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第二十七話 『王都へ』

エリアはうろ覚えの知識を駆使して、お祭りを楽しむためがんばります!

 思ってた以上に早くホウさんに頼まれたパスタの生産が終ったエリアは、今王都に向かう馬車の中に居た。


 今回アフィはルルを伴って先に向かい、エリアはヴェルナ達と王都を目指している。


ヴェルナ達、女性4人組みパーティ四艶シエンとはこれまでも何度かパーティを組んでいる。以前はパーティ名に(仮)が付いていたが、この任務の前で全員Eランクに昇格して(仮)が取れパーティ名、四艶シエンを正式に名乗っている。


 「エリア~、そろそろ変わろうか?」


 後ろで休息していたヴェルナがやって来た。


 「ありがとう」


 エリアは手綱をヴェルナに渡して後ろへと下がる。


 「ご苦労様~」


 荷箱の上、丸まって寝転んだままのティナが尻尾を振ってる。


 「お疲れ様です、どうぞ!」


 小さめの木箱に外套やシーツを敷いた椅子に座りホロロが入れてくれた特製の栄養ジュースを受け取る。


 「ありがとう」


 エリアはゆっくりと飲み干し喉を潤した。今日は日差しも強くて魔法で冷えたジュースが上手い。


 「私、王都には行った事が無くて楽しみなんです~」


 ホロロは実に楽しそうにしている。


 ウキウキが溢れてるハーフリングのホロロは子供に見える為、尚微笑ましい。


 今回の依頼は、ベルタから王都リィンバインへの輸送任務だ。ヴェルナ達ともう1組の2パーティーで10台の馬車の護衛をしている。


 先日、王都に行く事になったエリアが序にと見付けた依頼だが、流石に1人では受けられずヴェルナに持ちかけたら快く引き受けてくれたのだ。


 「案内は出来ないけど、楽しんで行ってね」


 ホロロと和やかに話しているその時、突然馬車が止まった。


 「どう~、どう~」


 急に止まったのでティナは荷箱から転げ落ち、ホロロはエリアに抱き付く形になった。


 「どうしたの?」


 倒れそうになったホロロを抱き止めつつ御者役のヴェルナを見た。


 「分らないけど、前が止まった」


 隊列の後ろを走っていたアセリアが前に出て、様子を見て来ますと駆け抜けた。


 「ティナ、ホロロ、後ろを警戒して。エリアも出て隊列の中央に」


 素早くヴェルナが指示を出す。


 暫くするとアセリアが戻って来て、ジャイアントバイパーが出ましたとだけ知らせ、そのままヴァルナに報告に向かった。


 「ゲルヴァさんは何て?」


 「前は任せて、後列の警戒をして欲しいと!」


 「分った、私達はこのまま周囲を警戒。アセリアは後方、ティナはエリアと一緒に隊列の両側をよろしく」


 再度指示を出して、自身は馬車の上に上がり全周囲を警戒する。


 ゲルヴァはこの商隊の護衛を受けた2パーティのリーダーとなったケンタウロスの男だ。Cランクの冒険者でヴェルナよりランクが高く、経験も豊富だった為、自然とリーダーとなった。

 そして、エリアとは面識が有った。ゲルヴァはグラージ・ドラゴンの事件に関わったパーティの1つのリーダーで、あの戦いでメンバーを1人失ったが、新たに2人追加している。


 結局、この騒動の他に馬車が脱輪するというトラブルは有ったが何一つ損害を出さず無事、王都に付く事が出来た。




 「私達はここでお別れだね」


 王都のギルドで報酬を受け取った5人は、中央の広場で挨拶を交わしていた。


 「エリアはこのまま王都で仕事だっけ?」


 「ええ、と言ってもアフィの知り合いと話をするだけなんだけどね」


 「そっちは、王都に暫く居るの?」


 そう聞くと、はいはいと手を上げてホロロが観光します、と嬉しそうにしている。


 「まぁ、そういう事。2、3日居るつもり」


 はしゃいでるホロロを見てヴェルナも微笑んでいる。


 「案内出来れば良かったんだけど、アフィ次第でどうなるか分らなくて」


 「それは残念ね。ではまたベルタで会いましょう」


 アセリアが手を振った。


 「ええ、またね」と、4人に手を振ってエリアは王城へと向かった。 


 

