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第二話 『ホムンクルス』

LUCIOLEルシオールと言います。右も左も分からない、初心者です。

最初の数話は早いペースで投稿しようと思ってます。



 蝋燭の炎に照らされた仄暗い部屋で、両手を突きゼ~ゼ~と肩で息をするリッチを涼は呆れ顔で見下ろしていた。


 「なんで・・・なんで魔法が効かないのよ!」


 むっきーと怒り、涼を睨むリッチ。


 リッチはターンアンデットを連発したが効果が無く、終にはヒールやリザレクションまで唱えたが全く効果が無かったのだ。


 「もう気が済んだか?」


 そう聞く涼にう~と恨めしそうな顔を向ける。


 「アナライズ・・・」


 リッチはボソリと魔法を唱えた。その効果は他人には見えないがこの魔法はちゃんと発動し、効果を齎したらしい。うんうんと頷いたかと思うとだんだん難しい顔になり、最後には爆発した。


 「なんなのよあんたはっ!アナライズでもほとんど何も分らないじゃない!」


 フーッ!とまるでネコの様に威嚇するリッチ。


 「アナライズって魔法で何か調べたのか?で、何が分ったんだよ?」


 「・・・ごにょごにょ・・・」


 視線を逸らし口篭る。


 「え、なに?」


 言い難そうに小声で答えるが聞き取れない。顔をじっと見詰めて聞き返すと諦めた様に話し始めた。


 「属性が神聖だった、あとは憑依が出来るっぽいくらい・・・」


 「え!?神聖ってあの神聖?幽霊なのに?魔とかじゃなくて神聖?、それに憑依って」


 「他の情報は良く分らないのよ、アナライズは自分の経験からの予測と自分でも忘れてる知識が頭に思い浮かぶ魔法だけど全然分らないのよ」


 「ステータス画面が出たりしないのか?」


 「ステータス・・・なに?」


 「あ、いやなんでもない」


 ゲーム見たいにはいかないのか。


 「そもそも、始めて見る物に対しては自分の中の知識からの予測でしかないから・・・」


 そう言うと考え込むリッチ。その姿を見ていた涼は何と無く唱えてみた。


 「アナライズ・・・」


 「へ!?」


 完全に虚を突かれたリッチが変な声を出す。 


 更に驚いた事に見様見真似の魔法が発動したのだ。


 “リッチ、死霊魔法、錬金術、神聖魔法、暗黒魔法・・・”


 今の涼でも知っている、もしくは予想出来る基本的な情報が頭の中に流れ込む。


 「なるほど、あくまで基本的な概要だけで細かい情報とかは分らないのか」


 「って何人の事勝手に調べてるのよ!」


 焦った様子で急に怒り出すリッチ。


 「勝手にってお前もやったじゃないか」


 「私は良いのよあなたの召喚主なんだから!女の子の情報を盗み見るなんて信じられない!」


 「あ、やっぱり女の子なんだ」


 仕草や言葉遣いから何と無く分ってはいたが、見た目が見た目である。


 「やっぱりって何よ!何処からどう見ても女の子でしょ?」


 「いや、だってガイコツだし」


 「嫁入り前の女の子の情報を勝手に見るなんて!」 

 

 「お前、200年研究してたとか言ってなかったか?」


 「死んだのは15の時よ!」


 「最低でも215歳・・・」


 「じゅ・う・ご!後、さっきから召喚主に対してお前、お前言ってるけど私にはアフィ・アルパイア・アーハートと言う名前が有るのよ。って言うかちゃんとご主人様って呼びなさい!」


 がるる~と今にも飛び掛りそうな勢いだ。


 「じゃあ、アフィで」


 「なっ!?・・・ご主人様!」


 少し顔が赤い?


