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美しい悪意  作者: 宮永文目
Episode.0
1/8

告白

 わたしを綺麗だなんて、思わないで下さい。

 妾を愛するだなんて、誓わないで下さい。


 今はただ、貴方が憎い。


 こんなになるまで放って置いて、今更妾の眼を見詰めるなんて。非力な妾が何も出来ないとお思いなのでしょう。あゝ忌忌しい。貴方が憎くって堪らない。


 あの頃と同じように呼んで差し上げましょうか。

 ねェ、『おにいさん』

 おにいさん、おにいさん……そうやって貴方の後ろを、何の疑いもせずについてきていた妾は、随分滑稽に映っていたでしょうね。


 おにいさん。その細いたおやかな首……妾の弱い指先でも、絡め付けば貴方を苦しめることは出来る筈。


 ……あら。今、震えたかしらん。


 ねェ、何で妾が今直ぐにそうしないのか、おにいさんには分かりますか。

 分からないでしょうね。だって貴方は『おにいさん』じゃない。『おにいさん』なんて何処にも居なかった。


 妾がどれだけ心を引き裂かれたのか。どれだけ軀を溶かしたことか、貴方には分からないでしょうね。懇ろに、おにいさんだけを想って息を吐いたのですよ。苦しい苦しい愛と悲しみのせめぎ合いの中、妾はおにいさんに……。


 おにいさん……妾はおにいさんが好きです。未だ、信頼を裏切られたとしても、貴方を愛しているのです。こんな気持ち、本当に可笑しい……全然知らない、知りたくもなかった。

 妾は如何すれば良いのですか。

 貴方を傷つけたいのに、傷つけたくない。苦しめたいのに、貴方の苦痛を想像すると、妾の胸が痛くなる。


 おにいさん。ねェッ、助けて下さい、おにいさん……。


 あゝこんなに温かい

 おにいさんだけの妾です。

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