第一話 『転生したのに死んでました。』
LUCIOLEと言います。右も左も分からない、初投稿です。よろしくお願いします。
第一章、約50話です。(ほぼ書き終わってますが、修正が入るかも・・・いや入るでしょう)
『~アストラル・ライフ~』
なんという事の無い人生だった。
普通に学校に行き大学を出て就職して・・・。そして、ながら運転の車に跳ねられた。
深夜の出来事。
親友の聖地巡礼とやらに付き合って行った神社の帰りだった。
深夜の交差点、目撃者は見当たらない。(スマホを見ながらの運転はダメだろ!)
ゆっくりと流れる逆さまの景色を見ながら葛城涼は死んだのだった。
ドン! グシャ!
「あそこの監視カメラ仕事しろよ~~~~~~!」
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薄暗い部屋の中、ローブを纏った小柄な人影はブツブツと呪文を唱えていた。
「現世の魂よ、ここに来たりてこの者に宿りたまえ、アルル・ルールヲゥ・カーキィオ・エルン・コゥデス」
チリチリと蝋燭の炎が揺らめく。
「アルル・ルールヲゥ・カーキィオ・エルン・コゥデス・・・」
繰り返される呪文に苦悶が滲む。この儀式は始まってから既に1時間を超えていた。
(上手く行って・・・)
薄暗い部屋の中央、小柄な人物の足元には魔方陣が浮かび上がり、その中央には布が敷かれ其の上には全裸の少女が寝かされている。
魔方陣の周囲に立てられた元は大きかったであろう太い6本の蝋燭が大きく揺らめき天井近くの空間が揺れる。
「アルル・ルールヲゥ・カーキィオ・エルン・コゥデスッ!」
因り強く呪文を唱えた時、周囲の空気が変わった。天井近くの揺らめいた空間から何かが飛び出した。そのなにかは部屋の中をゴム鞠の様に跳ね返る。
「ちょっと、なに?」
最初は器用に躱していたが最後は小柄な人物の頭にぶつかり、その小柄な人物は盛大に尻餅を突いた。
「いった~い!?」
小柄な人物は頭を擦りながら顔を上げると目の前にそれは有った。
☆
葛城涼は天に召された。その筈だった。現世と別れを告げ、空の上、隠世を目指し登っていく魂。
死んだのは夜なのに神々しく輝く空、そこで微笑む美しい天女達。そして目には見えないがはっきりと自覚出来る境界線を跨いだその瞬間、突然体(もう存在してないけど)を何かに引っ張られた。
(なんだ?)
戸惑う天女達。おろおろとしている姿が可愛い。
そんな中、中央の天女が何かを納得した様に頷くと祈る様に手を組むと神々しく輝いた。
(美しい・・・)
その光景に見惚れていたが、溢れる光に包まれた天女達が手を振っている!?
葛城涼は手を振る天女達に助けを求めたが虚しくも願いは届かずクルクルと吸い込まれ、その渦の中に入ったと思った瞬間、輝いていた空は消え、目の前には全く別の満天の星空が広がっていた。
ただの空なのに何故別の空だと分ったかと言うとあの美しい天女達は消え、目の前に巨大な鯨が飛んでいたからに他ならない。
(ーーーーーーっ!?)
声にならない叫び!
そのまま急降下していく中、遠くには見た事の無い高い山、広大な森、そして宙に浮かぶ島まであった。
(な、なんじゃこりゃーーーーーーーーーー!?)と、叫びながらも落ちて行った先に古びた家が有りぶつかると思って身構えた(体無いけど)
屋根にぶつかった衝撃は無い。しかし、その屋根をすり抜けた先の部屋で何かをすり抜けた感覚に襲われた瞬間何かにぶつかった。
(いったーーーくない?)
何かにぶつかったが痛みは無い。何せ既に死んでいるのだ。
じゃあ何にぶつかったのか?と頭を振り周りを見る。窓の無い薄暗い部屋に蝋燭が6本。その中央には横たわる全裸の少女。
(・・・・・・全裸!?)
