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第四十四話 『ストーン・ゴーレム』

祭り最終日、終に事件勃発!

ファニール王国編最大の事件です。

 祭りの最終日に街中に響いた轟音に周りの観光客がどよめきだす。


 「何があったっ!?」


 衛兵のおじさんも慌しく同僚達に声を掛けてる。


 エリアはキラファ達の元に戻ると、状況を確認した。


 「子供達は全員居る?」     


 「ええ、大丈夫だけど。今のは?」


 「大きい子は小さい子の手を繋いで集まって!」


 子供達を確認して、キラファに向き直った。


 「分らない。でも用心に越した事はないからね」


 ドン!


 再び起きた振動に、焦る。


 すると通り向こうの路地から砂煙が舞い上がっていた。


 「あれ!?」 


 エイナが指差す方向を見ると、奥の通りから逃げてくる住民達が衛兵の居る東門へと雪崩れ込んできた。


 するとまた、ドカン!と一際大きな音とがして赤い屋根が吹き飛んだ。 

 

 「なに!?」


 立ち上がる砂煙の中、別の屋根を鷲掴みにして破壊する巨大な石の腕が見える。


 「何だあれ?」


 屋根を見上げるトゥクの瞳に映る巨大な姿。石作りの体に意思の無い瞳が虚ろに光る。


 「ストーン・ゴーレム!?」


 魔法使いが使役する、名前の通り石で出来た操り人形だ。しかもこれ程大きな物がどこから?と考えながら体は動いていた。


 「キラファ!子供達を連れて逃げて」


 「エリアは?」


 聞かれたエリアはキッとゴーレムを見て「私はどうにかしてアレを止めてみる」と駆け出した。


 武器は護身用のナイフが1本。石で出来たゴーレムには余りにも心許無い。


 「ストーン・バレット!」


 振り抜いた腕の周りに生成された石がゴーレムに向かって飛んで行く。が、石の弾丸はその硬い皮膚?に阻まれ砕けた。


 だがこれで良い。攻撃された事でゴーレムの攻撃対象がエリアに移ったのだ。


 「よし!こっちだ」


 エリアは人の多い中央に向かっていたゴーレムの攻撃対象を自分に変えて人の居ない方に誘い込む。


 バックステップを繰り返し、ギリギリでゴーレムの攻撃を躱しながら魔法を撃つエリア。


 ゴーレムはエリアを追い掛けるがその鈍重な動きでは全く捕らえる事が出来ないでいた。だが、その攻撃力は凄まじく、まともに喰らえばひとたまりも無いだろう。


 ストーンゴーレムを誘い出そうとしているエリアの元に東門の衛兵達がやって来た。


 「エリア、後は任せろ!」


 顔見知りの衛兵が抜剣して走り出すが、ゴーレムは石畳を抉る様に蹴り飛ばした。


 ぐわっ!?


 ストーン・バレットの様に蹴り飛ばされた石畳の破片が衛兵達に襲い掛かる。


 打ち所の悪かった1人は頭から血を流して倒れ込んだ。


 「この!?」


 仲間の仇と渾身の力で振るった剣がゴーレムの足に当たるが、軽く弾かれ痺れた手から剣が落ちてしまった。


 動きも止まった衛兵の体を石の拳が襲い、吹き飛ばされた衛兵は壁にぶち当たって動かなくなった。


 「このままじゃ!?」


 エリアは駆け出すと落ちていた剣を拾い、その剣に魔法を掛けた。


 シャープネス、魔力で刃の周りを包んで斬れ味を上げ、倒れてる衛兵を叩き潰そうとしているその手を斬った。が、魔法の刃はゴーレムを全く傷付けるとこが出来ず、撥ね返された。


 「早く下がって!」


 他の衛兵に引っ張っられ離れて行く衛兵を確認しつつゴーレムの後ろに回る。


 (魔法が効いてない?)


 エリアはもう一度、ストーン・バレットを放つ。そして今度は見逃さなかった。魔法で作られた石はゴーレに当たる前に霧散しているのだ。


 (これって、魔法を無効化してる?)

 

