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オセロニア短編集

ドラマチック逆転バトル!

作者: 山岸マロニィ

 さて、チャイムと共に、放課後が始まりましたッ!


 予定通り、レン選手の席へ真っ直ぐやって来たイツキ選手。その表情に迷いはありません。

 手には……、おっと、スマホだ!愛用のiPh〇ne7をレン選手に向ける。その画面には、……逆転オセロニアであります!オセロニアでバトルを仕掛けようというのか?


 「ちょっとバハムートの性能を試したいから、付き合ってくんね?」

 ……挑発であります!バハムート難民のレン選手に対し、不遜な笑みを浮かべます!


 それに対し、レン選手は落ち着いた動作でスマホを取り出しました。……なんと、機種は、ZS600KL-BK128S8!オクタコア搭載の、最強のゲーミングスマホだっ!!

「ちょうど良かった。俺も、ルシファーの性能を試したかったんだ」

 表情は淡々としておりますが、その言動からは、マウントを取りに行く熱い闘志が感じられます!


 レン選手のスマホでオセロニアが起動される!さすがオクタコア、起動が早い!!

「じゃあ、近くで対戦な」

 イツキ選手、画面を操作して、レン選手に招待を送ります。レン選手、それを受けたーッ!


 ……令和二年二月、四周年を迎えた逆転オセロニアを、サービス開始当初からプレイしているこの二人。

 最初のカップ戦の報酬はムーニア。蘭陵王のいない時代に、壊れと非難すらあったこの駒を手に入れるため、切磋琢磨してルエドデッキを完成させて勝ち取った称号はスーパースター。望みを叶えて満足を得た反面、上には上がいるという絶望感も味わったこの二人は、文字通りの戦友であり、同時にライバルでもあります。

 四年間のオセロニアに対する情熱の積み重ねが、今ここで、雌雄を決しようとしております!!


 ローディング画面を見つめながら、祈るような表情のイツキ選手。「先手!先手!」という声が聞こえてくるようであります。

 対して、レン選手は余裕の表情。果たして、どんな作戦に出るのか?


 おっと、効果音と共に、リーダー駒が映し出されました!

 イツキ選手は、安定の闘化ラニ!そして、レン選手は……、なんと!闘化ルシファーであります!!

「ちょ!おま!ルシファー進化にスライドしたって言ってたじゃん!」

 驚きを隠せないイツキ選手。

「無料ガチャでもう一体出た」

 なんと!レン選手のガチャ運が、イツキ選手を絶望の底へと突き落としたッ!!

「マジか……」

 この表情から伺うに、イツキ選手は無料ガチャが爆死であった模様です。

 ……大丈夫、自分も爆死だったから。

 この実況をご覧になっている皆様から伝わってくる悲しい思いを、私はイツキ選手へ伝えたい。しかし、実況という立場上、それが不可能であるもどかしさも、同時にご理解いただければと思います。


 さて、画面には六×六のオセロ盤が現れました。まさに、知と知がぶつかり合う、電脳のコロッセオ!

 まだ手駒は出揃っておりませんが、ボーナスHPの表示で、黒番か白番かは判別できます。……イツキ選手が天井を見上げるリアクション!祈りも虚しく、イツキ選手は、白番、つまり、後手であるようです。


 そしてここからは、解説の御二方にもご参加いただきます。リーダーキャラでお馴染みの、蘭陵王さんとデネヴさんです!

 蘭陵王さんには、レン選手の解説を、デネヴさんにはイツキ選手の解説をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 ──よろしくお願いします。

 さて、先手黒番のレン選手のデッキ予想を、蘭陵王さんお願いします。

 ──そうですね、闘化ルシファーがリーダーである以上、魔染めデッキである事は間違いないでしょう。ミアズマというスキルの特性上、耐久寄りの、吸収や手駒ロックは入っていると思います。そして、耐久に相性の良い、毒や呪いで攻撃をするスタンスだと、私は思います。

 なるほど。では次に、デネヴさんにイツキ選手のデッキ予想をお願いします。

 ──ルシファーに勝つ方法は、ルシファーを置かれる前に速攻する!手駒運に賭ける運ゲー!これぞ、オセアニアだっ!

