見える様になったさくら
「さくらが見えるのは本当よ。しかも、さくらが見えるものを、私も見ることができるの。さくらの手を掴んでよーく見ないと見えないけどね」
「マジか————俺、水瀬に当分近づかないでおくわ」
樹は冗談半分に言った。
「そうね、河野は安心できないから、さくらには近づかないで」
「わーかってるよ」
「もう、そのことは言わないでくれないかな? 樹だって、被害者だよ。操られていたんだし。誰が悪いってわけじゃないんだ」
「でも、そういう願望もあったからでしょ」
「奈子、もう終わったことだから。河野君だって、かなりきつかったんだしね」
「分かっているけどさ————」
佐々木は納得がいかないという顔をした。さくらの側から立って見れば、そう思っても仕方がないのかもしれない。でも、僕は樹がこれ以上苦しむのは嫌だった。
「今日は、そのことを話しに来たわけじゃないだろ?」
「悟の言う通りだよ————でも、さっきの、佐々木さんも見えるっていうのが不思議なんだけど」
「うん………前に春休みに奈子と出かけていたときに、凄い怖い感じの幽霊が見えたの。血まみれの男の人で、交差点の中に立っていて————私、見えたときに硬直しちゃって、でも目線もずらせなくてね」
「なんか、どんどん怪談になっていくな———」
樹が僕と悟の間に割り込んできた。怖いのかもしれない。
「おい、樹、狭いぞ」
「だってよ———」
「いいよ。樹、間に入ってくれば」
僕は、少し横にずれて、樹を間に入れてあげた。