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第三話 『異世界』

 ホムンクルス三人娘の食事を見ながら、涼はこの世界の事を根掘り葉掘り聞きまくった。因みに涼とアフィはアンデットなので食事は無しである。


 長女ララ・アーハート(全員姓はアフィの姓を名乗ってる)見た目20才くらいのピンクのふわふわロングヘアーにエメラルドの瞳。白い肌。スタイルも抜群のメイド服の女性だ。家事全般を熟すらしい。


 次女リリ。見た目12~3才、青い髪のポニーテールと銀色の瞳で小柄な女の子だが冒険者登録していて結構強いらしい。寡黙娘、質問には答えてくれるが余りしゃべらない。後声が小さい。


 (もしかして嫌われてる?) 


 最後が三女のルル。リリと一緒に作られた双子の妹。緑のショートヘア、紫の瞳。同じ顔なのに、雰囲気がそうさせるのか見た目美少年だ。でも胸はリリより大きく中くらい。ボクっ子元気娘である。


 「ルルちゃんも冒険者なの?」


 「そう!ボクは魔法使いで、リリは剣士なんだ」


 ぐいぐいと身を乗り出して答えるルル。


 「そう、二人とも凄いね」と、言うと「へへ~」と、照れていた。黙って聞いていたリリも照れてる?


 4人から聞いた話からこの世界はまるっきり王道ファンタジーの世界だった。


 人間も魔物も魔法も存在する中世ヨーロッパと言った感じだ。ただ神や悪魔と言った類の神話は有るが見た者は居ないらしい。 

 神聖魔法や悪魔魔法が有るので居るのだろうという話。


 そして、アフィ達が住んでいるこの森は、奥に行くと強い魔物が多いらしくお蔭で余り人が来ないのだそうだ。近くに有る街は人間も亜人も住む街だが流石にアンデットは別らしく、リッチのアフィも時間を掛けて信頼を築いたのだ。

 そして、善悪の無いモンスターは害をなせば討伐されるし、悪しき存在が人々に仇名せば問答無用で討伐される世界なのだ。


 「神聖魔法を使うプリーストも居るし、幽霊にダメージを与えられる魔法の武器も有るからね~」


 だから人魂状態の涼が街に行くのは危ないとルルが付け足す。


 アフィが言うにはゴーストやスペクターと言ったアンデットは善悪の無いモンスターの部類らしい。


 「理性も人格もちゃんとしているリッチですらなかなか理解されないんだから・・・」


 アフィは何かを思い出したのか、不服そうな顔をしていた。


 「なので~この家の側なら兎も角、町に行くなら夜まで待った方が良いと思いますよ~」


 「なるほど・・・」


 「でもでも、ご主人の魔法が効かないなら大丈夫なんじゃないですか?」


 「本気じゃなかったし、攻撃系の魔法や神聖の武器も有るから用心に越した事は無いよ」


 (ターン・アンデットは本気だったろ?)


 半分は見得だろうが他の手段が有るなら確かに用心した方が良さそうだ。


 取り合えず時間が出来てしまったので、涼は基本知識や周りの国、世界の情勢等役に立ちそうな話を聞きまくった。更に今の自分に何が出来るのかも試してみる。


 アフィが言っていたポルターガイストで物を動かしたり、ドアをすり抜けたり、そして遠くに行かないと約束して外にも出てみたりもした。

 アフィの家は広大な森の端、小さな山を背にしていた。直ぐ側には森から流れてくる川が有り豊富な水が流れている。川の中には見慣れない魚が泳ぎ、木々の上では見た事の無い鳥がさえずっている。


 涼は全体を見ようと森の木々よりも高く、更に裏山より高く上って世界を見渡した。空に浮く島が幻想的だ。


 「金と銀の月が2つ、これが異世界か・・・」


 家の回りに森が有り裏山の奥に更に続いている。森と草原を分ける様に川が流れ、橋を渡って街道に抜けるとその先に城壁に囲まれた街が見えた。


 「あれがベルタの街か、意外と近いな」


 最初は街中に住もうとしたのだがトラブルが起きたので街と話し合ってここに住んでいるとの事だった。ただもう100年は住んでいるし、色々有って街に住んで欲しいと言う街の人達の声も有るのだが、アフィの魔力に低レベルのモンスターは怯えて森から街側には出て来ないのでそのままにしているのだそうだ。

