覚ましたら、この状態ってまた殴られるのかな。
あの鉄拳は、鍛えてなくて出せるものか?
でも、あゆみは俺と同じで部活には入ってないはず……。
「ご主人様」
「ぅあ!?」
思考が飛んでる時に声をかけるとびびるので止めてほしい。
「って、ご主人様じゃないよ!? ……どうしたの?」
「なぜそんなに優しくしてくれるんですか?」
「え? 質問するほどじゃなくないか?」
カレンみたいな子だったら誰でも優しくするでしょ。
本当は、ただ流されてるだけな気もするけど。
「……えっと、母さんに『女の子には優しくしなきゃダメよ』って言われてたからかも」
カレンが反応してくれないので、答えを搾り出す。
「それだけですか?」
だけとか言いますか。
「そ、それだけ。……そろそろ落ち着いた?」
「……」
カレンはまだ何か考えているのか、ぼーっとしている。
ふと、ある事を思い出した。
あゆみはカレンに触れたのに何も起こらなかったようなぁ……。
「ちょっと、おでこ触っても……いい?」
途中まで言って、傍からみたら今の発言はセーフかなとか考えてたりする。
カレンは静かに頷いたので、そっと触れてみる。
「まだ熱いじゃん!! 横になってなさい!」
「は、はい」
「あ、ごめん。……大声出して」
全然熱が下がってないことに焦ったけど……触れた?
カレンは素直に横になった。
「……あのさ、聞き忘れてたけど、俺の体温奪えたよね?」
「え?」
カレンは目をぱちくりさせている。
無意識ってことかなぁ。
「そういえば……、イカロスさんが、特殊な能力を君は手に入れているはずだよ。すぐ慣れると思うから、どんどん使っていきなさい……って」
イカロスさん……あのワイルド翼野郎だろうな。
どんどん使われたら、慣れる前に俺死んじゃう気が……。
「どんな能力かは言ってた?」
「言ってませんでした」
確か俺には、温度調節(Regulate The Temperature)って言っていけど、もっとよく聞いておくべきだった……。
でも、調節って言ってるんだから、逆に熱を逃がす事も出来ると思うんだけど。
「う~ん……、カレン?」
「はい」
「試しに、手から熱を出すイメージでもやってみてもらっていい?」
生物に対してしか体温調節できないっぽかったら、俺が生け贄になるしかないな……あはは。
もわッッ
「うぇ?」
なんか暖かい部屋に入った時の感覚を感じた。
レベルが何倍も違う感じで……。
じゅわわっ
「……あれ?」
変な音がして上を見ると、きれいなお星様がきらっと輝いていた……。
久しぶりの更新で、申し訳ないです。
妹も小説始めましたので、見ていただけると幸いです。
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