Prologue(1)
「それじゃあ、行ってくるな」
「ああ、いってらっしゃらい。今度はいつ帰ってくる?」
「2ヶ月はかかりそうだな……いつも家のことを任して悪いな」
「それはいいっこなしだろ、母さんがいない分俺が頑張るのは当たり前だよ」
「そうか……。それと、気をつけろよ?」
「火の消し忘れとか、寝坊とか?」
「おっと、時間が無い。まぁ、それも少しは心配だが……もう出るな」
「あっ、いってら――」
バタン
いきなりだけど、俺の名前は遊馬俊(Asuma Syun)。
只今、学校に向かって歩いている高校一年生です。
最初の父さんとの会話もあるし、家庭事情を少々話しましょう。
兄弟はいないので一人っ子です。
母さんは俺が中学生になった秋に、交通事故で亡くなってしまった……らしい。
らしいっていうのは、事故で亡くなったというのを刑事さんとかじゃなく父さんに直接教えてもらったってことと、お葬式の時に母さんは火葬されなかったことがあったから、本当に死んじゃったって思えないんだよね。
だから、今もどこかで生きているんじゃないかって……。
自分のいいように解釈してるだけかもしれないけど。
それで、父さんの方は今も元気にばりばり働いてます。
出張が多くて家にいる事が少ないから、なんか一人暮らしをしているのとほとんど変わりません。
なので、いやでも家事全般が出来るようになってしまった。
それで、父さんの仕事なんだけど、何をやっているか一切教えてくれません。
何であんなに秘密主義なんでしょうかね。
ついでに、父さんも母さんも33歳とちょい若い。
仕事の時はスーツ姿の父さんだけど、普段の格好は結構若いんだよね。
とはいえ、五日前に帰ってきて、昨日の夜にはまた出張で出ていっちゃったから、普段着を見るのは結構貴重。
最後に俺なんだけど、やけにトラブルに巻き込まれます。
トラブルの内容はいろいろです。
こうやって、思考を巡らせている間にも自転車に3回ほどぶつかりそうになってます。
「ちょっと、金貸してくれねぇか?」
そして今も、鉄バットを持った帰宅部であろう茶髪さん率いる三人組にいきなりお願いされています。
「ごめん、基本的に必要な分しかお金持たないから無理」
このお金を渡しちゃったら、今日の晩飯が買えなくなってしまう。
「なんなんだ、その態度は? 嘗めてんじゃねぇぞ!」
「あぶなっ」
咄嗟にしゃがむと、ビューっと頭上を何かが通る音。
その体勢から飛ぶような勢いで男たちの間をうまく抜け、走り出す。
「なっ!?」
こうなれば、俺の勝ち。
男たちは一瞬、動揺して止まっちゃったから5メートルほどはすぐに離した。
脚力には自身あるんだよね。
キキキッッ
走ってすぐ右に曲がろうとすると、今度は一般車が今頃ブレーキをかけても手遅れな速度で走ってきていた。
「きっつ……」
当たる寸前で、車の上に乗っかり抵抗せずに転がる。
「だっ、大丈夫!!?」
運転していたおばさんが出てきて、倒れている俺に動揺しながらそう言ったけど、はいとは答えづらい。
若干受身を間違えたので右肘が痛いし、さっきの男たちから逃げなきゃいけないし。
「はい、大丈夫です」
それでも、言わないと逃げる時間を失っちゃう。
「嘘おっしゃい! 車に轢かれて大丈夫なわけ……待ちなさいよ!」
轢き逃げしない上に、心配までしてくれるっていうのは常識のある優しい人だな。
確か、俺が飛び出したのがいけないのに車の方が悪くなるんだっけ?
とか考えながらも、走り出す。
ゴールは学校。
始まりました『ComPliCaTion』。
1.[U]複雑[紛糾]化、複雑な状態
2.((しばしば~sで単数扱い))種々の要素[物]の複雑な結合
3.めんどうな事態[問題];混乱[紛糾]のもと
4.合併症、併発症
といろいろ意味のある単語のようです。
英語は苦手です……、俺は3のめんどうな事態という意味合いでこの題名にしました。
変な単語選んでごめんなさいって気持ちですので、説明しました。
それでは、この少年を中心に広がる話を楽しみにお待ちくださいな♪