吸血鬼のんびり農家 【異世界編】
邪神討伐から異世界でのとある日。
「せっかくの異世界だし、魔法とかファンタジーを楽しむのもいいけど、のんびりと農業を楽しむのもいいよね」
みんなに向けてそう提案してみる。その提案に真っ先に食いついてきたのは仄香。いつも通りだ。
「いいねー!やろー!」
と、元気よく両手を上げて賛同してくれる。しかし、
「でも、それって異世界とか関係ないんじゃ無いかな?」
と、乗り気な姉とは反対にあまり乗り気では無い冷香。
まぁ、確かにそう言われるとそうだけどさ。
「でも!異世界にしか無いようなファンタジーな野菜とかあるかもじゃん!」
「そうだそうだー!」
私の言葉に仄香も続く。
よし、仄香を味方につければ冷香も折れるはず!
そう思ったんだけど、
「でもお姉ちゃん、野菜を育てるのって凄く大変だよ?」
「そうなの?」
まずい!?
このままだと、仄香が反対派閥に行ってしまう!?
「そ、そんなことないよ!仄香の体力なら全然しんどいことないよ!」
勇者である仄香なら土を耕したりも余裕でこなせるはず。
「でもお姉ちゃんは飽きっぽいから、数ヶ月かかる作業は無理かも」
「……」
それを言われるとおしまいだ。
確かに種を植えてから毎日やることといえば、水をやったり、雑草抜いたりするくらいで、地味な作業ばかり。
仄香なら三日目飽きてもおかしくない。
「そうなの?じゃあやめよっかなー」
「ま、待って!」
仄香を慌てて止める。
「これを見て」
私は手の中に一本の鍬を作り出す。変身能力の応用だ。
「これがあれば何でも育つよ!」
異世界に行って森で村を開拓した某主人公を浮かべながら作ってみた。
私が今作った鍬も私の自由意志でどんな形にでもなる、万能な農具。もとろん、武器にだってなるよ。
これがあれば彼みたいになんだって作れる。
「嘘はよくないなー巫子ちゃん?」
と、ここで今まで黙って話を聞いていた凪咲が話に入ってきた。
「う、嘘ってなにかな?この万能な農具なあれば何でもできるよ?」
「でもそれ巫子ちゃんが作ったものでしょ?その程度のものに神様が作ったような力とかないよね?」
「ぐぬぬ」
そうだけど!でも、「その程度」って酷くないかな!?
「なーんだ、何でもって言うからお肉とかも作れるのかと思ったのにー」
完全に興味を失ってしまった仄香。
流石にお肉は無理だよ。植物の話だったのにそこまで何でもと思ってるとは思わなかった。
「それじゃあ、冒険に行こー」
そして結局、のんびりと農業は出来なかった。
せめて、今日はこの鍬で行こう……。