       ☆



 城に着くと衛兵にジロジロ見られたが、エリアが来るのを待っていてくれた近衛兵が片膝を着いて礼を示したのを見て衛兵が目を白黒させてるのが、少し面白かった。


 近衛兵に連れられ、王城内のアフィの部屋へと案内されたエリアは笑顔で感謝を表し、近衛兵が離れたのを確認して部屋の扉を叩いた。


 「アフィ、ルルちゃん」


 声を掛けて部屋に入るエリアをファムが元気良くお出迎えしてくれる。


 「いらっしゃいませ、御姉兄様おねにいさま!」


 満面の笑顔で飛び着くファム。


 「ファムちゃん!?じゃなくて、フィーリア王女様」


 驚くエリアに抱き付きながら、ファムの表情は一変プーと頬を膨らませた。


 「フィーリア王女ではなく、ファムとお呼び下さい御姉兄様!」


 かわいいほっぺが膨れている。


 「いや、そう言う訳には・・・というかその御姉兄様というのは・・・?」


 質問するもファムはそっぽを向いて答えてくれない。と、そこに部屋の奥からアフィが出て来た。


 「エリア、私達の前では普通の女の子で居させてあげなさいな」


 ファムの後ろに立ち、肩に手を掛ける。


 ファムは不安そうにエリアを見上げて、御姉兄様?と訊ねて来たのでエリアは陥落した。


 「分ったよ、ファムちゃん」


 屈んで目線を合わせて、頭を撫でると嬉しそうに抱き付き直した。


 「あ~所で、御姉兄様と言うのは?」


 予想は付くが、一応聞いてみたのだが予想通り「お姉さまで有り、お兄様でも有るので」と笑顔で答えられた。


 素晴らしい考えでしょうと言いたげだが、流石に訂正してエリアの姿の時はエリアで統一して貰った。


 ファムは少し残念そうだったが、分りました「エリアお姉様」と言ったが、様も敬語もやめて貰った。自分がちゃん付けで姫様が様付けって。


 「うん、分ったよ、エリアお姉ちゃん」


 「ん!ありがとうファムちゃん」


 2人、少し恥ずかしそうに微笑んだ。


 「所で、なんでルルはアフィの格好をしてるの?」


 アフィはビクッ!と驚いたがそっぽを向いてやり過ごそうとした。沈黙したまま見詰めるエリア。その視線に耐えかねて、ばれてたのか~と、ルルは元の姿に戻っていった。


 「それって、変身魔法?」


 「そうだよ」と今度はララに変身してみせるルル。


 「アフィみたいに見え方を変えるんじゃ無くて、形を変えてるのか凄いね」


 ララの体をペタペタと触って、その形状変化を確かめるエリアの手がララの腰の上、腋に近い所に触った時「うひゃ!?」と、変な声を上げて飛び退いた。



 元の姿に戻ったルルは両脇に手を居れ、胸を隠す様な形で後ずさる。表情はわなわなとして恥ずかしそうにエリアを見ている。


 「・・・」


 「・・・えっと」


 沈黙に不安を感じたルルが話しかけると、エリアはにんまりと笑った。


 「!?」


 エリアは逃げ様としたルルに素早く掴みかかると、ルルの腋に手を伸ばして、こちょこちょと擽った。


 「ダメ!?」


 ルルは抵抗したが、スピードもパワーもエリアの方が上である。


 「私を騙そうとした罰ね」


 腋を攻めるエリアにルルは冷や汗を流しながら笑い転げた。


 「あははははは、やめて、やめて~!」


 暴れるルル。そこに、私も~と、ファム迄参加してきた。


 「ファムちゃん、やめっ!?」


 2人掛りは流石に可哀想なのでエリアが離れると、ルルはファムから逃れては~ひ~、と荒い息でエリアとファムを見た。


 「もう、2人共腋はダメ!」


 赤い顔をして涙目で怒るルルにふざけ過ぎたとエリアが謝り、ファムも同じ様に謝ったが内心こんな表情のルルもかわいいと思ったのは内緒だ。


 「ふん!」とそっぽを向くルルにファムは抱き付いて「ゴメンね、ルルお姉ちゃん」と、上目遣いで謝ると、ルルも観念して「本当にもうやめてよね」と念を押してファムを許すのだった。


 「あ!?でも、エリアは大人だからは許さないよ」


 結局エリアはルルとファム2人分のお菓子を買ってくるまで許して貰えなかったのだった。



 紅茶を飲んで、一息吐いた所でアフィの動向が気になった。

 

