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第六十四話 『老騎士ロバート』

今回でアルティキュアス様のお話も終わり、新キャラ(でもないのだが)ロバートさんが登場です。


ですが、ここからは書き上げたら投稿するのではなく、最期まで書き上げてから投稿しようと思います。

少し・・・結構時間掛かると思いますが、よろしくお願いします。

 木漏れ日の射す広葉樹の森を前に広がる庭に、エリアは招かれ今、神獣アルティキュアスとお茶をしていた。


 「これも食べなさい」


 木の実や果物が並べられた皿の中にあるナッツを摘み、お茶を頂く。


 静かで落ち着いた庭にそよぐ風も気持ち良い。


 「さて、そなたに付いての話だが」


 「はい」


 これから語られる、自分でも分からない本質に付いての話だと思うと緊張し、生唾を飲む。


 アルティキュアスは葛城涼の正体に付いてはハッキリとは分からないと言うのが結論だった。


 「普通のゴースト系の魔物や魔法生物といった類のものでは無いよ。勿論アンデットでもないけど、勿論普通の生物でもない」


 「そうですか」


 「そう悲観するものでも無いよ。そなたはどちらかと言えば私達に近いのだと思う」


 この言葉には涼も心底驚いた。人魂の様な自分がアルティキュアスと神獣に近い存在だと言われたのだ。


 「私がアルティキュアス様に近い存在だなんて・・・」


 自分とは全く違う雰囲気に吞まれそうなのに。


 「そうかな?所でアルティキュアスって長いだろう?そろそろ私の事はアルスと呼んで貰いたい」


 「そ、そんな恐れ多い!?」


 両手をブンブン振って拒むが、アルティキュアスは微笑を崩さない。


 「そんな物は気にしなくて良いんだよ。それにあの場所を回復してくれた恩も有る」

  

 「恩だなんて、お世話を掛けたのは私の方です。恩だと言うなら私こそ恩を返さないと」


 あの場所の事を知っていれば、言われなくても能力を使っていたと思う。況してやちゃんと魂を浄化して天に還せると分かった今なら尚更だ。


 「そうか、それは残念だ。ならお言葉に甘えて1つ恩を返して貰おうかな」 

  

 「はい、私に出来る事なら全力で頑張ります」


 「じゃあ、私の事は『アルス』と呼ぶ様に」


 「え!?」


 ふふふ、と微笑むアルティキュアス。


 「私の事も気軽にアルスと呼ぶ。それで、手を打とうじゃないか。君にしか出来無い事だ全力で頑張ってくれ」


 エリアはぐぬぬ・・・と、拳を握り何か言いたいのを我慢し、其のままゆっくりと下を向き、小さな声で分かりましたと震える声で呟いた。


 「なに?聞こえないのだが」

 

 何故か涙目になって、分かりましたアルス様とエリアは観念した。


 様も要らないんだがな、と言っていたが流石にそれは断った。


 会って間もない神獣様に呼び捨てなど心がもたない。


 そして、起きて来たファムも一緒に葛城涼の能力や正体に付いて話をした。


 神聖系の気配を持っているにも関わらず、神聖魔法が苦手なのが普通ではないが、それこそ涼の正体を知る鍵だと言う事。霊的存在ではないので、対アンデット用の魔法『ターンアンデット』の様な魔法や道具は効かない事が分かった。

 精霊や神聖系に効く攻撃は分からないので気を付ける様にとも言われた。


 「流石に試す訳にはいかないからね」


 更に能力の方だが、カースイーターは涼の知っている通りで、強力な解呪能力が有る事、ソウルイーターはアルスの言う通り、食べても魂は消滅せず天に召す事が分かったのが今回最大の収穫だった。そして、変化球的とはいえ食べた時の記憶の流入のコントロールが出来る様になった事も。


 アルス曰く、強力なターンアンデット能力だと思えば良いとの事だった。 

 

 これで、抵抗少なく魂を吸収出来る様になる。


 そして、ポルターガイストはゴースト系では無かったのでサイコキネシスと名前を変える事にした。


 自身の正体に付いてはハッキリしなかったが、懸念していた物ではなかっただけでも良かったと安堵した。

 



 「もう、行くのかい?」


 一晩ベッドを借りて次の日、エリア達はアルスの元を離れる事にした。


 昨晩は、魂状態で朝まで話をしたが、エリアの体とファムはしっかり休んだので快調だ。


 お世話になったので朝食はエリアの持ち物から御馳走した。その時温野菜とマヨネーズを出したら大層気に入られ、1瓶置いて行く事になった。


 因みに食べる前にマヨネーズの材料の卵を食べても良いのかと聞いたら、獣の守護者だからと言って肉や卵を食べない訳ではないらしい。


 「はい、お世話になりました」


 深々と頭を下げるエリア。その表情はすっきりとして晴れやかだ。


 「此方こそ。また御出で。旅の話も聞きたいし何時でも歓迎するよ」

  

 「ありがとう御座います。また来ますね」


 エリアと握手し肩の上のファムの頭を撫でて「お母さんによろしくね」と言って分かれ、振り返り歩き出そうとした瞬間声を掛けられた。


 「ああ、そうだ」


 「はい?」


 何か忘れ物だろうかと振り返った所を不意を疲れ頭の後ろに手を回され、御でこに口付けをされた。 


 エリアの思考が止まる。

      ・

      ・

      ・

      ・

      ・

 「なっ、なにを!?」


 きっかり3秒経って、エリアの顔が真っ赤になり、ファムも余りの事に固まっている。


 エリアの体は女でも中身の涼は紛れも無く男なのだ。そんな男が男に御でこにキスされ照れた。


 いや、涼にそんな趣味がある訳じゃなくてアルスが性別を超えて美しいのが悪いのだ。


 だが、思いも寄らぬ行為にエリアは焦りまくった。


 「旅の安全を祈るおまじないだよ」


 アルスはファムの御でこにも口付けをして、2人から離れた。


 フフッと笑い、和やかに手を振るアルティキュアスに何か言いたかったが、エリアは急いでその場を離れる事にした。


  

