失恋していた悟
「翔、もしも、相田のことが少しでもいいと思うなら、付き合ってやってくれ。俺のことは気にしなくていいから。相田が幸せならそれでいいんだ」
ない、ない、絶対にないと言いたいところだけど、なんて言っていいか分からない………。
「悟、翔平にそんな余裕があると思うか? つーか、俺も友達の好きな子なんてマジ無理だ。しかも、自分が好きなわけでもないんだしな」
「まあ、そうだな————翔、悪かった」
「いや、なんだか…………こっちこそ、ごめん……」
「そう言えば、泰河は、今日は来ないんだな」
悟が話題をそらすように、泰河の名前を出した。
「ああ、泰河は友達と過ごすらしいよ。またこっちに戻ってこられなくなるかもしれないし、友達との時間も大切にしたいみたい。泰河も大変だよね」
「召喚とかってスッゲー楽しそうだけど、実際にあったらやっぱ困るわな」
「泰河はいい家族もいるのにね。泰河がいなくなったら家族はどうなるんだろう?」
「結構、残酷だよな。泰河の様子だとそんな風に見えてこないけどな」
まだ、僕と泰河が逆だったら良かったのにと僕は思ってしまった。僕なら、悟や樹と仲良くなる前の高校生の僕なら、誰も気にしなかったはず————そう言えば、さくらはこうなる前から、僕を気にかけてくれていたって言っていたっけ————。