 「間違えて呼び出したんだろ?失敗したんだろ?」


 そう言われると強く反論出来ず、うう~~~と唸る。


 「兎に角、折角この世界に来たんだ外の世界を見たいんだよ。それからどうするかゆっくり考えるよ」


 そう言って、涼はふよふよと外に出ようとした。


 「ちょっ!?待ちなさいよ」


 扉へ向かう涼を慌てて呼び止める。


 「なんだよ?」


 「あなたそのままで外をうろついたら本当に消されるわよ」


 さっき消滅させようとしたガイコツが怖い事を言う。


 「ってかアフィも俺を消そうとしたじゃないか」


 「そうだけど・・・兎に角そのままじゃ危ないのよ!」


 真剣さの伝わる声色に、真実味がある。


 「そうは言ってもな~」


 自分の体を見ようと思わずくるくると回る。


 「お話は聞かせて貰ったわ~」


 リッチと人魂が居る状況に全くそぐわない、おっとりとした雰囲気の声が2人に掛けられた。


 その声の方を向くと、扉の前には正におっとりとした雰囲気のメイドがにこにことしながらこっちを見ていた。


 「え、メイド?」


 驚く涼の横でアフィが「リャリャ!?」と、変な声を上げた。


 「ララですよ~ご主人様~」


 呆れた様に頭を振って答えるメイドのララが其処に立っていたのだ。


 「ご主人様って・・・あ~」


 涼は合点がいった。このメイドはホムンクルスなのだろうと。


 (本当にご主人様と呼ばせているのか・・・)と思いながらアフィを見ると何故か無い目が泳ぎ、掻かない筈の冷や汗が流れている、様に見える。


 目無いんだけど。


 「どうしたんだアフィ?」


 「へ!?ど、どうもしないわよ・・・」


 (いや、めっちゃきょどっとるやん)


 もう一度ララを見ると、スタスタと部屋に入り、一直線にアフィに迫った。


 「ご主人様~」


 アフィにずいと顔を近付ける。


 「な、何かしらララ」


 そう言いながらも目線は合わせない。


 「何かしら、じゃありませ~ん」


 腰に手を当てるとプンプンという擬音が聞こえそうな程分り易く怒っていた。が全く迫力は感じない。


 「あれ程部屋を汚さない様に言いましたよね~」


 周りを見れば確かに汚い。と言うか色々な物が散乱している。


 「うん分ってるよ、ちゃんと綺麗に使ってたんだけど、さっき色々有ってね・・・」


 顔の前で手を広げささやかな抵抗を見せるアフィ。


 (あの娘がホムンクルスなら、アフィが作った物じゃないのか?)


 なのに完全に立場が負けている。が、ここが今こんな状況になっているのは俺の責任も少し有るな。と思い涼が助け舟を出した。


 「すまない、物が散乱してるのは俺の責任でも有るんだ」


 「あんた・・・」


 庇って貰えた事に少し感動しているアフィ、そんなアフィを残してララが涼の顔?を覗き込んできた。


 「んん~?」 

 

 疑いの眼差しが居心地悪い。


 「あなた、幽霊ですよね?幽霊が物を動かせるんですか~?」


 「・・・あ、本当だ!」


 ガックリと項垂れるアフィ。


 「ポルターガイスト!ポルターガイストで動かしたのよ!」


 必死の抵抗のアフィに向き直り、人差し指をピッと顔の前に立てた。


 「アフィちゃん!嘘は付いてませんよね?」


 おっとりした物腰なのに今度は何故か迫力がある。


 (アフィちゃんって、お前の作ったホムンクルスじゃないのか?)


 (さ、最初にそう言う設定を付けたのよ、優しい姉設定を)


 「アフィちゃん!」


 びくりと肩を竦めるアフィ、そんな時部屋の外からまた場違いな声が聞こえる。


 「ただいま~」


 それに答えるもう一人の気配。


 「ん」


 「ご主人とララ姉は?」


 「あっち」


 ぱたぱたという足音と共にひょこっと1人の少女が顔を出した。


 「ご主人、ララ姉ただいま~!」


 両手をひらひらと振って元気な女の子が入ってくる。


 「ルルお帰り~!」


 同じ様に手を振って答えるアフィ。そんなアフィの頭をぽかりとララが叩いた。


 「はう!?」


 (こいつ、TPOを考えないな~)


 更にもう一人が顔を出し「主、ララごはん」と、言った事でこのお説教タイムは終わりを告げた。


 ごはんを要求した子がリリ、最初の元気っ子がルルというらしい。


 「主、その人魂は?」


 眼光鋭く睨む少女リリ。


 「う~ん、なんと言うか・・・失敗の産物?」


 「俺は産廃か!」

 

 突っ込む涼を覗き込むルル。


 「なになに?これ人魂?幽霊?」


 「それがよく分んないのよ」


 「へ~」と興味津々だ。


 「で、そのまま外に出るって言うから止めてた所なの」


 「それは確かに危ないね。消されちゃうよ」


 そう言いながらも手を涼の上の方でひらひらさせて、熱くないか確かめてる。


 「なにか大事な御用でも~?」


 「いや、初めて来た世界だから外を見てみたいなと」


 「はじめて来た世界!?」


 ルルの目が輝く。


 「うん、どうも別の世界の人の魂を呼んじゃったみたい」 

 

 全員の視線が涼に集まる。好奇心、疑心と云った視線の集中砲火。


 「なるほど~、ならこの世界の常識に付いて少し説明が必要ですね~」


 確かに何も知らずに外に出たら退治されかねない。なら情報収集は大事だな、と涼はララの意見に素直に従うのだった。


最後まで読んでくれてありがとうございます。

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