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第四十八話 『決着』

『アストラル・ライフ』も佳境!

今回含め、残り3話となりました。

最後まで読んでやって下さい。

 エリア達が闘っている屋敷の前に2人の人影が有った。


 「この中ですか?」


 「はいクラウス様」


 異国のそれも高そうな服を着た青年とフードを被った女性は庭の様子を伺っていた。庭から聞こえる戦闘音、そして先程庭から出て行った5人の人影。


 「ここは私が対処しよう。向こうは任せたよ」


 「承知しました」


 すっと姿を消した女性を見送って男性は庭の中へと入っていったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 

 

 「さてと・・・」


 エリアはシャルバとガチンコで殴り合っている紅い虎男を見た。


 「あのシャルバと互角に殴り合ってる・・・」


 少し呆れるというか、ゲンナリというか・・・エリアは少しやる気が抜けた。


 このまま役員が呼んだ冒険者を待っても良いかな?等と一瞬頭を過ぎったがその考えは頭を振って吹き飛ばす。


 シャルバに低位の魔法は効かない、だがエリアには魔法のレベルが分らない。ルルはそう言う事を教えてくなかった。


 それに、1つ思い出した事が有る。さっき署員が2人で放った魔法『インフェルノ』あの魔法と同等の火力をルルは1人で出していた。それも最初に教えてくれた『ファイヤー・ボール』でだ。ルルやアフィは魔法の威力には個人差が有り、同じ魔法でも威力が変わると言っていた。ならば、自分の使える魔法でもより多くの魔力を込めれば下位の魔法でも上位並みの威力が出るのではないかと。


 そこでエリアはより薄く、硬く刃の周りに魔力を纏わせた。『エンチャントウェポン』と云うより『シャープエッジ』と言った感じだ。


 そして、シャルバの一撃で一旦下がった虎男の横を駆け抜け、入れ替わる様に前に出た。


 「お前!?」


 虎男にだけ目が行っていたシャルバは不意を付かれ、慌ててエリアを殴り飛ばそうとしたが遅かった。


 エリアはシャルバの攻撃よりも早く懐に入って双剣をシャルバの腹に突き立てた。


 ガチ!


 鋭い一撃は、再び硬い毛に阻まれる。


 「硬い!?」


 エリアは腕の下を掻い潜って背中側に走り抜ける。


 そのエリアを追撃しようとしたが、後ろから迫る虎男に阻止された。


 「この武器じゃ、あの毛皮を貫くのは難しいって事かな?」


 今エリアが持ってるのは、鍛冶見習いの女の子が作った物だ。


 見習いの子が作ったにしては良い物かもしれないがやはり何時も使っている双剣には遠く及ばないのだ。


 そして、恐らくはエリアの愛剣でも・・・。


 武器の性能は2つの要因で決まる。それは武器を作る職人の腕と素材だ。


 職人の腕は問題ない。カエンの鍛冶師としての腕は初心者冒険者のエリアには勿体無いくらいだ。


 だが問題はその素材に有る。


 修行中にリリに聞いた武器に大事な2つ目の要因、希少な素材を手に入れる事だ。


 「やっぱり素材が良いと強くて軽い武器が作れるって事?」


 「それも有るけど、最大の違いは魔力の通しやすさ」 


 「魔力?」


 「そう魔力。強い武器は魔力が通し易くて軽くて丈夫な素材を使う。魔物の素材が好まれるのは、魔力が流し易いから」


 武器に掛けた時の効果が違うらしい。


 後からアフィに聞いたら素材が良いと魔力を込めた時の変換率が良いのだそうだ。


 大体、普通の一般的な冒険者の武器で30~50%、有名な鍛冶師が作った高級品で60~80%。そして、遺跡等で見付かる伝説級なら90~100%なのだそうだ。


 残念ながら今、この双剣に魔力を流しても10%も無いだろう。これではあのシャルバの防御は抜ける筈も無い。


 さて、と前を見る。殴りあうシャルバと虎男。と、虎男と目が合った。


 「女子供は邪魔だ!そこで大人しくしてろ!」


 カチン!


 「こいつは俺が倒してやる!」


 虎男の拳が腹に入り、後ろに下がるシャルバ。そこに追撃を加え様として尻尾に叩かれ今度は虎男が横に吹き飛ぶが、地面に手を吐いて一回転して受身を取ると直ぐに殴りあった。


