告白
妾を綺麗だなんて、思わないで下さい。
妾を愛するだなんて、誓わないで下さい。
今はただ、貴方が憎い。
こんなになるまで放って置いて、今更妾の眼を見詰めるなんて。非力な妾が何も出来ないとお思いなのでしょう。あゝ忌忌しい。貴方が憎くって堪らない。
あの頃と同じように呼んで差し上げましょうか。
ねェ、『おにいさん』
おにいさん、おにいさん……そうやって貴方の後ろを、何の疑いもせずについてきていた妾は、随分滑稽に映っていたでしょうね。
おにいさん。その細い嫋やかな首……妾の弱い指先でも、絡め付けば貴方を苦しめることは出来る筈。
……あら。今、震えたかしらん。
ねェ、何で妾が今直ぐにそうしないのか、おにいさんには分かりますか。
分からないでしょうね。だって貴方は『おにいさん』じゃない。『おにいさん』なんて何処にも居なかった。
妾がどれだけ心を引き裂かれたのか。どれだけ軀を溶かしたことか、貴方には分からないでしょうね。懇ろに、おにいさんだけを想って息を吐いたのですよ。苦しい苦しい愛と悲しみの鬩ぎ合いの中、妾はおにいさんに……。
おにいさん……妾はおにいさんが好きです。未だ、信頼を裏切られたとしても、貴方を愛しているのです。こんな気持ち、本当に可笑しい……全然知らない、知りたくもなかった。
妾は如何すれば良いのですか。
貴方を傷つけたいのに、傷つけたくない。苦しめたいのに、貴方の苦痛を想像すると、妾の胸が痛くなる。
おにいさん。ねェッ、助けて下さい、おにいさん……。
あゝこんなに温かい
おにいさんだけの妾です。