悪夢と弱さ
泰河の話を聞いたところで、僕らはお昼にすることにした。僕も適当に用意してあったし、さくらのおばあさんのお惣菜もあった。あとの三人もいろいろ持ってきてくれたし、みんなでそれを食べた。ただ、僕はあまり食欲が湧かなかった。
「しっかし、あんな壮絶なことを乗り越えてきていたとはな。全然俺も気が付かなかったぞ」
悟は泰河の経験したことを本当に驚いていた様だった。でも、それは僕も同じだ。
「それは、俺が言わなかったから。本当は、誰にも言うつもりはなかったんですけどね」
ああ、僕が言わせたようなもんだな。
「でも、言ってすっきりした顔しているぜ。逆によかったんじゃね?」
「そうかもしれませんね。まあ、普通じゃない状況にいる先輩たちだから、言えたんですけどね」
「泰河さ、泰河の友達までは無理かもしれないけど、家族には話してみたらどうかな? その、今話したこととかでなくて、別の星に行かなくちゃいけないことをさ」
「でも、結局会えなくなるし……………あっ」
泰河は思いついた様な顔をして、僕の方を見た。
「そう、僕がいる限り会えるよね」
「でも、両親に話しても、俺のことを忘れてしまうだけだと思うし————」
「そうかもしれないけど、どうにかなるんじゃないかな? 少なくとも、僕らはきっと忘れない。泰河が別の星に行ってもね。僕はそうだって気がする。だいたい、ほんの少しだったけど、泰河の星にも行ったでしょ。それに、ゾラや小鬼たちも、もう泰河のこと知っているしね」
「忘れるらしいんです。いなくなった人間のことは。元々いた世界の人たちは————光の加護のところで聞きました。今だけ、それが帳消しになっているけど、またきっと忘れてしまう——————でも、少し考えてみます。前とは、きっと全然状況が違うから————」
「うん、そうだよ」