 「アナライズ・・・」


 ここまでの戦闘でシャルバのステータスが有る程度分ったかも知れないと掛けた解析魔法・・・だがその魔法でエリアは意外な情報を得た。


 シャルバが着けさせられている『隷属の首輪』そして、何処かの本で読んだのだろうシャルバの生態。


 シャルバは本来遠く離れた島国等の深い森に住み、森の神と称えられた存在だった。


 「そうか、お前・・・」


 森を荒らす者には恐怖の対象だが、森で遭難した子供を助けたりする存在で、森や其処に住む者達を守る者だと。


 詰まり今暴れているのも隷属の首輪の所為だと気が付いた・・・ならば、とエリアは方針を変える事にした。


 一見シャルバと虎男の力は拮抗してる様だが技術の差か僅かに虎男が勝っていて有利に見える。さらに虎男は何か余裕を感じる。


 このままでは虎男が倒してしまうかもしれない・・・。


 エリアは双剣を鞘に戻すと拳を握って力を込めた。


 全身に魔力を流す。より強く、硬く、速くをイメージする。もっと、もっと、もっと・・・。


 全身を覆う魔力がの輝きが増し、激しく放出される。その溢れ出る魔力を抑え制御し、体内に納めてく。


 徐々に収束し、ピッタリ体に収まった。


 (光りが漏れてる間は人前で使うなって言われたけど・・・)


 練り上げ、強化した魔力が全身を駆け巡る。まるで血液が激流の様に流れてる感じだ。


 「よし!」


 『フィジカルブースト』


 身体強化の魔法。魔力操作に慣れた事と、旅に出る話が上がった事で最近になって教えて貰った魔法だ。


 正し、余り人前で使わない事と人に話さない事を約束させられている。


 普段は外に放つ魔力を体内に巡らせるのだが、魔力操作を誤ると体を内側から爆発させてしまうらしい。


 元々はアフィが魔力で体を動かそうとした研究の中生まれたアフィのオリジナル魔法で定型魔法の『フィジカルブースト』とは別物らしい。良く分らないが。


 軽く地面を蹴って、一気に迫ると回し蹴りでシャルバの脇を抉る様に蹴り飛ばした。


 ドン!と言う音と共に吹き飛ぶシャルバ、地面に叩き付けられるもどうにか体勢を立て直して顔を上げたらそこにエリアの拳が有った。


 振り下ろされた拳を辛うじて躱すが、追撃の蹴りが咄嗟にガードしたシャルバの腕を跳ね上げた。体の正面がガラ空きになった腹に回し蹴りが炸裂してシャルバを再び吹き飛ばす。


 「ふ~・・・」


 深く息を吐く。


 「これは・・・」


 虎男は素直に驚き、エリアの強さを訝し気に見ていた。


 さて・・・シャルバが再び暴れ出す前に隷属の首輪を外そうと一歩、歩き出したが突然膝の力が抜けて崩れ落ちてしまった。

 

 (え!?)


 両手を突いて転倒を防いだが右膝が震えてまともに動かない。


 「おい、お嬢ちゃん?」


 虎男が不安そうに声を掛けるが、全身が早鐘の様に脈打って返事も出来ない。


 そんな時、倒したと思ったシャルバがゆっくりと立ち上がり始めた。


 グルルルル・・・。


 怒りの篭った目が動けないでいるエリアを睨む。


 「ちっ!?気乗りはしないが・・・」


 虎男がエリアを庇う様に立ちはだかったその時、後ろから男の声がした。 


 「全く、何をしているのですか?」


 見れば異国の正装を着た20代半ば金髪碧眼の青年が立っていた。

 

 青年は虎男を制すると2人の前に出て、懐から直径7㎝程のメダルを取り出す。


 左手で突き出したメダルに魔力を流し込むとメダルに埋め込まれた紅い魔石が輝き、刻まれた術式が発動する。


 手の中に光りが溢れ、その光りが形を成す。


 「魔装具、紅の12番、星弓の銀装『アルキュルスス』」


 小さく唱えると銀のメダルが紅に光りメダルを中心に上下へと伸び、銀色の弓へと姿を変える。  


 その光景を虎男が感心する様に見ていた。


 「ラ・ギースの魔装具というやつか!?」


 「博識ですね。そうです、これがラ・ギース王国国王から賜った魔装具の1つ『アルキュルスス』です」


 そう誇らしげに語り、クラウスは弓を構えた。


 矢を番える様に持つと魔力で出来た弦が現れ、引くと弦に番えられた矢が現れる。


 「くっ、首輪、を・・・殺・・・しては、ダメ・・・」


 息も絶え絶えのエリアが搾り出した言葉。


 そんなエリアを横目で見て、クラウスは狙いをずらした。


 「紅輝一閃・・・」


 驚いた事に、静かに放たれたその紅の矢はシャルバの太腿を貫き転倒させた。


 更にもう1本、今度は先程とは違う矢尻の矢を放ち、起き上がろうとしたシャルバの顔面に当たるとシャルバは意識を飛ばされ倒れるのだった。


 「これで良いかな、お嬢さん?」


 エリアは虚ろな意識の中で倒れるシャルバを見て、自身もまたその場に倒れてしまうのだった。


最後まで読んでくれてありがとうございます。

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『豆太郎と僕』も3話を投稿しました。よろしけれはそちらも読んでやって下さい。


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