吸血鬼はもう、死んでいる。
「この中に探偵の方はいらっしゃいますか!?」
とある日。飛行機に乗っていた私たちの耳にそんな言葉が入ってきた。
「探偵?普通はこういう時、医者とかじゃないの?」
冷香が疑問の言葉を口にする。
確かにこういう時はシャとか看護師とかが普通かもしれない。
しかし、私と凪咲の頭には他のことが浮かんでいた。
「巫子ちゃん、これって」
「うん。あれだよね」
私たちの頭にはとある作品が浮かんでいる。
私たち以外は知らないみたいで頭の上に疑問符を浮かべていっる。
「でも流石に改造人間とかではないよね」
「うん。ただの愉快犯じゃないかな」
それはそうだろう。
現実にそんなことが起こるはずがない。
改造人間やらは物語の中だけだ。
「巫子ちゃんは吸血鬼で私たちは異世界転移を体験したけどね」
それを言われると何も言えなくなるけど。
「とにかく誰も探偵はいないみたいだし、私が行ってみるよ」
「何か知っているようですが、危険はないですの?」
心配な顔をするカレンに笑って答える。
「私は不死身だし大丈夫だよ」
「私も行くよ。ワトソンとして」
危険があるかもしれないので止めようとしたが顔に「面白そう」と書いてあるので、これは絶対についてくるだろう。
異世界から帰ってきて力を殆ど失ったとはいえ、少しは普通の人よりも優れているので、よっぽどのことがない限り大丈夫だろう。
「死ぬのは探偵の方だから大丈夫」
いやいや。私は死なないからね?
こんな時仄香なら「私も行きたい!」とついてくるかもと思って彼女の方を見て見るといつの間にか気持ちよさそうに可愛い顔で寝ていた。
これなら二人で行けそうだね。
「探偵を連れてきました」
CAの人に案内されてコクピットに入る。
「こいつらが探偵?」
そう私たちに視線を向けてきたのは銃を持った男。
「そうだよ。コードネームはヴァンパイア」
「私は助手のワトソン」
私たちが名乗ると笑いだす男。
「ふははははは。まさか本当に来るとはな!お前たちもあれを見てるのか!?」
二人で頷く。
「そうか!面白い!そでじゃあ、俺が何のためにこんなことしてるか当てて見ろ!」
そんなの知らないし。
それにしてもこの人、いくら好きだからと言ってしていいことと悪いことがある。
あの場面を再現したいようなので、あの時の犯人の理由で答えてみる。
「誰かにやらされてるとか?」
「違うだろ!まずは俺を誘導して答えるんだろうが!」
そういえばそうだった。
「もういい!にわかは帰れ!」
そう言って銃口をこちらに向けてくる。
「そこは耳を伸ばして攻撃してこないんだ…‥」
凪咲が呟いてるけど当たり前だ。
さっきも行ったが現実でそんなことはあり得ない。
「何してる!早く出ていけ!」
相当に興奮しているようだ。
遊びはこのくらいにして、そろそろ捕まえようかな?
「巫子ちゃん、私荷物持ってこようか?」
にやけながら言う凪咲。
銃口を向けられているというのに肝の据わった子だ。
「早くいけ!」
―――バン!
男が怒鳴りながら発砲してきた。
「危ない!」
凪咲をかばいながら横に倒れる。
痛っ。
その時右腕をかすめて血が出てくる。
銃弾は普通の魔法より速いから避けきれなかった。
ちょっと油断しすぎかな。
―――むにゅ。
傷も治り痛みもなくなったと思ったら、反対の腕から何か柔らかい感触が伝わってくる。
柔らかいもののっ正体は何かと左手を見て見ると凪咲の胸を触っていた。
「あぁん♡」
私と目が合った凪咲はわざとらしく変な声を出す。
「巫子ちゃんの…‥エッチ♡」
「わざとでしょ!やめて!」
確かに胸を触ってしまったのは私が悪いけど、庇うためなんだから許してほしい。
「何イチャイチャやってる!ここでそんなラブコメはなかったぞ!」
銃口を向けながら怒鳴ってくるハイジャック犯。
いやいや。怒るとこそこなの?
「ふざけた真似してないで早くいけ!」
さっきの銃声にパイロットやCAの人も怯え切っている。
早く何とかしないとな。
乗客席のほうにも音は聞こえただろうから、お客さんたちも不安にしてるだろうし、カレンたちも心配しているかもしれない。
私以外で平気な顔しているのは凪咲くらいだろう。
銃口を向けられてるのに凄いよ。
「遊びはこれくらいで大人しくしてもらうよ」
そう言って相手の懐に呼び込み銃を奪う。
そもそもこの人は、私たちがちょっと違う行動をしたら怒るのに、銃を使っている。
自分はちゃんとしていないのに、何か理不尽だ。
「か、返せ!」
銃を取り返そうと出てきた腕を掴み、背負い投げをする。
背負い投げと言っても本物のように重心を利用してとかではなく、持ち前の怪力で無理やり投げた見た目だけの背負いなげだ。
「何か縛る物とかない?」
うつ伏せにして両手を抑えながらここにいる人たちに問いかける。
「す、すぐ待ってきます!」
はっとしたCAさんがどこかに駆けて行き、ガムテープを持ってきてくれた。
「俺は警察と取引して組織から守ってもらう!だからお前も手伝え!探偵だろ!」
「はいはい」
煩いので口もガムテープで塞いでおく。
「じゃあ戻ろうか」
「そうだね」
後のことは任せておいて私たちは席に戻った。
席に戻ってくると仄香はまだ寝ていた。
気持ちよさそうに可愛い顔で寝ている。
銃声もしたのによく寝れるな。
「巫子!大丈夫ですの!?」
私たちに気づいたカレンが駆け寄ってくる。
「腕に血が!」
大丈夫と言おうと思ったんだけど、その前にカレンに血を見られてしまった。
そういえば忘れてた。
すぐに治ったから大丈夫だと伝える。
私が不死身だって知ってるのに心配症だ。
「凪咲ちゃんも大丈夫だった」
今度は冷香が凪咲に問いかける。
その問いにすぐに答えることなく私の方を向いてにやりと口角を上げる凪咲。
嫌な予感がする。
「実は巫子ちゃんに襲われて」
出てもいない涙を無ぐうようなそぶりを見せる凪咲。
何言ってるのこの子!
「私の大きな胸を揉みしだかれたの」
今度は抱きしめるように胸を隠す凪咲。
しかも何気に大きなのところを強調して私の方を見ながら言ってきた。
「自分は小さいからって」
「ちょっと待て!それは関係ないでしょ!後、凪咲の胸を揉みしだいてもいないし、私の胸も小さくない!」
なんて失礼な子だろう。
あんなことがあった後でもいつも通りで関心はするけど。
それから大事なことなのでもう一回言っておく。
私の胸は小さくない!
そんな私たちのやり取りを見て、呆れた顔をしつつもいつも通りだと席にしわる冷香。
だけど私は知っている。
そんな冷香もこっそり仄香の寝顔を撮って「可愛い」と呟いていたのを。
この子は若干のシスコンが入っているのだ。
それからは何事もなく飛行機は無事に空港について、私たちは飛行機から降りた。
降りた時ハイジャック犯のことで話があると呼び止められて、その後に事情説明などで時間を取られたけどそこは割愛しておく。




