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夢は叶う

作者: 山木 拓


 俺の夢がやっと見つかった。何日も引き出しに放置されていた進路希望票を、ついに引っ張り出す。夢のためにもとりあえずはネームバリューのある大学に行くべきと判断し、第三志望に少し頑張れば手の届く偏差値の大学、第二志望に頑張れば手の届く大学、第一志望にかなり頑張れば手の届く大学を書いた。これでいい。


 それにしても、好きな漫画のジャンルが幅広い自分にこれほど感謝した日はない。冒険アリのバトル漫画、頭脳戦のギャンブル漫画、人間ドラマ入り乱れる推理漫画、そしてアイデア溢れる料理漫画。食わず嫌いせずに料理漫画を読んでみて、食わず嫌いせずに青年誌の料理漫画を読んでみて、本当によかった。この作品に出会えたからこそ料理人を志す夢が生まれた。


 料理とはアイデア勝負の世界だ。だからこそ俺は下手に料理の知識を入れるべきじゃない。変な固定観念が生まれ、独創性が失われるくらいなら独学で学びつづけたいと思っている。それに、絵や音楽、小説、お笑いのような、もっと独創性が求められる世界では、急にブレイクする人間は誰かに何かを教わってそれらの技術を身につけた訳ではない。彼らの人生経験や日常の中の発見が飛躍に繋がっている。ならばこそ、俺は誰かにそれを教わるべきではないのだ。


 それに今の時代、料理人は料理の技術だけでは生きていけない。結局どんな業界でも頭が良いやつが成功するし長続きもする。成功者は皆作戦の建て方や先の見通しが抜群にすぐれている。かてて加えて、キャラクター性や話題性、つまり個性が必要だ。イケメンすぎる〇〇、親が有名人の××、イチ企業の社長でありながら△△。俺はイケメンでもないし親は普通だし社長になれそうな器でもない。俺でも作れそうな個性といえば、高学歴。これしかない。


 人生経験のためにもキャラクターのためにも、俺は良い大学を出るべきなんだ。


 しかし大学に通う間、料理人になる夢を放置するのも良くないだろう。俺はその期間を研究に充てると決めた。いきなり料理を作っても失敗するに決まっている。だったら手順や手法をたくさん勉強しよう。今の時代、欲しいジャンルさえ定まっていればAmazonでなんでも買える。そこで料理本を買えばいい。Youtubeを見れば料理についての解説動画もいくらでもある。最近ではゆっくり解説がたくさんあっていて、それに従っていれば問題無いはずだ。


 ただし、見たり読むだけでは意味がない。実際に食べるのも大切だ。今の時代料理人を目指したり飲食経営を志す人は沢山いる。そういう人は誰でもいいから試食してほしいはずだ。例えばTwitterなんかで「このツイートにリプライをくれた人の店に食べに行きます!」なんて発言すれば反応してくれる筈だ。さすがにタダでは試食できないだろうが、そういう活動を頑張っている人のところに行けば何か得られるものがあるだろう。


 それと、需要の調査も必要だ。どれほど斬新なアイデアを繰り出したとしても時代やブームにあっていなければそれも意味はない。Twitterとはつくづく便利だ。文面と選択肢さえ用意すればアンケートも可能らしい。俺が極めるべきジャンルをアンケートしてみよう。「皆さんにお聞きします!俺が極めるとしたらどんなジャンルの料理がいいですかね!」と発信すれば色々と見えてくる筈だ。


 これから先、一人で夢を追っていくのも辛く苦しいだろう。同じ夢を持つ人間がいればお互い心の支えになる。仲間も見つけるように発信してみよう。


 これだけ準備すれば完璧だ。こうして俺の、夢への壮大な計画はスタートした。


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