 幻の池『ユリニウス』を離れ、今エリア達は小さな山が連なる森の中の街道を歩いていた。


 森の中、道無き道をエリアの足で2日、街道に出て人目の無い時は走って更に2日野宿を繰り返し、今は山間の曲がりくねった道を歩いている。


 夜になる前にもう少し開けた場所まで行きたいのだが、地図を見る限り日暮れまでに付くのは無理そうだった。山間の森の中にテントを出せる平地が有れば良いのだが。


 そんな平穏で少し退屈な旅路も不意に終わりを告げようとしていた。


 エリアは訓練も兼ねて常に魔法を発動している。1つは周囲を記憶する為の『オートマッピング』。人攫いの洞窟に戻る時にも役に立った魔法だ。

 そして、もう1つが『サーチ』周囲の気配を察知する魔法だ。最初は森の全ての生物の気配を察知して頭が大変な事になったが、今は驚異になりそうな者や敵意や悪意だけを認識する様にした。が、まだ調整が難しい。


 他に『身体強化』も逆の効果で掛けている。


 そして、今サーチ魔法に反応が有ったのだ。


 気配を消し、森の中を走りっていると前方から戦闘音が聞こえて来たのだ。


 キィン! ガン!


 現場から少し離れた上の木の上に陣取る。


 戦っているのは武器を持ったモンスターか人間かと考えていたら、獣人に囲まれている人間が見えた。


 数は6対1。既に2人は倒れている。


 「まったく、こんな年寄りを襲うなんて」


 老戦士は、小さな盾とブロードソードで器用に相手の攻撃を往なし、的確に攻撃を与えていた。


 ただ生半可な攻撃は、獣人の硬い皮膚に阻まれている。


 「おらジジィ!さっさと死にやがれ!」  


 「身包み剥がされて逃げてれば良い物を!」 


 「老い先短い癖に抵抗しやがって!」


 狭い街道で2人が同時に襲い掛かるが、力任せの攻撃を受け止めるのでは無く盾で往なし、もう片方の攻撃を剣で捌く。


 そして、体勢の崩れた男を斬り付け、少し下がった。


 どうやら既に瀕死になっている馬を庇って戦っている様で、動きが制約されているらしい。


 その事を利用して、後ろに回ろうとしている獣人を見てエリアも動いた。


 木の上から飛び出し、後ろに回ろうとしていた獣人の近寄り、スリープの魔法で眠らせた。


 (うん、スリープの魔法は便利だな~)


 残りは3人。内2人は老騎士と戦闘中。なので、隠れているもう1人に向かってアンジェにも使った粘土の牢獄で捕らえた。


 厚さは2mだが、アンジェでも抜け出せなかった厚みだし、鼠の獣人なら大丈夫だろう。


 そして、老騎士と戦っている2人にもスリープの魔法を掛けて、戦闘は終了した。


 

 森の中から出てきたエリアに驚きもせず、剣を収めると頭を下げた。


 「御助力忝い」


 顔を上げた老騎士は頭髪は白く染まったロマンスグレーだがふさふさで、白い顎鬚を生やした精悍な顔立ちの騎士だった。


 重ねた年月を思わせる顔立ちと、その歳に似つかわしくない鍛え上げられた体、今も尚堅牢で実直な騎士である事を醸し出していた。

 

 「わしの名前はロバート、旅人だ」


 「私はエリア、同じく旅人です」


 

 ロバートと名乗った老騎士は、既に事切れた愛馬を愛しむ様に撫でて、別れを惜しんでいる。


 その間にエリアは襲撃犯を木に縛り付け粘土で覆ってやる。この後最寄の町なり村なりで獣戦士か警邏に回収して貰う為だ。


 「その、申し訳有りません。私がもう少し早く辿り着いていれば」

 

 「その様な事・・・、最初に矢を受けてしまったのだ。騒ぎになってから駆け付けても間に合うまい」


 優しい眼差しで頬を撫でると立ち上がり、再びエリアに頭を下げた。


 「こやつをこのままにするのは忍びない。この街道に魔獣や猛獣を誘き寄せる事にも成りかねないし、奴らの餌になるのは忍びない。せめて埋めてやろうと思うのだ」


 エリアは黙って頷く。


 「エリア殿はどうか先を急いでくれ。この先に地図には無いが小さな村が有る。急げば夕刻には着くだろう」


 「ロバート殿は?」


 「わしはこやつを埋めてから、少し離れた所で野宿だな」


 見た目、スコップの様な道具は見当たらない。馬1頭を埋めるだけの穴を掘るのは大変だろうし、400㎏位有りそうな馬の亡骸を穴まで運ぶのも難しいだろう。


 「私も手伝いましょう」


 「しかし・・・」


 流石に其処までして貰うのは申し訳ないと、遠慮するがエリアは問答無用で小袋を取り出した。そして、小袋を馬に近付けて次元倉庫を使って収納する。こうする事で、指輪ではなくこの小袋が次元倉庫だと見せ掛ける。


 「なんと、次元倉庫か!?」


 「はい、これでロバート殿の荷物も運べます」


 「いや、しかし・・・」


 「さぁ、早く行きましょう。村の場所まで案内してくださいね」

最後まで読んでくれてありがとうございます。

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誤字脱字の指摘、ありがとう御座います。



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