歌
「なんか調子が悪いみたいだから今日は休むね」
「大丈夫ですの?」
不調を伝えると心配してくれるカレン。
うっ、
心が痛むけど今日は学校に行くわけにはいかないのだ。
本当は全然調子何て悪くない。
というか私が調子悪くなることなんて滅多にないこと。
だけど今日は絶対に学校に行くわけには。
「では、行ってきますわ。ゆっくり休んでいてくださいの」
カレンが元気のない顔で出ていこうとする。
心が痛むけどここは我慢だ。
ピンポーン
そんな時誰ががやってきた。
カレンがドアを開けると、そこにいたのは凪咲だった。
「巫子ちゃん起きてる?」
「起きていますが…‥体調が優れないようで…‥」
「やっぱり」
凪咲が私の方に近づいてくる。
まずい。
仮病なのがバレてしまう。
というかもうバレてるかも。
「巫子ちゃん、仮病なんか使ってないで起きて」
ベッドに潜った私を起こそうと布団をはがす凪咲。
やっぱりバレてた。
「仮病?」
カレンは可愛らしく首を傾げている。
「仮病じゃないよ!本当に体調が悪いんだよ!げほっ、げほっ」
「はいはい。分かったから、さっさと起きて着替える」
わざとらしく咳をしてみたけどやっぱりだめだった。
はぁ。
今日は絶対に学校に行きたくなかったのに…‥。
二時間目の終わりのチャイムが鳴る。
もうすぐ三時間目が始まってしまう。
どうにかして抜けださなくては。
「ちょっと具合が悪くなってきたから保健室で休んでくるね」
みんなにそう告げて立ち去ろうとしたんだけど、私の手を凪咲がつかんで止める。
「もう諦めてちゃんと授業うけよう」
嫌だ。
絶対に次の授業は、音楽の授業だけは。
「どうして巫子は次の授業、受けたくないんですの?」
カレンが可愛らしく首を傾げて訊いてくるが、それには答えられない。
それなのに仄香が答えてしまう。
「ミコ、オンチだからねー」
どうして言うのかな、この子は。
恥かしいから隠してたのに。
「それだけですの?」
それだけって、私的には結構気にしてることなのに。
「それでは今日は予定していた歌のテスをおこないます」
あ~。
ついに、地獄の時間が始まってしまった。
こうなったらもう一度仮病作戦で。
「先生。私気分が悪くなってきたので保健室に行ってきますね」
席を立ち、教室から出ていこうとしたのだけど、
「では、椎名さんから歌ってもらいましょう」
完全に私の言葉を無視する先生。
いやいや。それは先生としてどうなの?
「でも、体調が…‥」
「早く前に来てください」
私の言い分は全く聞いてもらえず話を進められていく。
はぁ~。
こうなったら、どうにでもなれ。
歌い終わるとみんなが私の方をなんとも言えない表情でじっと見ている。
せめて何か言ってよ!それか笑うかさ!
この雰囲気が一番傷つく。
カレンの方に視線を向けると目をそらされてしまった。
何でみんなは私に歌わせようとするの?
この何とも言えない雰囲気になることは分かってるのに。
そんな時、急に教室の電気が消える。
っえ!?何!?
怪奇現象!?
そして私の目の前に小さな影が現れる。
「巫子~」
現れた影の正体は、私が契約している邪精霊のメフィスト。
そして何故かいきなり私の顔に抱き着いてくる。
メフィスト?
なんかいつもと違うような…‥。
「巫子~。歌、ひくっ、素敵だったよ~、ひくっ」
もしかして酔ってる?
顔も赤いし、それにこの子が素直に褒めてくれるなんておかしい。
「やっぱり、ひくっ、我の巫子は、ひくっ、世界で一番、ひくっ、可愛いな~、ひくっ」
うん。これは絶対に酔ってる。
でも…‥メフィストがこんなに素直だと、なんだか照れる。
そんないつもと違うメフィストに戸惑ってると、教室に更に異変が起きる。
「きゃっ」
教室の中だというのに、すごい風が吹いてきた。
更に雨まで降りだす。
どうなってるの?
「ちょっと巫子ちゃん。何をしたの!?」
凪咲が私のところに来て問い詰めてくるが、別に私は何もやってない。
何でもかんでも私のせいにするのはやめてほしい。
「でも、こんなこと出来るの巫子ちゃんだけだし」
いやいや、確かに精霊の力を使えば出来るけど、そんなことする理由ないし。
…‥精霊?
そういえば、メフィストもおかしくなってた。
もしかしてと思い、特殊能力の精霊視を発動させる。
すると大量の色とりどりの光の玉―――微精霊たちが私の周りをぐるぐると回っていた。
何これ。どういうこと?
もしかして…‥私の歌のせい?
メフィストがおかしくなったのも私が歌った後だし…‥。
「ごめん。本当に私のせいだったみたい」
自分が悪いと分かったので素直に謝る。
でも何でだろう。
今まではこんなことには、ならなかったのに。
精霊使いになったからかな?
これからは気を付けよう。




