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精霊使いの吸血鬼  作者: ののん
本編
27/79

転移しても吸血鬼だった件  【異世界編】

 「あれ?巫子ちゃんは?」


 朝起きて皆の集まる部屋に来て朝の挨拶をしたところで巫子ちゃんが居ないことに気づく。


 「椎名さんなら昨夜どこかに出かけて、まだ帰ってませんよ」


 私の質問には担任の教師である上田先生こと聖ちゃんが答えてくれた。

 

 そっか。巫子ちゃん、またどこかに行ってるのか。

 あの子は夜の散歩が好きだから時々夜に一人で出かけることも多いんだよね。

 散歩といっても空中散歩だけど。


 やっぱり、吸血鬼だからなのかな?


 朝になっても帰って来てないなら、いつも通りからかわないとね。


 「凪咲ちゃん、悪い顔になってるよ」


 「また、ミコをからかうのかー!?」


 そんな感じで他愛ない話をいつも通りしながら巫子ちゃんが帰ってくるのを待っている時だった。


 ――DGOOOOONNN!!!!!!


 何か、爆発したような音が城内に響き渡った。


 「何!?」


 あまりの音にクラスメイトの皆もわたわたと慌てている。


 「何かあったんだ!行ってみよう!」


 仄香ちゃんが真っ先に駆けだした。

 それに続いて私たちも音のして方へ向かった。






 「国王をよんで来い」


 音のしたところへ着いた私たちはそんな言葉を聞く。

 言葉を発したのは大人の男性。

 恐らくこの人がさっきの音を出したんだろう。

 爆弾か魔法かは分からないけどお城の壁が壊れている。


 「あなた誰!?」


 そう誰何するの仄香ちゃん。

 彼女は勇者でもあるし正義感もあるから率先して訊いてくれたのだろう。


 その隙に私は特殊能力の鑑定を発動する。

 結果は何も見えなかった。

 艦隊で今まで見えなかったことはほとんどない。

 何も見えなかったのは、


 「我は最強の魔王だ!」


 私が結論を出す前に男が名乗った。


 そう、いままで見えなかったのは魔王。


 しかし、この世界の魔王は万人に慕われるような存在だったと思うけど。


 「そっか魔王か。

 あなたが悪い魔王ならあたしが倒す!」


 剣を抜く仄香ちゃん。


 「勇者?そういえばこの国にはそんなのもいたな」


 男は仄香ちゃんの姿を一瞥したが興味なさそうに周りを見渡す。


 「それより。我は国王に話がある。早く連れてこい。

 さもなくば、ここにいるもの達を皆殺しにするぞ」


 ここにいる全員に聞こえるように男が口にする。

 その言葉を聞いた仄香ちゃんが男に向かっていった。


 「そんなこと、あたしがさせない!」


 「なかなかの速さだ。だが」


 男は手を前に出す。

 すると思いっきり走っていた仄香ちゃんが急停止する。

 その表情は何か苦しげだ。


 「お姉ちゃん!?」


 苦しむ仄香ちゃんに冷香ちゃんが駆け寄る。

 

 「ちょうどいい。お前も人質だ」


 こんどは冷香ちゃんまで苦しみだした」


 どうしよう!?

 このままだと二人とも危ない。

 勇者である仄香ちゃんが簡単にやられているのに私たちだとどうしようもない。

 

 巫子ちゃん!速く帰ってきて!





―――――――

 

 すっかり朝になってしまった。

 昨夜も月が綺麗で夜の空中散歩に出かけていたら帰ってくるのが朝になってしまった。


 また凪咲にからかわれるかも。

 朝帰りになった私のこと、いつもからかってくるんだよね。


 そんなことを考えながらお城まで来たんだけど。


 「えっ!?」


 お城が何故かボロボロだった。

 皆のことが心配になり急いで壊れた壁から中に駆け込む。


 そして、そこでは、泣き声が響いていた。

 泣き声の主は冷香。

 彼女が泣いている理由は、


 「ほの、か…‥」


 血に染まった服で仄香が横たわっていた。





 