 

 誰に気兼ねもしなくて良いここの暮らしを気に入っていると言うのも有るのだとか。


 「ここが種族混在国家ファニール王国、森の向こうに亜人種の国クオリオン王国か、北に龍族の聖域が有って西に人間の国デリフォス法国、南に海洋交易国エリトリアと・・・」


 まぁ、流石に見えはしないがその方向には海が有るとの事で、何れ行ってみようと思った。 


 涼はもう一度回りをぐるりと見回し、更に高い空を見上げた。確かに自分の居た世界とは違う雰囲気と空気の様な物を感じる。

 「しかし、これはアレだなアイツが良く読んでたラノベの異世界転移ってやつ・・・」


 (まぁ、転移って言っても死んでるらしいけど)


 「・・・突然死んじまって、皆悲しんでるかな」


 向こうの世界で死んだのは確実だ。だから戻れるとは思っていない。しかし、未練が無い訳じゃないし、家族や友達の事を考えると寂しくもなる。


 ぼんやりと見上げる2つの月が目に染みる。


 感慨に耽っているとふと巨大な何かに覆われる感覚に襲われた。


 「え!?」


 咄嗟に身を躱してその気配を目で追った。ここはかなり高い空の上。近くにそんなに大きな雲も無かったのにそこには巨大なドラゴンが飛んでいた。


 チラリ。


 瞬間目が合った・・・意外にも綺麗だったその黄金の瞳には驚きの色が見えた気がした。


 「危なかった・・・しかし、何だったんだアイツ」 


 アフィに聞けば分るかな?と涼は家に戻る事にした。


 急降下。比較対象が無いからはっきりとしないが飛行速度はなかなかの物だ。


 屋根をすり抜け、部屋に入った瞬間に止まろうとしたが勢い余って床にまで突き抜ける所で何かにぶつかった。


 いや、霊体なのでぶつかったというのとは少し違うが、何かの中にすっぽり入った感じがしたのだ。


 なんだここはと今までと違う違和感に慌てて抜け出したら其処には部屋に寝かされていたホムンクルスを抱えたララが立っていた。


 「ララさん・・・?」


 「はい、ララですよ~急に現れたので幽霊かとびっくりしました~」


 冗談なのか本気なのかそんな事を言うララ。少し呆れながら涼は気を取り直す。


 「俺、今ララさんの中に入りました?」


 「まぁ、私の中に入るだなんていやらしいです~」


 顔を赤くして、体をくねくねさせる。


 「そういう意味じゃなくって!」


 「冗談です~」


 霊体なのに疲れる・・・。


 「でどうなんです?」


 「・・・リリちゃんやルルちゃんは“ちゃん”付けなのに私は“さん”付けなんですか~?」


 少し拗ねた様な表情で涼を見る。


 「へ?・・・いや、ララさん大人っぽいし・・・失礼かなと」


 突然の質問に意表を付かれる。この人にはどうもペースを乱される。 


 「私そんなにおばさんに見えますか~」


 悲しそうな声を出してしなを作った。


 「いや、全然若いですけど」


 「そうですよ~私まだ生まれて100年程なのに~」


 「普通の人間からしたら十分長生きですよ!ってホムンクルスってそんなに長生きでしたっけ?」


 その疑問には部屋に入って来たアフィが答えてくれた。2人の騒ぎを聞いて来たらしい。


 「その子達は私の作った特別製だからね、すっごく長生きな筈よ。まだ検証の最中な訳だけど」


 「ララさんが最初の特別なホムンクルスって事か」


 「そういう事」


 なるほど、と納得したがふと自分の疑問を思い出した。


 「って、いやそうじゃなくて、今俺何かに入った様な気がしたんだけど・・・」


 「それはこの娘じゃないですか~」と、シーツに包んで抱きかかえてたホムンクルスを見る。


 「この娘って、このホムンクルス?」


 最初に入った部屋に寝かされてたホムンクルスだ。


 「その娘はレレよ。レレ・アーハート」


 「レレって・・・」