さっきぶつかったのはこの娘なのだろうか?と動かない少女に恐る恐る顔を近付け、生きているかどうか確認しようとしたが、霊体なので確認ができない。
で、どうしようかと右往左往していると後ろで何かが動いた。
ゆらゆらと揺れる蝋燭が作り出す影。
カタ、カタと言う音を立てながら「いった~い!?」と顔を上がる誰かに振り向いて声を掛け様とした時お互いに目が合った。いや正確には2人とも目が無かったのだが。
「えっ!?」
「きゃっ!?」
「うわっーーー!?」
「キャーーーーーーッ!」
お互いがお互いの姿に驚き、パニックになる。
「うわー!うわー!うわー!」
「キャー!キャー!キャーーーーーーッ!」
バタバタと暴れ回り、埃が部屋中に舞い上がり。
「うわー!うわー!」
「キャー!キャーーーーーーッ!」
蝋燭の炎に照らされる埃が幻想的に舞い降りる。その幾つかはチリチリと炎に焼かれた。
「うわ・・・うわ・・・うっ、ごほっ、ごほっ・・・」
「キャ~・・・キャ~・・・キャア・・・・・・」
散々驚き疲れた2人はぜーぜーと肩で息をして、遂に動きが止まった。いや、二人とも息なんて最初からしてないんだけどね。
そして、再びお互いを恐る恐る見る。だが何ら変わる事も無く恐怖の姿が其処に有った。
「お前・・・」
「あんた・・・」
「「何者?」」
見事にシンクロする2人だった。
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窓一つ無い部屋の中、疲れもあって少し落ち着いた2人はお互いを観察して、恐る恐る言葉を掛けた。
「お前・・・モンスターか?」
「なっ!?」
涼の言葉に激しく反応する小柄な人物。
「あなたこそゴーストか何かでしょうが!」
そう言った人物の被りは脱げ、露になった顔は正にガイコツだった。“ビシッ”と差すその指も正に骨である。
「誰がゴーストだ!お前こそスケルトンじゃないか!」
“ビシッ”と指を指し返したつもりだが其処に指はおろか腕も無かった。
「誰がスケルトンよ!あんな低俗な魔物と一緒にしないで、私は200年研究を続けてる偉大なアルケミストにしてネクロマンサーのリッチなんだから!」
骨しかない胸をどうだと言わんばかりに張るリッチ。
しかし、涼は自分の体の異変にやっと気が付いてそれどころでは無かった。
「あれ、手が無い?てか足も体も見えない、なんだこれ?」
「なによ、あんた自分の姿も認識してないの?」
「認識ってどうなってんだよ、俺の体?」
はぁ、と溜息を零したリッチはローブの中から可愛い装飾の付いた丸い手鏡を取り出して鏡面を涼に向けた。
鏡を覗き込む涼は唖然として言葉を失った。其処にはまるで漫画の様な人魂が映っていたのだ。その人魂の中に糸の様な物が2本と丸い物が2つ・・・。
「ってこれ眉と目か!?」
そして、確かめる様に百面相をしたりポーズを取って愕然とした。
「幽霊になっとるやん・・・」・・・何故か方言。
「分った?どう見ても幽霊でしょうが」
何も言い返せず、愕然とする人魂。
(確かに死んだんだから、幽霊になる可能性だってあるかもだけど・・・)
「納得した?」
「ああ、一応は」
「じゃあ、さようなら」
突然のお別れの言葉に驚く涼。
「えっ!?さようならってなんだよ?」
「そりゃ、私が間違えて呼び出した魂なんだから、ちゃんと成仏させてあげるわよ」
「じょ、成仏って?」
恐る恐る聞く涼に、不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「私はネクロマンサーなのよ。ターンアンデッドは得意なんだから」
「お前がターンアンデッドとか使うとなんか幽霊の虐殺みたいに聞こえるな」
「なっ!?虐殺ってなによ!?」
「いや、現にそこに死体が・・・」
照れながら目線を部屋の中央に寝かされている全裸の少女を見る。
「死体なんか使わないわよ、気持ち悪い」
「え、でも・・・」
「これはホムンクルス。私が作った最高傑作よ」
「これが?」
マジマジと見る涼の目を気にして、そそくさとホムンクルスに布を掛ける。
涼はふよふよとホムンクルスに近付いて、その顔を覗き込んだ。
「なあ?ホムンクルスって確か魔法生物で生きてるもんだろ?」
「生きてるわよ。ただ魂が入ってないだけ」
「魂が無い?」
「もう良いでしょ?行くわよ、」
「えっ!?ちょ、まっ・・・」
「問答無用!ターンアンデッドーッ!」
リッチはターンアンデッドの呪文を唱えた。魔法の光に包まれる涼。
「もう、成仏させられるのかよーーー、折角幽霊になったから色々したかったのにーーー・・・・・・・・・って、あれ?」
確実にターンアンデッドは発動した。にも関わらず涼の魂には何も起きなかったのだ。
「どうなってるんだ?」
涼以上に驚いてるのはリッチだった。
「ちょっ、なんで消滅しないのよ?」
「おい、今消滅って言ったか?」
「え!?」
「え!?、じゃねえ!ちゃんと成仏させるんじゃなかったのかよ?」
「言葉の綾よ。そんなの、どっちでも良いじゃない!それよりなんで魔法が効かないのよ?」
「そんなの知るか!お前が失敗しただけじゃないのか?」
「そんな訳ないでしょう?私はリッチで専門家でネクロマンサーよ!」
むっきーっとムキになるリッチ。見た目はガイコツだが動きが可愛い。
「絶対成仏させてやる!」
「いや、だから待ってって!」
リッチは聞く耳を持たない。
「現世に囚われし魂よ、心の鎖を断ち切り彼の地へと誘わん、ターンアンデッド!」
さっきより魔力を込め、詠唱もちゃんと行なった完璧なターンアンデッド。しかし、人魂の筈の涼はぴんぴんとしていた。
「なっ・・・!?」
そんなバカな、信じられないと震えるリッチ。自分はネクロマンサーなのだ言わば専門家である。その自分のターンアンデッドがアンデッド・モンスターに効かない訳が無いのだ。
「いや、だから・・・」
涼はどうにか取り繕うとしたが、ネクロマンサーとしてのプライドを傷付けられたリッチは涼の言葉に聞く耳も持たず、ヤケになった。
「うるさい!ターンアンデッド!ターンアンデッド!!ターンアンデッド~~~!!!」
ただ連発する送魂の呪文は、虚しく部屋に木霊するだけだった。
第一話『転生したのに死んでました。』
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