吸血
なにか、とてもいい香りがする。
うとうととしながらもいい香りの方hr吸い寄せられるようにいく。
ここ、だ。
いい香りが鼻先にまで近づいた。
いただきます。
私はいい香りのものを味わうため、何かに牙をつきたてた…‥…‥
「変態」
凪咲から罵りの言葉が飛んでくる。
いつもなら「誰が変態だ!」と大声でツッコむところだが今回はツッコみづらい。
「いや…‥その…‥ねぼけてたから…‥」
言い訳にならないような言い訳をする。
何故こんなことになってるのかというと、
ーーーー朝ーーーーー
「…‥こ…‥巫子」
カレンの声で目が覚める。
「おはよう」
朝の挨拶を言葉にするが何故か距離が近いことに気づく。
それから口の中がすごく美味しい、これまで味わったことの無いような美味しい味がする。
なんだろこの味?
なんか血のようなあ、じ、が…‥
そこまで考え私の口がカレンの首に触れていることに気づく。
「ご、ごめん!」
慌ててカレンから飛んで離れる。
もしかして、カレンの血を吸った?
カレンの首には二つの小さな傷が、まるで吸血鬼が血を吸ったかのようにできていた。
まるでじゃなくて、そうなんだよ!
私が吸ったんだよ!
自分の中で現実逃避ぎみにボケてツッコむ。
ーーーーー回想終了ーーーーー
今はカレンの首元はスカーフで隠してあるので私の噛み跡はみえない。
だけどスカーフを巻いてきたカレンに何で巻いてるのかを凪咲に訊かれ噛み跡が見つかった。
それで私は寝込みを襲ったと変態扱いされているのだ。
「別に…‥巫子になら…‥」
そんなことを呟いてるカレンだけどそれはいけないと思う。
まあ少しくらいならいいだろうけど、流石に許可なく吸うのはいけない。
それも寝込みをなんてとんでもない。
「そんなこと言ってると巫子ちゃんに全部吸われて干し物になっちゃうよ」
冗談めかして言う凪咲。
「流石にそこまでは吸わないよ!」
そんな凪咲に反射的にツッコんっでしまう私だが、
「へー。そこまではなんだ」
うっ。
美味しいから少しなら吸わせて貰おうかなとか思ったけど、からかわれないよう口にはしなかったのに、ついうかっり言ってしまった。
「今度は許可を貰うから」
慌てて言い訳するが、こんなんじゃ全然意味がない。
「許可を貰うからいいってわけじゃないけど。
女の子の血が飲みたいなんて変態だねー」
吸血鬼なんだからうら若き乙女の血を求めるのは仕方ないことなんだよ!
本能だから!そう、仕方ないんだ!
あの後仄香たちがやってきて、仄香が何故か「この中で一番美味しいのだれ?」と訊かれ、それならと凪咲が何故か「誰の血が一番美味しいか調べよう」と言い出してみんなの血を吸うことになった。
「じゃあ最初はあたし」から!」
仄香が勢いよく私の前に飛び出してくる。
「じゃあ吸うよ」
仄香の首に鬼歯を優しく立て血を吸う。
その瞬間、口の中に激痛が走った。
「いたっ!」
慌てて仄香の首から離れる。
「どうしたの巫子ちゃん。大丈夫?」
みんなが私を心配して駆け寄ってくれる。
「だ、大丈夫。ちょっと痛かっただけ」
本当はちょっとなんてもんではないけど、みんなを安心させるため笑顔で誤魔化す。
「痛いって、仄香の血が、ですの?」
カレンが首を傾げながら訊いてくるので「多分そう」と言いながら首を縦に振る。
「お姉ちゃんが勇者だからかな?」
みんなが何で血が痛いんだろうと考えていると冷香が自分の考えを口にする。
「なるほど。そうかもね。巫子ちゃん聖属性系の魔法とか弱点だったからね」
確かにそうかもしれない。
ダンジョン攻略してる時も聖属性系の回復魔法とか支援魔法が私にはすごく殺傷力の高い魔法になったからね。
確かにあの時のような、何か嫌な痛みだった。
勇者である仄香は血まで聖なるモノになってるのかもしれない。
「じゃあ仄香は問答無用の最下位で」
仄香に判定をくだす。
「な、なんで?まだみんなの吸ってないじゃん!」
講義してくる仄香だが聖なるモノを飲ませた仄香の順位なんて考える必要なんていらない。
「ちょっと待ってて!せーこせんせー連れてくるから!
せんせーも聖女なんだし血も聖なるモノになるでしょ!それで飲み比べして!どっちが一番まずいか!」
いやいやそれは私に劇毒を飲めと?
