陰の吸血鬼になりたくて!
異世界から帰ってきてからのとある日。
「最近、夜中に不審者が出るんだって」
教室の休憩時間に集まっていた私たちは何気ない話をしていた。
そこで凪咲がそんな話題を出す。
「不審者、ですの?」
「うん、なんか真っ黒な服をきて徘徊してるんだって」
「それは怖いですの」
凪咲から話を聞いたカレンは少し不安そうな表情だ。
「心配しないでカレン。何かあったら私が守ってあげるから」
なんて、キメ顔を作って言ってみる。
「ミコ……頼りにしてますの!」
うん、その時はしっかり期待に応えるよ。
キラキラとした目を向けられて何だか嬉しくなってくる。
「それならあたしも不審者を倒す!」
と、話を聞いていた仄香が拳を上げて宣言してきた。
まぁ、仄香は異世界転移特典の勇者としての力が今もある程度残ってるから不可能ではないけど。
「お姉ちゃん、危ないからやめてね」
心配そうにそれを止める妹の冷香。
「あたしは勇者だよ?大丈夫だって」
「こっちじゃ魔法も使えないんだし、危ないよ」
やる気十分な姉を何とか止めようと冷香は必死に説得を続けていた。
仄香は冷香に任せておけば大丈夫だろう。
「それで、その不審者に襲われた人とかいるの?」
「居るみたいだよ。 と、言っても不審者がだけど」
「ん?」
凪咲に話を詳しく訊こうと質問してみたんだけど、よく分からない答えが返ってきた。
不審者に襲われたのが不審者?
「なんかストーカーぽい不審者が、その真っ黒な服を着た不審者に襲われて交番の前に放置されてたみたいだよ」
「……」
「どうしたの巫子ちゃん?」
「い、いや!?それよりそのストーカーって本当にストーカー!?」
「そうみたい。ストーカーの被害者が襲われかけたところ助かる形で出てきたんだって」
それ、私じゃん!
いや、ストーカーの方じゃないよ?
もちろん不審者の方。
ていうか不審者じゃないし!
そういう不審者を退治する陰の実力者だよ。
あの実力者な主人公みたいに陰に潜んで陰を刈る、吸血鬼だよ!
「巫子ちゃん?」
「な、何でもないよ!」
そこで休憩時間も終わり、話は一旦終了した。
「う〜ん、確かに不審者っぽいかな?」
そして夜中、真っ暗な服に着替えて夜の散歩をする。
散歩といっても何か事件が起きないかの巡回でもある。
凪咲が言っていたことを思い出しながら服装について考えながら歩いていると、前から人影が近づいてくる。
て、あれ仄香じゃん。
何してるのあの子。
そこで丁度よくスマホに着信があった。
『巫子ちゃん!お姉ちゃんが居ないの!もしかしたらお昼に話した不審者を捕まえに行ったのかも!』
電話は冷香からで仄香がいなくなっあことに気づいて連絡してきたみたいだ。
『私も探しに行きたいけどそれは不味いし、お姉ちゃんなら大丈夫どろうけど……』
「うん、任せといて。必ず連れて帰るから」
『ごめんね、ありがとう』
心配そうな冷香に任せろと返して電話を切る。
まったく、仄香には困った者だ。
さて、仄香も目の前にいることだし、さっさと連れて帰ろう。
そう思って声を掛けようとしたところで、仄香もこちらに気づいたようで声を掛けてくる。
「あっ、居た!」
そして、手に棒状の何かを持って構える。
「あたしが捕まえてやる」
あれ?これ私だって気づいてないよね?
仄香は私のことを完全に不審者だと思ってるみたいだ。
「ちょっと待っ、」
「やっ!」
そして話す間もなく棒を私に振ってくる。
危なっ!
いきなり叩いてくる!?普通!?
誰か確認するよね!?
「待って!私は不審者じゃないよ!」
「そんな怪しい格好は不審者しかいない!あたしは騙されないぞ!」
仄香の言葉に改めて自分の格好を見る。
そんなに不審者見たいかな?
陰の存在みたいでカッコよくない?
「やっ!」
そしてよそ見をしてしまった私の頭に強打が振るわれる。
いったぁぁぁ!?
ちょっと、殺すき!?
今の私じゃなかったら絶位気絶してたからね。
「あれ?倒せて無い?」
頭を抑えている状態の私をみて、仄香は不思議そうにしている。
「不審者のくせに強いな。これならどうだ!」
「だから待って!」
改めて振るわれた棒を今度は霧化して回避する。
「あれ?」
棒が私の体をすり抜けていくのに首を傾げながらぶんぶんと私の体に振ってくる。
それらも全て通り抜けていく。
「あれ?どつなってるの?もしかしてお化け?」
「やめて!」
人のことをお化け扱いしなきでほしい。
はぁ、名乗ったら流石に分かってくれるよね。
そう思ったんだけど、ふと凪咲の顔が思い浮かぶ。
今ここで私だって言ったら、絶対凪咲にも伝わるよね。
そしたら絶対揶揄われる。
……よし、ここは逃げよう。
気づかれてないし大丈夫だよね。
後で服を変えて改めて着て仄香をうちひ帰そう。
そう考えてそく実行。
仄香は無事にうちに送り届けた。
「へー、あったんだ」
「つん。すごい強かった」
「お姉ちゃん、反省してる?」
「してる!」
「はぁ」
次の日。当然仄香は昨晩のことを皆に話していた。
凪咲に元気よく話して、冷香に反省してると言うが、そうは全然見えない。
「強かっの?」
凪咲が尋ねる。
「うん、倒せなかった。それで逃げられた」
「ホノカが苦戦するなんて、そうとうな実力者ですの」
仄香の言葉に皆どこか驚いたような表情を浮かべる。
「それで、顔とかは分かった?」
「ううん、暗くて見えなかった」
あぁ、だから気づかなかったのかな?
私は普通に見えてたけど仄香は暗かったら見えないもんね。
「でも、声はどこかで聞いたような気がするんだよねー」
「そうなの?」
「うん。女の子の声だった」
よ、良かった。気づいてないみたい。
でも念の為に今日はあんまり話さないようにしよう。
「あと、人間じゃなかった」
「「「えっ?」」」
「多分お化け。だってあたしの攻撃すり抜けてたし」
だからやめて!
お化けじゃないから!
突っ込みたいけどここは我慢。
ここで突っ込んだらバレてしまう。
「……すり抜けた?」
「うん。棒が当たらなくて、体をすり抜けたの」
「ふ〜ん」
仄香の説明を聞いて凪咲が私の方を見る。
あ、ヤバいかも。
「ねぇ巫子ちゃん、さっきから黙ってるけど、どうかした?」
「べ、別に?」
あ、これ気づいてる。
凪咲の顔がすごくニヤニヤと悪い顔になってる。
「そっかー。それにしてもその不審者、お化けだったんだねー」
分かってる。分かっていてるよこの子。
「ロリコンのお化けとか、本当に怖いなー」
「誰がロリコンだよ!?そんな話ひとつも出てないでしょ!?」
あっ。
「ぷぷ。どうしたの?そんなに慌てて」
「慌ててないよ!」
あぁ、今日一日はこのことで揶揄われるんだろうな。