―――――――


 「私が国王だ」


 仄香ちゃんと冷香ちゃんが苦しんでいるなか、王様がやってきた。


 「ようやくか。なら虹彩玉を持ってこい」


 王様を見た男がそれだけを伝える。

 早くしないと仄香ちゃんたちを殺すと言わんばかりの目をしていた。


 「わ、わかった。だからその子たちに何もするな!」


 それだけ残し、どこかに行ってしまう王様。

 虹彩玉とうのは何かは分からないけど、王様は私たちのために、それを取りに行ってくれたみたい。


 人の言い大様だ。


 「冷香を離せ!」


 これで二人とも助かるかもと思った直後、仄香ちゃんが叫んだ。

 その叫び声と共に全身から物凄いオーラが出る。


 「ほう。これが勇者か。邪魔だな」


 そう言った男は仄香ちゃんの目の前に高速で近づき、男の腕が仄香ちゃんの胸を貫いた。


 「「「仄香ちゃん!!!」」」

 「お姉ちゃん!!!」


 この場にいた全員が叫ぶ。


 「おっと。殺してしまったか」


 そう言って腕を引き抜く。

 その際に血が大量に噴き出ていく。

 そして、仄香ちゃんは倒れて、動かなくなった。


 「もって、来たぞ!」


 息を切らせた王様が何かを手に持っていたが、今はそんなことどうでも良い。

 聖ちゃんも仄香ちゃんに駆け寄り回復魔法をかける。


 「思ったより早かったな。もう少し遅ければ他にも死人が出ていたかもな」


 男はこれだけ残しどこかへと消えていった。


 「お姉ちゃん!おねえちゃん!」


 聖ちゃんが何度も回復魔法をかけるが仄香ちゃんの目は開かない。

 傷は塞がっているが、顔には生気が感じられない。


 仄香ちゃんが、死んでしまった。






―――――――


 そんな、仄香が…‥。


 皆が泣きながら仄香に抱き着いている。

 先生も回復魔法をかけ続けている。


 なにがあったのかは凪咲が涙を流しながら教えてくれた。


 「何で!何でお姉ちゃんが!?」


 冷香の嘆きが響く。


 「巫子、ちゃん…‥。

 何で!もっと早く帰って来てくれなかったの!」


 私が帰って来たことに気づいた冷香 がそう叫んだ。


 そうだ。

 私がもっと早く、帰って来ていれば…。

 

「冷香ちゃん、落ち着いて」


 「でも、でも!」


 「巫子ちゃんも自分を責めないで」


 涙を拭いながら凪咲が慰めてくれる。

 でも、私が速く帰って来ていれば…‥。


 「皆さん、少しいいですか」


 王様が話しかけてくる。

 

 「あなたが!私たちをここに連れてきたから!」


 冷香が今度は王様に当たる。

 そうだ、この人が…‥。


 「落ち着いて」


 凪咲が尚も私たちを慰めてくれる。

 

 「違う…‥。私のせいで…‥」


 今度は自分を責めだす冷香。

 それを慰める凪咲。


 そうだ、落ち着け私。

 凪咲は冷静だ。

 それなのに、最年長の私が取り乱してどうする。


 「…‥勇者様を、生き返せるかもしれません」


 王様がそう口にした。


 そうだよ。

 ここは異世界。

 魔法があるファンタジー世界。

 蘇生魔法とかがあるかもしれない!


 そうして私たちは王様から仄香を生き返らせるかもしれないという話を聞いた。






 伝承によると、聖女が秘宝を使い勇者をよみがえらせたという。

 聖女なら先生がいる。

 後はその秘宝だが、


 「それは…‥虹彩玉です…‥」


 皆の顔に絶望が浮かぶ。

 だが私だけは意味が分からないでいた。


 なんで皆そんな顔してるんだろ?