 ……なるほど。


 さて、それぞれ四枚の手駒が出揃ったようです。実況席の別モニターでは、両選手の画面が見えるようになっており、読者の皆様には、私の実況で、その模様をお届けをします。


 レン選手、落ち着いた表情で画面を見ています。この手駒はどうですか?蘭陵王さん。

 ──ルシファー以外、魔守護者とルキアは、順当な手駒かと思います。そして注目したいのが、進化夜行ですね。ルシファーリーダーからの夜行は、サプライズと言えるでしょう。

 一方、イツキ選手。デネヴさん、いかがですか?

 ──エンデガとヴァイセとランドタイラントが揃った。

 ……典型的な手駒事故であります。さて、この手駒でデネヴさんの言われる速攻は可能なのか……?


 やっちゃえ!ウサギちゃんたち!というラニのセリフが教室中に響き渡る!これは恥ずかしい!慌てて音量を下げるイツキ選手!抜け目のないレン選手はサイレントモードだ!

 さてここから、熱戦の火蓋は切って落とされます!


 初手が繰り出されようとしている!黒番先行、レン選手が選んだのは、……夜行だッ!

 ──予想通りですね。しかし、夜行の難しさは、盤面の取り方と運要素の強さにあります。コンボを狙いすぎると、盤面を制圧されて、回避できる場所がなくなり、夜行が盤面から消える場合もありますから、それは避けなければなりません。

 レン選手の夜行がD5に置かれました。さぁ、どうなるかな?のセリフは、レン選手の運命を表しているとも言えます。


 そしてイツキ選手。

「嘘だろ!?有り得んわ!」

 ルシファーリーダーからの初手夜行に、驚きを隠せません。そして、制限時間ギリギリまで迷った末、ヴァイセをE3に置きました。この判断は、デネヴさんいかがですか?

 ──俺なら、エンデガを捨ててた。ヴァイセは効果の違いはあれ、コンボは組める。しかし、エンデガはHPが50%を切るまで、スキルが発動できないから、コンボすらできない。それに、相手が手駒ロックを持っているのは分かり切ってる。ATKがラニよりも高いエンデガを残すのはアホだ。

 ……なるほど。勉強になります。


 そして、レン選手の二手目です。レン選手、迷わずF2にルシファーを置きました。蘭陵王さん、これはどうでしょう?

 ──近頃の傾向として、先行二手目はC2に置くパターンが多いですが、相手リーダーがラニで、しかもオーラバフがもう一枚入っている状況では、一手でも早くデバフをかけるという判断は、間違ってはいないと思います。

 そして、気になるのは夜行の行方ですね?

 ──そうです。E3に回避した場合、立ち回りによっては三コンボ以上できる可能性があるので、この50%の確率に期待したいですね。


 さて、イツキ選手の二手目。手駒に注目です。……おっと、やって来たのは、進化バハムート!イツキ選手、再び天を仰ぐ!

 ──さっさとエンデガを捨てろ!

 そうですね。デネヴさんの言う通り、ここはエンデガを捨てるしかない。苦い表情のイツキ選手、エンデガをD6に叩き付けました。

 そして、……おっとレン選手の夜行、狙い通りにE3に回避しました!

 ──運が彼を味方したようですね。

 これはグッとレン選手が有利になった!


 さて、レン選手の三ターン目。B3で二枚消し。あっ、取れちゃった……と、夜行の吸収コンボを起動した駒は、グノーです!そのスキルで、エンデガのコンボが消されました!

 しかし、グノーは盤面のコンボを二枚消せます。一枚消しで使ってしまって、大丈夫なのでしょうか、蘭陵王さん?