普段はおバカなのにこういうときだけ頭は廻るんだから(劇毒だってことは忘れてるのかもしれないけど)。
そんなに最下位になりたくないの?
「次は冷香にしようか」
走っていった仄香を横目に見ながら冷香に声をかける。
次を冷香にした意味は別にない。仄香の妹だし何となくだ。
「私注射とかあまり得意じゃないから、あんまり痛くしないでね」
私の前に来た冷香の首に鬼歯をたて血を吸う。
なんていうか、とてもやさしい味。
甘さは殆どないけどいつも誰かを想っているようなやさしさ。仄香のことをいつも想ってるのが伝わってくるような味だ。
仄香が吸血鬼だったら絶対に一番の味だ。
感想を伝えると少し頬を赤くする冷香。
珍しく冷香の照れているところを見た気がする。
「仄香ちゃんが居なくてよかったねー」
確かに。凪咲の言うように仄香が居るところでこんなことをいったら流石に冷香に怒られていたかも。
「じゃあ次は私だね」
今度は凪咲が私の前に来る。
「痛く…‥しないでね♡」
わざと色っぽく言ってくる凪咲。
そんな凪咲は無視して首に鬼歯を立てる。
「あぁん♡」
「変な声出さないでよ!わざとでしょ!」
尚もふざけてくる凪咲に思わずツッコみを入れてしまう。。
「ごめんごめん」
平謝りしてくる凪咲を今度こそ気にせず鬼歯を首に立てて血を吸う。
「どう?私の味は?」
「血ってちゃんと入れてよ!ちょっとえっちく聞こえるでしょ!」
いつも通り凪咲にからかわれツッコみを入れる私。
そんな凪咲だけど血は結構おいしかった。
さっぱりとした味。夏に飲むのがぴったりの味だ。
「どうどう?」
興味深々といった凪咲に感想を伝える。
冷香は仄香一番といった味だったので私は冷香より凪咲の血の味の方が好きかな。
「次はワタクシですわね」
今度はカレンが私の前に来る。
「カレンは朝吸ったし大丈夫だよ」
朝吸ってしっかりと味も覚えているので問題ない。
カレンの血が私の一番好きな味だった。
そうカレンに伝えようと思ったのだが私より先にカレンが口を開いた。
「あれは寝ぼけてのことだったので不公平ですの。だから公平になる様にワタクシも今吸ってほしいですの」
確かに寝ぼけてのことだけどちゃんと味は覚えている。
そう言おうとしたのだが凪咲が「空気読んで」と言うのでよくわからない空気を読んでカレンの血を吸うことにした。
カレンの首に嚙みついて血を吸っているとき、上田先生を連れた仄香が帰ってきた。
「し、椎名さん!何をしているの!」
クレアの血を吸っている私を見た先生が大声を出して怒鳴る。
「聖ちゃん、実は…‥」
先生の誤解を解こうとしてくれたのか凪咲が先生に説明しようとしたのだが、
「実は巫子ちゃんがカレンちゃんを襲っちゃって」
「ちょっと凪咲!」
誤解を解くどころか更に悪い方向にもっていこうとする凪咲。顔がすごく悪戯っ子のようにニヤニヤしている。
「椎名さん!」
更に強く叱ってくる先生。
もう凪咲。こんな時に冗談はやめてよね。
「襲ったのはホントでしょ」
確かにそれは本当だけど、もうちょっと言い方をどうにかしてほしかった。
「なるほど、そういうことね」
ちゃんと説明してなんとか誤解は解けた。
「それじゃー巫子、せんせーの血吸って」
私の前に先生を突き出してくる仄香。
「はぁ、仕方ないわね」
そう言いながらも何故かノリノリの先生。
なんで先生までノリノリになってるの?
それに多分聖女である先生の血も聖なるモノなんだよ?
吸って、吸ってと仄香がうるさいので先生の血を吸うことにする。
まあ痛いと言っても一瞬だから我慢すれば何とかなる。
先生の首に鬼歯を立て、口内に血が入ってきた瞬間さっきと同じくらいの激痛が走る。
「っ!」
やっぱりすごく痛い。
そんな私のことなどお構いなしに仄香がどっちの方が美味しかったかを訊いてくる。
「う~ん。先生かな」
本当は痛みで味なんて全く分からなかったけど、二回も聖なるモノを飲まされた仕返しに仄香の血の方がまずいと言ってやった。
そんなちょっとした邪悪な心がいけなかったのか仄香に再度の審議を要求され聖なるモノを飲まされた。