 …‥もしかして、虹彩玉って。


 「先ほどの魔王を名乗るものに渡してしまいました…‥。」


 …‥。

 皆を守るためにしたことだ。

 王様は悪くない。


 「ほかに、その虹彩玉はないの?」


 「分かりません」


 こうなったら、その男から取り返すしかない。

 でも、どこにいるのか…‥。


 『メフィ、分からない?』


 『ごめん。我もそこまで万能じゃない…‥』


 いつもはツンツンしているメフィストだけど、今は私の雰囲気のせいか素直に答えてくれる。

 

 なら、ルー君たちに。


 「…‥分からない…‥」


 通信用のアイテムで連絡してきてもらい、ルシフェルとメアリーに訊いてみたが駄目だった。

 しかし、メアリーが希望をくれる。


 「もしかしたら、ギルなら知っているかも」


 何でも以前、魔王を名乗る男が攻め込んできたと聞いたらしいのだ。

 

 と言ううことで、私とルシフェル、メアリーは魔王ギルの所に向かた。






―――――――


 いつも通り自室で仕事をしているとき、目の前に転移の気配がし、男が現れた。


 「よう、魔王ギル。復習に来たぜ」


 「お前は!?」


 目の前に現れたのは以前俺に勝負を挑んできて返り討ちにした男。


 「また来たのか」


 「ああ、あの時のリベンジだ。

 今回はこれがあるからお前に勝ち目ないぞ」


 男が懐から虹色に輝く水晶を取り出す。

 なんだあれは?

 何か力を内包しているように感じるが。


 男はその水晶を胸部に押し付けると、水晶は体の中に入っていた。

 その途端、男のオーラが虹色に輝きだす。


 「おぉ、すごい!これが虹彩玉の力か!」


 男からは膨大な力が溢れている。


 「なんだ今のは!何をした!?」


 「ははは、これから消えるお前には関係ないよ」


 その言葉と共に魔法を放ってくる。

 急いで防御したが防ぎきれず負傷してしまった。


 「くっ、なんて力だ。以前とはまるで違う!?」


 これはこれは本当にやばいかもしれない。

 こいつも一応魔王。

 魔王たるもの人々の誇りでなければならないが、こいつは違う。

 自分の力を見せつけたいだけの男。


 以前来た時、俺を倒した後他の魔王を倒すと言っていたが返り討ちにした。

 しかし、今回は難しい。

 他の二人にも連絡を取って力を借りたいところだ。

 こんな奴が力を持っていたら危険すぎる。


 どう二人に連絡を取ろうかと考えているとき、丁度二人が現れた。

 現れた二人にちょうどいいタイミングで来てくれたと声をかけようとしたが出来なかった。


 それは、二人と一緒にやってきた少女を見たからだ。

 確か彼女は、ミコと言う名の伝説の真祖だったはず。

 あのルシフェルともすぐに打ち解け、表情う豊かで面白い少女だった。

 だがしかし。今目の前に居るのは以前あったときとは別人のようだ。

 殺気のようなものをまとっている。


 「おっと、ギルの後に行こうと思っていたら、丁度来たようだな」


 襲撃者のお男はミコの殺気に気づかずにメアリーとルシフェルが現れたとこに口角をあげる。

 魔王を三人同時に相手にして勝利を確信しているようだ。


 流石に三人でやれば負ける気はしない。

 しかし、今はそんなことよりもミコが気になる。


 「あなたが仄香を殺して虹彩玉ってのを奪った人?」


 仄香。確か勇者の名前だったはず。

 殺されたのか!?

 だからミコはこんな殺気をまとっているのか。


 「虹彩玉を奪ったのは俺だが、誰だお前?」


 「虹彩玉を返せ!」


 男の誰何に答えず怒鳴るミコ。

 勇者を殺された怒りか以前の明るさが全くない。


 「あぁ、あの国のやつか。

 なら残念だな。虹彩玉ならさっき使ったところだ」


 その言葉を聞いたとたん膝を折って崩れるミコ。

 なんだ?虹彩玉がそんなに必要なのか?

 てっきり復習に来たのだと思ったが。


 「大丈夫だ巫子。我に任せて」


 突然ミコのそばに精霊が現れた。

 あの精霊は邪神の本体の邪精霊。

 

 「あの男の動きを近づいて止めて。何とかするから」


 崩れるミコを宥めるように話しかける邪精霊。

 あいつ、あんな奴だっったか?