 「ところで、アフィはどうしたの?」


 「ご主人は、用事が有るからって一人で出て行ったきり、帰って無いよ」


 「そう・・・」


 お城の中なので何も心配はしてないが、お城に来た理由は気になる。そんな事を考えていたら丁度部屋の扉が開いてアフィが1人の女性と一緒に帰って来た。


 「グッドタイミングみたいね」


 アフィの後ろに居るのは白いローブで顔を隠した女性の様だ。


 「さぁ、入りなさい」


 アフィに誘われ部屋に入った女性は「失礼します」と恭しく頭を下げると、頭を取った。


 目の前に立つ女性の、その真っ白な顔にエリアは言葉を失った。


 「エリア、失礼よ」


 アフィが窘めるが、その女性は慣れてるからと、エリアを庇ってくれた。


 「あ、違うんです。あまりに綺麗な白で・・・」


 そこまで言った所で、これも失礼に当たるのではと口元を押さえて口篭ってしまった。


 「いえ、気にしてませんから」


 白い梟の顔をしたその人は、少し照れながらもう一度被りを被ったがアフィに取られてしまった。


 (そう言えばアフィが被りを取っている。他者がいる時は取った事がないのに)


 「モウラ・アウラルと申します。内務省で働いてます」


 頭を下げるモウラに対し、エリアも慌てて頭を下げて自己紹介をした。


 「・・・あれ?アウラルって?」


 顔だけ上げて、モウラの顔を見ると「はい、内務大臣は私の父ですと」と微笑んだ。


 ああ~、とミミズク顔の大臣を思い出す。そしてヴァリウの娘さんだから頭を取ってるのかと納得した。


 (それにしても、母親似なのかな?)


 「モウラさんはご主人の友人でもあるんだよ」


 後ろに立つルルが説明してくれる。


 「友人だなんて、私はアフィ様の大ファンですから」


 口元に手を当てて笑うその顔はとても穏やかで、優しい印象を受ける女性だ。


 「このメンツで遠慮は要らないわ、ね、エリア?」


 「え、ええ」


 とは言え、ルルの更に後ろにファムが居る事を伝えると、エリアの背中から現れたファムにモウラが驚いた。



 「でもでも、流石にファムちゃんが居るとは思わなかったよ~」


 「私もモウラが来るなんて知らなかったよ~」


 砕けた様子で2人が仲良く話してる。


 「二人は仲良いんだね」


 「ええ、私とファムちゃんは幼馴染なんです」


 「2人は歳も近くてね、良くこの2人の相手をさせられたわ」


 アフィが懐かしそうに語る。


 歳が近い?ファムは見た目8才位だが真の姿は真龍なので見た目は当てにならない。


 梟魔人の見た目年齢は良く分らないが、モウラは雰囲気から20才前くらいに感じるのだが・・・。


 後でこっそりアフィに聞いたら、女性の歳を聞くなんてデリカシーの無いと言われたが、ファムは50才、モウラは52才と教えてくれた。


 この世界の人の見た目は分らないな~と、思ったが、自分もある意味3ヶ月以下で、エリアの体も大して変わらないのかと、変な納得をした。



 みんなでおやつを頂いて一段落した後、エリアはモウラとアフィを交えて話し合いをする事になった。


 「父が急がしいので、私が変わりに話を聞く事になりました。エリア様、よろしくお願いします」


 キリリとした表情からはさっきまでの和やかムードは消えて、完全なお仕事モードである。


 「よろしくお願いします」


 エリアも畏まって頭を下げると、モウラは「そんなに緊張しなくても良いですよ」と、口元に手を当て笑った。


 「では、こちらを見て下さい」


 エリアは木で作った活版印刷の説明を始めた。


 「なるほど、面白いですね。素晴らしいです」


 手を合わせて、はしゃぎ気味のモウラ。


 「で、本題はここからです」


 今度は特許権の話もしたが、1国だけでやっても効果は薄いだろう事を伝え、結局特許権の話は余りにも難しくて直ぐにどうにかする事も出来ないので、保留となった。


 所詮一般人のプレゼンだし、国家事業レベルの話だ。法律に詳しい訳でもない元24歳サラリーマンには無茶な話だ。


 まぁ、確定で近隣国も巻き込んだ国家事案だからねw 

最後まで読んでくれてありがとうございます。

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