こっくりさん
とある日の放課後、私、カレン、凪咲、仄香、冷香の五人で誰もいない教室に残っていた。
それは仄香がいきなり「こっくりさんをやろう」と言い出したからだ。
「昨日テレビで見てさー。ホントーにいるか試してみよー」
「ところでこっくりさんとは何ですの?」
可愛らしく首を傾げながら訊いてくるカレン。
異世界からきたカレンには当然「こっくりさん」なんて知らないので説明する。
「えっと、確か占いの一種だったかな。
硬貨に幽霊を降ろしてその幽霊に訊いたら何でも教えてくれるの。
まあそんなの非科学的だからあり得ないけどね」
そう説明した私を何故かジト目で見てくるみんな。
「巫子ちゃんがそれを言うんだ…‥」
そういうことで私たちは「こっくりさん」をすることになったのだ。
「絶対に手を放しちゃだめだからねー」
仄香がみんなに言うけど一番手を放しそうなのは仄香だと思う。
カレンにもやり方を教えてみんなで始める。
「じゃあ呼ぶよー!
こっくりさん、こっくりさん、質問に答えてください」
鳥居とはい、いいえ、五十音が書かれた紙に十円玉を置いて、みんながそこに人差し指を乗せたところで仄香がわくわくしたようにこっくりさんを呼ぶ。
こんなのでいいのかな?
この紙の手書きだし鳥居なんていがんでる。それに呼び方もそんなのでいいの?
そんなことを想っているとみんなの指が置かれた十円玉が動き出した。
「ホントーにきたー」
テンションがすごく上がっている仄香だけどどうせ誰かが動かしてるに違いない。凪咲とか。
そう思い凪咲の方を向いたらぽかんとした顔でこっちを向いている凪咲と目が合った。
「…‥巫女ちゃん?」
えっ、何その反応。凪咲じゃないの?
…‥いやこれは私を騙す演技に違いない。
「最初は私が動かしてからかうつもりだったんだけど…‥」
これも演技だ。こっくりさんなんて居るはずない。
凪咲の様子から全然演技には見えないけどこれは凪咲の演技力がすごいだけにちがいない。
「じゃあ質問するよー」
「ま、まって…‥」
テンションマックスの仄香が私の制止も聞かずにこっくりさんに質問する。
「じゃーあー、次のテストの答え教えて-」
なんともオおバカな質問をする仄香。
そんな仄香の言葉に答えるかのように十円玉が動き出す。
し…‥ら…‥ん
十円玉が示した文字を繋げるとそんな言葉だった。
やっぱり凪咲が動かしているんだ。
だから知らないんだよ。こっくりさんは何でも知ってるもの。
「えー。知らないのー」
「知らないならしかたないよ!だからもう終わりにしよう!」
「ほかの質問ししたらいいと思うなー」
私の終わろうという提案を反対する凪咲。
さっきまでぽかんとしていたが私が怖がる…‥ってはないけど、とにかくそういう私の姿を見た凪咲が面白がってるのが伝わってくる。
面白がってるということはやっぱり凪咲の仕業だったんだね!
「そうそう、終わるなんてつまんないよー。
今度はカレン様がどれくらい巫子のこと好きか訊いてみよー!」
ちょっと待って。なにその質問。
仄香の馬鹿な提案に賛成する凪咲。さっきから凪咲は私の方を見てすごく楽しそう。
冷香は呆れたようにしてるし、カレンも照れていて二人とも仄香を止める様子はない。
なので私が止めようとしたのだが仄香が先に質問してしまった。
す…‥き…‥じ…‥や…‥な…‥い
出た結果にみんなが無言になる。
そして少ししてカレンが慌てて口を開く。
「ワタクシは本当に巫子が好きですの!嘘じゃありませんの!」
必死で弁明するカレン。
「分かってるよ。こんなのただの占いだから」
慌てるカレンを何とか宥めようとする。
その時私たちの指が十円玉から離れてしまった。
「離したらダメだって!」
仄香が叫ぶがもう遅い。
私たちの指は十円玉からもうすでに離れているのだから。
そんな時紙を置いていた机がかたかたと揺れだした。
「や、やめてよ凪咲」
「私何もしてないけど…‥」
そんなはずがない。
凪咲が私を怖がらせるためにやってるんだ!
凪咲じゃないなら仄香がしてるんだ!
「…‥…‥」
仄香の方を見るとぽかんと動いた机を見ている仄香。
仄香演技がうまくなったなー。
それとも冷香かなー。
冷香は仄香の後ろに隠れるような形になっている。
みんな演技うまいなー。
全然誰がやってる分からないよー。
現実逃避ぎみにそんなことを考えていたら誰も触れていないはずの十円玉が一人でに動き出す。
み…‥こ…‥が…‥す…‥き…‥な…‥の…‥は…‥
「ちょっと誰の悪戯ー。やめてよー。
それに私が誰を好きだってー。
どうせ凪咲の仕業で「かれん」にしてまたからかう気でしょー」
「いや、だから私はなにも…‥」
あー、本当に凪咲には困っちゃうなー。
凪咲が否定してる気がするけど気のせいだよねー。
もしくは演技とかー。
そう現実逃避している間にも十円玉が続きの文字を示す。
その文字を繋げると、
め…‥ふ…‥い…‥す……と
…‥はい?
めふいすと?…‥メフィスト?
なんであの子の名前が?
「これって…‥あの子の仕業じゃない?」
凪咲が私に訊いてくる。
凪咲の言葉にみんなも私の方を見る。
うん…‥私もそう思う。
あの子、邪精霊メフィストの。
そう思い真相を確かめるためメフィストを呼び出し問い詰める。
「ねえ、これってあなたの仕業?」
「は、はぁ。何のことよ!こっくりさんなんて知らないんだから!」
見事なまでのツンデレ的告白。
やっぱりこの子だったか。
「ふ~ん。そうなだ~。
やっぱりあんたって我のこと好きだったんだ~」
とぼけていたメフィストにさっさあったことを説明してあげるとそんなことを言ってくるメフィスト。
「まあ我は巫子のことなんて何とも思ってないんだけどね!」
すごいテンプレなツンデレのセリフ。
この子のこういうツンデレなところとか可愛いし私のことを好いてくれてるだろうから私もメフィストは好き(友達とかそういう意味で)なんだけど、こういう悪戯をするから大変だ。
…‥まぁそういうとこも可愛いと思うけど。子供っぽくて。
メフィストの額を軽くデコピンしてお仕置きをしてから私たちは帰ることにする。
やっぱりこっくりさんなんて存在しないんだね。
教室を出るときに「面白かったよ」と小さな声で聞こえた気がしたけど私以外気づいてないみたいだし空耳にちがいない。
私はみんなよりずっと耳が良かった気もするけど、それも気のせいに違いない。違いないのだ。