 ──先手で夜行があの位置にいる場合、コンボを避けるために、相手はA2に置いてくる可能性が高いと思われます。その場合、D6のコンボが後々面倒になる事が多いので、確実に消せる時に使っておきたいところです。それに、残りの手駒を見れば、妥当な判断かと。

 そうですね、レン選手の手駒はルキアと魔守護者と、そして、納涼ジュリス。バハムートを許さない意気込みが感じられますね。


 さて、追い込まれたイツキ選手。手駒に現れたのは、……クリスマス・ハーピストエンジェル!特殊ダメージ防御のスキルと、二枚消し以上で発動する強力なATK依存型コンボは、バハムートと相性がバツグンだ!!

 イツキ選手、笑いが隠せない!指をサッと動かし、……なんと!B2へ攻める!!

 ──X打ちは、相手が角マスを取らせないように立ち回ると、必ずコンボ動線ができる、速攻に相性のいい作戦だ。

 デネヴさんのおっしゃる通り、ここはレン選手、少し迷いを見せた!……そして、おもむろにC2へ置いたのは、ルキアだっ!!

 レン選手、祈るような目線を画面左上に送ります。イツキ選手も、食い入るように手駒の空欄を見つめる!

 さて、運命の女神が微笑むのは、レン選手か、イツキ選手か……?


 「ぐああああっ!!」

 叫んだのはイツキ選手だっ!手駒に現れたのは、……ジェンイー!亡き王のための意気込みも虚しく、ロックはラニ以外を固定しました!

 これには、レン選手もニンマリしています!

 ──運要素もありますが、ラニ、ランドタイラントが手駒にある事が分かり、なかなか出さないもう一枚を貴重なアタッカーだと見抜くのは容易です。当然の結果かと思います。

 ──バカか?なんでランドタイラントをラニ調整にしておかなかったッ……?

 デネヴさんが悔しそうです。やはり、手駒ロック対策というのは、それほど重要なものだという事ですね?

 ──当たり前だ!殴りデッキにとって、オーラバフを奪われるのは、致命傷に等しい……ッ!

 ──しかし、S駒が釣られるという事は、相手の手駒に高火力の駒が揃っているという意味ですので、油断はできません。デネヴさんなら、ご存知でしょう?

 ──あぁ。俺が盤面に出る時は、手駒が全てSの時しか有り得ないからな。

 そうですね。レン選手もそれに気付いたのか、表情が引き締まりました。


 イツキ選手のラニが、D2に置かれました。これはどうでしょう?

 ──B2では、相手にB1にアズリエルなど、コンボが強力な駒を置かれてしまうと、三枚消しの恐ろしいコンボルートが確定してしまいますので、それを回避するためには、妥当かと思います。

 ──それに、ラニのコンボもなかなか強力だ。ハーピストエンジェルかラニか、どちらかしかコンボは消せない。まだ望みはある!……しかし、置くならD2ではなく、A2だろ。そうすれば、ラニのコンボを警戒して、ハーピストエンジェルを消しにくくなる。

 ──それは速攻竜の考え方ですね。ラニを取られ、火力を下げられた以上、速攻よりも盤面を優先するのは、当然の事です。

 ──うるさい!盤面に出たらコンボもない木偶の坊がゴタゴタ言うな!

 ──私だって、闘化すれば……。


 ……ゴホッ。

 さ、さて、レン選手の五手目。順当に、角マスに納涼ジュリスを置きます。ルシファーのミアズマと、Sデバフ二枚置きはキツい!イツキ選手、どうする!?

「マジかよ……」

 これにはさすがに絶望の表情だ。祈りを込めた視線を手駒に向ける。……そして、笑った!!

 ──サマー・デネヴ、ですね。

 リーダー以外では最強のオーラバフが来ました!これは強い!


 ──ところでデネヴさんは、色々なお仕事をされていますね。私は、宝船に乗った事と、学年一位になるまで勉強を終われま10チャレンジだけですけど、デネヴさんが一番印象に残ったドッキリは?

 ──ドッキリと限定するところに悪意を感じずにいられないのだが。


 さて、イツキ選手のターン。ここはラニのコンボを生かしたいところだ!

「喰らえ!」

 おっと!B4にジェンイーだ!1.7倍コンボの効果はバツグンだッ!!竜戦士の力を、レン選手は思い知らされたようだっ!

「……痛ッ!」

 デバフ二枚置きで油断したのかレン選手、思わず歯を食いしばる表情!

