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公爵様はただのもらい事故  作者: 楢崎とまと
2/3

2話です。

哀れな公爵様、ようやく登場です

 

 先ほど振ったばかりのあいつことライである。


「先生!エミリーはっ!」


「こればっかりはわからんよ。怪我は大したことないが、いかんせん頭を強く打ったようでな。」


「エミリー…。こんなことになるなんて…。ねえ、お願いだよ、君の赤い瞳を僕に見せて…?」


ライはエミリーの手を握り、項垂れた。エミリーをフッてはいたがこの男、エミリーのことが、まだ、好きなのである。


「僕が、頼りなかったばっかりに…。エミリーは秘密を打ち明けられなかったんだよね…?」


ぽろぽろと青色の瞳から涙をこぼしながらライは話していた。誰に聞いてもらう訳でもなく、ただ、一人で。


「エミリー…」


やがて彼は顔をすっとあげた。 


「僕は旅にでるよ。今まで僕が不甲斐ないばかりに、君は秘密を打ち明けられなかった。もう、そんなことがないように、強くなるから。」


ライは立ち上がる。

その姿はエミリーを振ったときの後ろ姿より、少しだけ凛々しい。


「愛してる、エミリー。」



―ーーーーーーーーーーーーーーー



「んぅ?」


目を覚ますと、見慣れない天井だった。


どこ、ここ…?


辺りを見渡すと、我が家には怖くて置けないような高価そうな花瓶や、気品溢れる絨毯が目についた。


な、何事…?


頭の追い付かない事態に、エミリーは慌て始めた。


いや、落ち着くの、エミリー。そう、私はエミリー。彼に嫌われるのが怖くて、仕事内容や、それに関する諸々を秘密にしていたら振られてしまった哀れなエミリー…って、いらないことまで思い出してしまったわ…。


「はあ…」


ため息をついた。


エミリーは、魔術師である。この世界ではそんなに珍しい職業でもない。ただ、それを彼に言えなかったのにも理由がある。


…エミリーの、異名である。


ことの発端は数年前に起きた魔物の大量発生。もちろん、エミリーも駆り出されていた。魔物に混乱した人々が混乱し、入り乱れる中、小さな女の子が泣いていた。

『怖いよ…』

エミリーは女の子にさっと寄っていて笑った。

『大丈夫だよ、お姉さんが倒すからね』

『でも…』

『大丈夫。お姉さんは強いんだよ?笑いながらでも倒せるよ』

 エミリーは、女の子を安心させたい一心で笑った。笑いながら魔物を蹴散らした。その結果、女の子を安心させることはできたのだが、エミリーには異名がついてしまった。


 殺戮の狂女…と。


笑っていたことから、あらぬ誤解を生んだらしい。ライは基本穏やかで寛容な人だったが、さすがに殺戮の狂女は嫌だろう…そう思って黙っていたのだった。


「はあ…」


二度目のため息をつくと、がちゃり、とドアが開いた。


「おや、嬢ちゃん。ようやく目が覚めたのかい。」


「は、はい…」


「嬢ちゃんはかれこれ五年も眠っていたんだよ。馬車にはねられたことを覚えているかい?」


「ええ」


 もう、五年もたってしまったのか。エミリーは今一つ受け止めきれずぼうっとしていた。


「起きたのかい…?」 


扉が開いて、もう一人入ってきた。見るからに高級そうな服を身にまとった美形。


「えっと…?」


「彼は嬢ちゃんをはねた公爵様ですよ」


医者のおじいちゃんがそう説明してくれた。

どうやら。

私をはねた公爵様は責任を感じて、公爵家で私の治療をしてくれていたそうだ。治癒魔法を毎日かけてもらっていたお陰で筋肉の衰えも、飢餓もなかった。言い方はおかしいかもしれないが、私をはねたのがこの公爵様でよかった。


「ありがとうございます…」


「う、うーん?私がはねた側だから、素直にどういたしましては言えないけどね?」 


「あの、どうしてここまで親切に?」


そう、公爵様に聞くと、頬を赤らめた。美形は照れていてもかっこいいんだなあとぼんやり眺める。


「最初はただ、申し訳なく思っただけだったんだ。だけど、淡い金色の髪や華奢な腕を見るうちに…君が気になって仕方なくなったんだ。私と、結婚していただkぐふぁぅ?!」


公爵様の話を遮って、扉がバーン!と開いた。


扉に轢かれた公爵様は崩れ落ちた。


「エミリー!」


そこに立っていたのは、花束を抱えた青い瞳に黒い髪の凛々しい男性。


「ラ、イ…?」


そう、ライだった。


次話完結です!


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