 「分かった。信じる」


 立ち上がったミコが無防備に歩いて男に近づく。


 「なんだお前。

 もしかしてあの勇者の知り合いか?

 なら同じ場所に送ってやるよ」


 その言葉と同時に近づいてきたミコの胸を男の腕が貫く。

 一瞬焦ったが、彼女は不死身であることを思い出し落ち着く。


 「ははは、これで勇者と同じところに行けるな。

 …‥な、抜けない!?」


 ミコの胸を貫いた腕を抜こうとあがいているが全く抜ける気配がない。

 

 「な、なんだこの精霊は!?」


 邪精霊は男の頭に触れている。

 暫くその状態が続いた。

 そして、邪精霊が男の頭から虹彩玉を取り出した。


 「き、貴様!?それを返せ!」


 取り出された虹彩玉を見て焦る男。


 「ありがとう。メフィ」


 そんな男は無視して邪精霊から虹彩玉を受け取ったミコは少し笑顔が戻っていた。

 何故かは分からないがあの虹彩玉がよほど必要だったのだろう。


 まるで最初から腕なんか刺さっていなかったかのようにこちらに戻ってくるミコ。

 その速さに少し驚いてしまった。

 

 「ルー君、お願い」


 そして、ルシフェルと共にどこかに消えてしまった。


 「…‥」


 それを呆然と見てた俺は、説明を求めて残っていたメアリーに視線を向ける。


 「実はな…‥」


 事情を聴いてある程度は理解した。


 「くそっ!?なんだあの女は!?」


 怒りに震える男。

 その男に邪精霊が近づいていく。

 どうやら邪精霊は残っていたらしい。


 「おいお前。よくも巫子を傷つけたな」


 邪精霊からかつてないほどの殺気を感じる。

 このプレッシャーあの時の邪神以上かもしれない。


 「ひぃ…‥」


 悲鳴を上げ恐怖に震える男。


 そして、男は恐怖と絶望と共にこの世界から消滅した。


 「なぁ、メアリー。あいつが暴走したら今度こそこの世界は滅ぶんじゃないか」 


 「そうだな。ミコと繋がっていないと力は出せないみたいだが、もしミコがこの世界に絶望したら終わるな、この世界も」


 お互い苦笑しながら邪精霊の方を見ていた。






―――――――

 「取り返してきたよ」


 男から取り返して来た虹彩玉を先生に渡す。


 「ありがとう、椎名さん」


 虹彩玉を受け取った先生はすぐに蘇生を行った。

 方法は私が取り返しに行っている間に訊いていたようだ。

 これで仄香も生き返るはず。


 先生の手に持つ虹彩玉が虹色に輝きを放つ。

 その光は仄香の中に入っていった。


 「んん…‥」


 暫くして仄香の目はゆっくりと開かれていった。


 「お姉ちゃん!」


 涙を流しながら仄香に抱き着く冷香。

 それをかわきりに皆も仄香に抱き着く。

 

 うぅ。本当に生き返ってよかった。






 「ありがと!ミコ!せんせー!」


 あれから皆が落ち着いてからゆっくりと話した。

 またこの笑顔が見れて本当に良かった。


 「それにしてもこれで生き返ってよかったね」


 凪咲が私に話しかけてくる。


 「そうだね。魔王になって蘇生率が円周率とかじゃなくてよかったよ」


 どこかのスライムを頭に浮かべながら凪咲に返す。

 

 「うんうん。無慈悲に人間の魂を一万も必要とかだったら大変だったもんね」


 恐らく凪咲の頭の中にもあのスライムが浮かんでいるだろう。


 「巫子ちゃんならやりかねないし」


 「さすがにないよ」


 確かに知らない人一万人より仄香一人の方が大切だけど、流石にそれはない…‥多分。


 それからも凪咲とはふざけた会話を交わした。

 こんなふざけた会話が出来るのも皆が笑顔でいるからだね。


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