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第二十五話 『帰路』   

前半エピローグ回2です。

そして、次からはお祭り編です。

 「さて、私からも個人的に何かお礼がしたいのだけど、何か要望は有りますか?」


 女王と親しい者達だけの謁見は続いていた。難しい話は終わり今は和やかに話が進んでいる。


 「そんな気遣いは要らないよ」


 アフィが断ったが、それでは母として納得出来ないと聞き入れられなかった。


 「じゃあ、実際にファムを護ったエリアに聞いて」


 そう言うとアフィはエリアの背中を押した。


 「では涼殿・・・」


 「すみません、この姿の時はエリアと呼んで頂きたく・・・」


 涼は既にエリアの中に戻り女王に座っている。


 「何か理由でも?」


 「いえ、単に普段でもボロが出ない様にしているだけなのですが・・・」


 申し訳ありませんと頭を下げる。 


 「分りました、ではエリアと呼ばせて貰いますね」


 「ありがとうございます」


 恭しく頭をもう一度下げた。


 「気にしないで下さい。あと敬語も要りません。私は貴方もアフィ達と同じく家族の様に接する事にしたので」


 「あ、いや、しかし・・・」


 椅子から立ち上がりエリアの元まで歩み寄る。


 「貴方は親友の家族で、」ここでアフィが家族じゃないわよ!と突っ込んだが、女王は無視した。流石だ。


 「この国の恩人で、何より娘の友達で命の恩人なのですから」


 エリアの手を取り、優しく微笑んだ。


 それともエリアちゃんと呼んだ方が良いですか?と聞かれた時は全力で辞退して、お礼に着いて少し悩んだ。


 「私は・・・」


 エリアは悩みながらも以前から考えていた事を打ち明ける事にした。


 「私は何れ旅に出ようと思ってます」


 その言葉にアフィ達が驚いた。


 「この国と隣国では冒険者カードが身分証明書になると聞きましたが、他の国にも行く事になるので、出来れば何処でも通用しそうな身分証明書を頂ければと思います」


 「旅に出るのですか?」


 残念そうに聞く女王。


 「はい、今すぐと云う訳では無いのですが、一ヶ月後か半年後か、もっとこの世界の常識と知識を学んでからですが」


 女王は黙って考えを巡らせながら、分りました其れまでに準備しておきます、と答えた。そして、旅に出る時は前もって連絡する事も約束させられた。


 「お母様、約束する時はこうするのよ」


 2人の元にやって来てたファムが母とエリアの手を取り小指を絡ませた。


 「これは・・・」


 少し顔を赤くして動揺する女王。


 「私の世界のおまじないみたいなものです」


 女王との指きりに引き攣りながらも微笑むエリア。そして、楽しそうにファムは歌い出す。


 「・・・嘘吐いたら、針千本の~ます、指切った!」と楽しそう。


 針千本?と驚く女王に、説明しようとしたらファムが笑顔で「針千本用意しないとね」と笑ったのだった。


 (いや、だから違うから~!)



 

 驚き過ぎてくたくたになった謁見が終わり、城を出たのはもう夕方になった頃だった。


 城の城門から出たアフィ達が全員手を上げて伸びをした。ダリウスは勿論、リリルル、アフィまで緊張してた様だ。


 さて、この後どうする?とエリアが問うとダリウスが疲れた顔で別れ様としたが、リリルルに立塞がれ退路を断たれた。


 「ダリウス、ちょっと付き合いなさい」


 アフィの一言でやっと解き放たれた緊張から、また逆戻りである。


 抵抗虚しく、連行されたダリウスと5人で食堂に入る。奥の個室を取って食事が並べられるとチップを払って、人払いをした。


 アフィは王城内に部屋を持っているし、実は夕食にも誘われたのだが、これ以上城に居るとダリウスが持たないので遠慮する事にしたのだ。


 残念そうに涙ぐむファムには申し訳ないが、これに付いてはエリア自身もホッと胸を撫で下ろしている。


 この店も行き付けの店の様だが一応涼が回りを見て回って、問題無い事を確認したし、今回はダリウスもその鼻で妙な臭いは無いと確認している。


 「さて、ダリウス様食事の前に話をしましょう」


 テーブルに肘を吐き口元で手を組んでる。返ってダリウスは背筋を伸ばした。


 「再確認だけど、今日見た事、私達の事は他言無用よ」


 「はひ!」

 

 語尾が可笑しい。


 「私の事はただの錬金術師、リリルルやエリアもただの冒険者よ。良いわね?」


 鋭い眼光で釘を刺した。


 「勿論です・・・と言うか女王様達の件が無くても、元々アフィ様は有名人だと思いますが」


 「まぁ、色々面倒事に巻き込まれたけどこれで今まで通り・・・いえ、良い冒険者仲間が増えたわね」


 ダリウスの指摘は完全に無視して和やかに語る。


 「よろしく、ダリウス・グロイド様」


 「様はやめて下さい。元々私はリリさんやルルさんにはお世話になってた訳ですし!」


 「では公的な場所以外ではそうしましょう。改めてよろしくダリウス」


 ニヤリと笑って手を出し、ダリウスも逡巡したがその手を取った。


 「よろしく」と他の面々とも握手をしていく。


 丁度そこに部屋の外から声が掛かり料理が運ばれてきた。


 「よし、じゃあ食べよう!」


 待ち切れなかったルルが乾杯の音頭を取って食事が始まった。


 「ダリウスさん、先輩冒険者として色々教えて下さいね」とカップを差し出すと「エリア様にそう言われるのは、なんだかむず痒いですね」とカップを合わせながら頭を掻いた。


 エリアが、様付けは無しで行きましょう。と言うと最初は恐縮したが妥協案でさん付けとなり、その後は楽しく食事が進んだ。エリアとダリウスはお酒も入って上機嫌だ。


 「エリアさんの元居た世界とはどんな所なんですか?」


 少し慣れてきて緊張も揺るんだ頃ダリウスが涼に興味を持った、アフィ達には御伽噺の様な話に驚いたり、感心したりして楽しい時間が過ぎていく。


 店を出て、街道を歩く5人。火照った顔に夜風が気持ち良いとエリアとダリウスはご満悦だ。


 暗い路地を選んで無事宿まで辿り着くと深々と頭を下げてダリウスは自分の宿へと帰っていった。



        ☆


 翌朝、食事を終らせた一行は馬車に乗って、城門を出た。


 「さて、これで当分リィンバインともお別れか~」


 ルルが楽しかった思い出を噛み締めている。


 「そうね」


 リリも遠くの王都を見ていた。


 「しかし、朝食のアレ美味しかったね!」


 ルルは朝食べたゴマドレッシングを使った温野菜を思い出した。


 「あれは美味」


 リリも朝の味を思い出す。


 2日目に行ったレストランにもう機会が無いと、今朝3人で行ってきたのだ。


 シェフはエリア達を快く招くと、完成させていたゴマドレッシングを使った料理を出してくれた。ゴマドレッシングは少しエリアの思っていた物とは違うが、これはこれで美味しくて、新しい名物が出来たとシェフも喜んでいた。


 朝食をご馳走になったエリア達は、また来る事を約束して店を出た。


 で、ルルはシェフから頂いたゴマドレッシングを大事に抱え家路に着くのだった。


 (ルルちゃん、体温でドレッシングが痛んじゃうからカバンに入れようね)

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