カラオケに行くはずだったのに
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「あれ?」
「なんだ、翔、どうしたんだ?」
「あ、あそこ…………」
僕は、少し離れた場所を、顎で示した。その僕の動きにつられるように、悟と樹は、僕の視線の先を見た。
五月に入ったばかりのある日、悟も樹も、部活が無かったから、僕たちは遊びに行くことにした。以前に、樹が一緒に行きたいって言っていたカラオケだ。結局行ってなくて、今回行こうということになったのだ。でも、僕は友達とカラオケなんて初めてで、本当は少し困っていた。
学校の外に出て、直ぐに、僕はこの前よりも離れた場所に、同じ人がいるのを見た。そう、一人で夜にコンビニへ行こうとしたときに、僕の後ろの方にいた女の人の幽霊だ。今度は、僕らの進行方向にいる。
「な、なんだよ…………あの、女の人のことか?」
樹が、僕の背中の方に、半分くらい隠れた。
「お前ら、何のことだ? 誰もいないぞ⁇」
「マジか‼ 悟に見えないってことは————翔平、マジでヤバイ!」
樹は僕の手を取って、反対方向へ走り出した。
「ま、待って、樹。カラオケに行くんじゃないの?」
「いいから、あいつから離れるぞ」
僕は、樹に促されるままに、一緒に走った。悟も一緒だ。