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精霊使いの吸血鬼  作者: ののん
本編
48/79

錆喰いヴァンパイア  【異世界編】

 それは、邪神を倒して異世界ライフを送っていたとある日のことだった。


 「だ、大丈夫!?」


 私たちの泊まらせてもらっている城内で現在、流行り病が広まっていたのだ。


 「ごめんなさい。私が、かからなければ……」


 そう呟きながら苦しそうにする上田先生。

 先生の聖女の力なら恐らくはこの病気も治せるのだろうけど、先生も病気にかかってしまって、そのせいで力がうまく使えないらしい。


 他にも生徒の多くがこの病気にかかっている。

 王女のカレンもだ。


 「薬はないんですか!?」


 医師にすがる様に訊くも、あまりいい顔をしない。


 「この病気は、現在国内でも流行っていまして、薬も数が足りないのです……」


 苦虫をかみつぶしたような顔で言う医師。

 この人も、医師として現状に苦しんでいるようだ。


 「伝説の、キノコがあれば……」


 どうにもならないのかと思っていたトロで、医師がそんな言葉を呟く。


 「伝説のキノコ?」


 「えぇ。そのキノコは、この病気に効く薬を作るのに最適で、一つあれば国民全員をカバーできるだけの薬が作れるのです」


 更には、そのキノコは増殖力も高く、本当に一つでもあれば、現状を打破できるらしい。


 でも、キノコって。

 この病気、錆でも関係あるのかな。


 そんなくだらないことを考えながらも、医師に質問を重ねる。


 「そのキノコって、実在するの?」

 

 伝説って言われるぐらいだから存在自体怪しい。

 だけど、それに関しては希望の持てる答えだった。


 「恐らく、存在します。

 文献によると、遠い大陸にあるらしいのですが……」


 その場所は本当にかなりの距離があるらしく、行くだけでも数か月、往復だと下手をすれば一年かかるかもしれえないと言う。

 だけど、薬がある。

 それならどんなに離れていようと行くしかない。


 「私が行くよ!」


 そうして私は皆の病気を治すため、伝説のキノコを探す旅に出発するのだった。






 「それで、どうやってそこまで行くの?」


 私に問いかけてきたのは幼馴染の凪咲。

 彼女も私と一緒に伝説のキノコ探しの旅に出る仲間だ。

 

 「カニに乗っていきたいところだけど……」


 その発言にジト目で見t来る凪咲。


 「今、その話は置いといたら?私もちらっと思ったけど」


 「分かってるよ」


 凪咲も私と似たようなことは思っていたんだろう。

 だけど、今は皆のことを考えると、ふざけている場合じゃない。

 皆の状態はすぐにどうこうなるような状態ではないけど、急ぐに越したことはない。

 そもそも、私たちを乗せてくれる大きなカニなんて知らない。


 「ルー君に頼もうかなって」


 「ルシフェル君に?」


 魔王ルシフェル。

 彼は転移魔法が得意だ。

 だからどんなに離れた距離も一瞬で移動できる。

 そんな彼に協力してもらえば、伝説のキノコもすぐにみつかるはず。


 「でも、どうやって連絡とるの?

 冷香ちゃんも病気で魔法が使えないけど」


 ルシフェルとは仲もよく、いつも一緒に遊んでいるけど、彼が私たちの方に来てくれているので彼の居場所は分からない。

 そしてこちらから連絡を取るときはいつも冷香が担当してくれていた。

 それは彼女にすさまじい魔法の才能が有って、通信魔法を使えるのが冷香だけだったから。


 しかし、その冷香も現在病気で寝込んでいる。

 魔法が使える状態ではない。


 なので今回は別の方法で行く。


 「ギルに頼もうかなって」


 「ギルさんに?」


 ギル。

 ルシフェル動揺魔王。

 彼ならルシフェルにも連絡を取ることが出来るはず。

 ギルは唯一自分の国を持つ魔王だから、そこに行けば、大体会えるはず。






 「分かった……それなら、すぐに行こう……!」


 あれからギルのもとに行き、そして彼にルシフェルに連絡を取ってもらい、事情を説明すると、ルシフェルも協力してくれるとのことだった。


 「ありがと、ルー君。

 それからギルもありがとね」


 「気にするな。

 そのキノコ、見つかることを願っているぞ」


 お礼を言うと笑顔でそんな言葉が返ってくる。

 そのいイケメンスマイルに少し胸がキュンとしたけど、顔に出さないように隠す。


 「……」


 凪咲が呆れたような視線を向けてきた。

 どうやら隠し切れずに表情に出ていたみたいだ。


 だけどしかないと思う。

 私だって女の子。

 こんな爽やかなイケメンスマイルには誰だってときめくもの。


 そんな言い訳を心の中でしつつ、ルシフェルの手を取り、私たちは転移した。






 「あっ、あれじゃない?」


 凪咲の指の刺す先には一体の大きな蛇の魔物。

 そしてその背中にはキノコのようなものが見える。


 私たちは伝説のキノコがあると言う大陸についてまず、情報を集めた。

 その結果、そのキノコはとある魔物の背に生えると言うことが分かった。

 そしてその魔物の生息地も聞き、現在その魔物を見つけたところだ。


 「それじゃあ、すぐに倒そう!」


 背中からコウモリの様な羽を出し一気に蛇に向かって飛ぶ。

 そして蛇の顔に全力の拳をたたきつける。

 拳をたたきつけられた蛇は、その巨体を地面にたたきつける。


 「あいかわらず、馬鹿力だね」

 「ミコお姉ちゃん……凄い……!」


 私の全力の一撃を見て、凪咲からは失礼な、ルシフェルからは称賛の声が漏れる。


 「倒した、かな?」


 そんな二人はスルーして、倒れた蛇を見て見ると、既に絶命していた。


 「それじゃあ、キノコを回収してっと……はい、凪咲」


 蛇の背中からキノコを一つ取り凪咲に手渡す。

 彼女は特殊能力「鑑定」が使えるので凪咲に目的のキノコか確認してもらう。


 「うん。聞いていたのと同じキノコだよ」


 さっきの情報収集で聞いていたものと同じことを確認した私たちは、すべてのキノコを採ってその場を後にした。






 「よかったー!皆治って!」


 キノコから無事に薬も作られ、皆に投与して、皆完治。

 

 「それにしても、二人で旅かー」


 元気になった仄香がキノコ探しの旅を聞いて羨ましそうにする。


 「うん。巫子ちゃんがどうしても、二人でデートな旅に行きたいって言うから」


 「デート?」


 仄香の発言に対して答えた凪咲の言葉に訊き返すように反応する冷香。


 「そうそう。巫子ちゃんが私と二人で行きたいって」


 「そんなこと一言もいってないよね!」


 いつも通り凪咲にツッコむむ私。

 何がデートだよ。

 そんなわけないじゃん。

 そもそも、ルー君もいたし。


 でも、確かにルー君とデートに行きたいかも。


 「……巫子ちゃん、顔がニヤついてるけど」


 「はっ!」


 慌てて緩んだ口元を抑える。


 「何想像してたのぉ?」


 今度は凪咲がニヤつきながら訊いてくる。


 これは心を完全に読まれてる。


 「べ、別に!」


 私は誤魔化すように顔を背けるも、それによって凪咲の顔はますますニヤけて行くのだった。


 皆治ってハッピーなんだから、からかわないでよ!

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