上
衝動的に書きました…(笑)
さくっと軽く楽しんでいただけたら嬉しいです
いつか王子様が来てくれる。そんな馬鹿げたことを幼い頃から夢見ていた。
小さな頃、私は物語の意味もわかってはいなかったが、続・あしながおじさんが好きだった。なぜ続きの方からなのかはわからないが、とにかく、あの小説が好きだった。
私にもいつか、素敵な人がやってきて、好きになってくれる。無邪気にそう信じていた。
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「エミリー、別れよう」
そう切り出されたのは唐突だった。
「どうして…?他に好きな人が?」
「いや、違うんだよ。なんかさ、エミリーって時々怖い。どこかに消えてしまいそうな、かといって事情に踏み込ませない一線がある。一年間、それを越えられると思ってきたけど、無理みたいだから。…俺も辛くなってしまって」
私は反論できなかった。確かに、踏み込まれたくない一線はある。それで彼を傷つけてしまっていたのも事実なのだろう。だとしたら、私が彼にできる一つのことは決まっている。
「…わかった。別れよう?」
すると彼は乾いた笑い声を上げ、声を湿らせた。
「…引き留めてはくれないんだね。今までありがとう、愛しいエミリー」
目に涙をいっぱいに貯めて、彼はでていった。
がらん、とした部屋を見つめてようやく気づく。
「あの立場は普通、女の子の役ではないかな…?」
私は少し笑った。よく、『君らはよくわかんないカップルだねぇ』と先輩に言われたが、確かにそうだ。なんだか、倒錯している。
「ふふっ」
変なの。
沈んだ気持ちが少し浮上する。
「お腹すいたな」
私は町のカフェに行くことにした。
失恋したら甘いもの。
決まり文句みたいな使い古しのフレーズだけど、本当に甘いものがほしくなる。今からいこうとしているところは、チーズケーキの美味しいお店で…って。微妙に甘すぎないケーキをチョイスする辺りが、普通の女の子じゃないとこなのかもな、なんて考えた。でも、本当に美味しいのだ。そこのチーズケーキは。濃厚な口のなかに絡み付くクリーミーさと、それでもしつこくはなく、すぐに口から消えて、仄かに残る柑橘の香り。想像するだけで本当においしい。にまにましていると、背後から馬の嘶きがきこえた。
「え?」
振り向けば、目の前には馬車がこちらへ横転してきたところでー。
私は意識を失った。
読んでくださってありがとうございます!
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