 ララ達の名前を聞いてまさかとは思っていたが、アフィのネーミングセンスに驚いた。


 「何か文句ある」


 「レレは無い!ララ、リリ、ルルはまだ良い、並べなければ違和感ないかわいい名前だ!しかし、レレは無い!どうせレレの次ぎはロロって付けるつもりなんだろ?」


 「うっ・・・!?」


 図星を突かれて狼狽える。


 「年下からかわいいなんて言われると、余計に照れますね~」


 アフィを余所にマイペースなララは嬉しそうだ。


 「なによ、レレはダメだって言うの?」


 「ダメだろ?レレーナとかレレイとかなら兎も角」


 「!?」


 アフィが雷に撃たれた様な衝撃を受けて、わなわなと崩れ落ちる。『レレーナ』や『レレイ』の方が良いと自覚したのだろう、そこまで衝撃を受ける程のネーミングセンスでも無いのだが・・・。そんなアフィを置いて涼は先程の疑問を解決する事にした。


 「ララさん、取り合えずその子をそこの椅子に座らせて下さい」


 「こうですか~」


 ララがシーツが取れない様にレレを近くの椅子に座らせた。


 「はい、では行きます」


 葛城涼は気合と共にレレの体へと飛び込んでいった。


 涼の意識が染み渡る様にレレの体中に広がる。


 「これは・・・」


 ぴくりと指先が動く。


 「あ、今動きましたよ、涼さん」


 ゆっくりと恐る恐る開いた瞳に生命力が宿っている。


 「涼、それって!?」


 少しふらつきながらもララに支えて貰って立って見せた。


 「憑依かな多分。ほら、アフィが俺にアナライズ掛けた時に憑依みたいな事が出来るって言っていたじゃないか」   


 「そうだけど・・・」


 涼は体を動かしたり、ペタペタ触って体の感触を確かめた。流石に定番の行動はホネとホムンクルスとはいえ目の前に女性が居るので自重する。が、色々動いたので巻いていたシーツが解けた。


 「おっと!?」


 「もう!」と、言うと部屋のテーブルの上に準備しておいた服を持って来て「兎に角これに着替えなさい」と、服を渡された。


 (幽霊だったからか気にならなかったな。先ずは下着から・・・これ、どうやって着るんだ?)


 「あの~ララさん・・・」


 ララに教えて貰いながら着衣完了!良く似合っていると鏡の前で涼は新たな自分の姿に見惚れてた。


 16歳くらいだろうか?すらっとした手足に整った顔、薄い水色の長髪に紅い瞳。アニメのヒロインの様だな自分自身じゃなかったら惚れそうだと涼は思った。服の仕立ても良い。サイズもピッタリだ。だが・・・。


 「流石にミニスカートは心許無い、ズボンは無いのか?」


 スカートの裾を持って出来るだけ下げ様と引っ張っている。


 「なんで?似合ってるじゃない」


 「かわいいです~」


 素直な反応ありがとう。確かに可愛いけど中身が男だけに・・・。


 「いや、俺男だし流石にミニはちょっと・・・」


 「仕方無いわね、ちょっと待ってなさい」


 別の部屋に行ったアフィは裾が広く短いズボンを持って来た。


 「これで良いでしょ?」 

 

 裾が広いのは気になるが涼は他に無いなら仕方無いと、そのズボンに着替えた。


 クルッと回ってみる。ミニスカートよりはマシでは有るがやはり少し心許無い。と項垂れたが自分の頬をぱんぱんと叩いて痛覚がある事を感じながら、無理やり気持ちを切り替えた。


 「じゃあ、行くか!」


 涼は意気揚々と家を出ようとしたが、「幽霊の姿なら兎も角、その格好で行くなら返って夜の方が危険だから明日にしなさい」と、出鼻を挫かれるのだった。


 因みに名前はとある小説のキャラから『エリア』と改名した。エリア・アーハートである。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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