 ずるい!とか、卑怯!とか叫びながらも後ろに回ったエリアは突然ゴーレムに向き直り、足元に走り込むと全力で膝関節に斬りかかったが弾かれ折れてしまった。


 こっちの魔法が効かない魔法生物・・・苦い記憶が沸き上がる。ハイネルセン村のグラージドラゴン事件・・・。


 一旦離れて、ゴーレムを苦々しく見上げる。


 「どうしよう・・・?」


 どう攻略しようか考えていたエリアの上を大きな影が飛び越えて行った。


 「あれは?」


 「はぁーーーーーーっ!」


 巨大な鉄槌を振り下ろして、ゴーレムの頭を叩き割る男。それはサイクロプスの鍛冶師だった。


 「お父さん!」


 後ろからした声に振り向くと其処には、あのサイクロプスの少女が居た。


 「ダリア!?じゃあ、あれはダリアのお父さん!?」


 頭を叩き割られ、動きを止めるゴーレムを前に振り返るサイクロプスの男。


 流石のゴーレムも限界を超えた物理攻撃にはどうしようもなかったのか。と思った瞬間倒したと思っていたサイクロプスに殴りかかってきた。


 「危ない!?」


 エリアの叫びに反応して、咄嗟にゴーレムの攻撃を受け止めたサイクロプス。


 「まだ動くのか?」


 頭部は確かに無くなって居るが、そもそもゴーレムに頭とかは関係ない。


 問題はその体のどこかに有る核なのだ。その核さえ壊してしまえばゴーレムは動きを止める。そして、その核が今剥き出しになっている。しかし、砕けた破片がカラカラと動いて徐々に元に戻ろうとしていた。


 「あの赤い核を壊さないとゴーレムは止まらない!」


 チラリとエリアを確認すると、なるほど、と頷いた。


 サイクロプスはもう一度鉄槌を振り被り核を目掛け叩き付けるが、今度はゴーレムに鉄槌を受け止められてしまった。


 「ばかな!?」


 サイクロプスとゴーレムの力比べ。4mを超える巨体の渾身の押し合いに危なくて誰も手が出せない。しかも、僅かにゴーレムの方が力が強いのか、徐々に押されるサイクロプス。そしてこのままではゴーレムの頭は自動修復されてしまう。


 魔法は効かない、弓も無い。何か打開策はないかと周りを探る。


 すると突然ゴーレムの体が傾いた。見ればゴーレムの足元が崩れ、足が膝まで地面に埋まってしまったのだ。


 突然の異変に一旦離れたサイクロプス。


 「これは?」


 周りを確認すると這い上がろうとするゴーレムの後ろ、地面が盛り上がると其処からヘルメットを被った丸い頭が現れた。


 「どうやら上手く行っただに?」


 現れたのはモグラの獣人だった。


 状況を理解したサイクロプスの顔が明るくなる。


 「かたじけない!」


 もがくゴーレム目掛け走り込み鉄槌を薙ぎ払いゴーレムの腕を破壊すると飛び上がり、渾身の力を込めて殆ど見えなくなった核のある胸部を叩き潰した。


 ズウウーーーン!


 地響きが収まるとゴーレムの動きも止まり、砕けた核から光りが消え瓦解し始めた。

 

 「わーーーっ!」


 この戦闘を見ていた人達から歓声が沸き上がる。


 ゴーレムを倒したサイクロプス、地面を掘って足止めしたモグラの獣人、最初に立ち向かい非難誘導をした衛兵達、彼らを囲み賞賛する市民達、そんな光景を見てこの街の素晴らしさを再確認した。


 そんな風に浸っているエリアを後ろからキラファや子供達が抱きしめた。


 「大丈夫?エリア」


 「エリアおねえちゃん?」


 自分を心配してくれる子供達。


 自分は何もしてないのだけどね。と思いつつ心配してくれる子供達に大丈夫と微笑んだ。


 「大丈夫か?」


 そんなエリアに後ろから声が掛けられた。


 膝を折り顔を下げるがそれでもまだ高い位置からの声。


 「ありがとう御座います。助かりました」


 ダリアの父、サイクロプスのダートンさんだ。


 「そうか」


 単眼の大きな顔が優しく綻ぶ。


 「しかし、あのゴーレムは何処から」


 と、話してると市民の一人が大きな荷馬車から現れた所を見ていたと衛兵に話していた。


 戦っている間、術者の姿も気配も無かった。つまり操られてたのでは無く自動的に暴れ出した事になる。


 何故?理由は分らない、しかし目的は想像が付く。


 「女王様が危ない・・・」


 その言葉に周囲の人々の顔が強張る。


 急いでこの事を知らせて、女王の安全を確認しないと。


 しかし、キラファ達の安全も確保しないといけない。どうしようかと考えていると上空から1人のハーピィが舞い降りた。   


 「衛兵のおっちゃん!大変だよ!」


 「なんだ、何が有った?」


 ハーピィの周りに集まる人々。


 「街のあちこちで魔獣が暴れてるんだ!」


 「な、なんだって!?それは本当か?」


 「こんな嘘吐く訳ないだろう!西の見世物小屋から魔獣が逃げ出して街中が大変な事になっているんだ。それだけじゃなくて、ゴーレムとかも暴れてるらしいんだよ!」


 其処に居たみんなが驚いた。ここで暴れた奴以外にもゴーレムが暴れているらしいのだ。


 「それならここでも暴れてた。彼らが倒してくれたがな」


 「え!?もう倒したの?」


 くるくると戦闘の痕跡を見て驚いたハーピィは、兎に角警戒を減にして市民を守る様に伝えて飛び去った。

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