 ──そして、ラニとジェンイーと、二つのコンボ導線ができました。恐らく、レン選手は、イツキ選手の手駒にバハムートが居る事に気付いているでしょう。次のターンにどう動くのかに、注目です。


 さて、レン選手の六手目。

 ……なんと、夜行のコンボを取りつつラニを消しながら、C1に魔守護者です!ルシファーのミアズマと合わせて2300の吸収は、かなり強い!

 しかし、これでは、イツキ選手にB1に入られ、コンボを取られてしまいますが、この辺はどうでしょう?

 ──迂闊にコンボを取ってしまうと、納涼ジュリスのコンボ導線ができてしまいます。確実にトドメが刺せるところまでは、このコンボは使えないでしょう。

 なるほど。では、イツキ選手の次の手に注目しましょう。


 イツキ選手、少し迷いましたが、バハムートを置くようです!そう、やはり場所は、B1!

 ジェンイーとのコンボで、強烈なナックルが炸裂するッ!!

 レン選手、目を閉じた!己の敗北を認めまいとする防御反応か?耐久のみで、効果的な攻撃を成し遂げていないレン選手、イツキ選手のHPはまだまだ残っている。果たして、ここから一発逆転する手段を見い出せるのか?


 さて、レン選手の七手目。手駒にあるのは、クリスマス・レーテーと、温泉・アルネ、そしてジルドレ!絶望的にアタッカーが来ません!

 ──これは厳しいですね……。

 レン選手、悩んでおります。時間ギリギリまで思考の迷宮を彷徨い、やがて出した結論は……?


 祈るように置いた駒は、ジルドレだっ!C1の守護者とのコンボを取りつつ、A3に置いたっ!

 イツキ選手にとって、この罠の存在はどうですか?デネヴさん。

 ──嫌すぎるな。ジェンイー、バハムートの貫通二枚を使ってしまった以上、回避する手段がない。

 イツキ選手は悩んでいる。脳内では、この一手で飛ばし切る事ができるのか、それとも、軽い攻撃でダメージを軽減すべきか、計算機がフル稼働しているようです。

 ──しかし、こちらはまだこんなにHPが残っている。罠で弾かれたところで即死はしない。思い切ってブチ込めばいい!


 デネヴさんの声援が伝わったのでしょうか?イツキ選手が顔を上げました。

 そして、選んだ駒は、……オキクルミ!ジェンイーとのコンボ導線が生きている、E1に撃ち込んだッ!!

 レン選手、目を見開きました!まるで自分の身にダメージを受けたかのような、そんな表情です!

 レン選手のジルドレが反応!特殊ダメージを、……返したッ!

 ……という事は、レン選手、この攻撃を凌いだッ!

「……嘘だろ!?」

 イツキ選手、頭を抱える!レン選手は安堵の表情だ。

 ……なんと、レン選手、HP3で生き残ったッ!!

「俺もダメだと思った」


 実況席の我々も手に汗握る、白熱の展開となっております!デネヴさん、いかがですか?

 ──生き残りはしたが、こちらはまだ圧倒的にHPが残っている。この差を一撃で飛ばす事は……。

 ──強力なダブルコンボの五枚抜き導線ができています。魔守護者とジルドレです。イツキ選手も分かってはいたでしょうが、これで試合終了にできると勝負に出たのでしょう。アタッカーさえ手駒に来れば、レン選手の逆転の可能性はあります。


 さて、レン選手の様子ですが……、笑顔です!その口元に、不敵な笑みを浮かべています!

「楽しいなぁ、オイ」

 ……このセリフは、まさかの勝利宣言か?それとも、絶望に打ちひしがれた開き直りか?レン選手の指が動く!


 ……アエーシュマです!まさかのアエーシュマであります!二倍かける二倍に、五枚抜きボーナスが乗算されます!それに、4.5倍の特殊ダメージが乗ってくる!恐ろしい、恐ろしい火力だッ!!

 イツキ選手の全てのHPが一気に吹き飛んだッッ!!

 レン選手の画面に踊る、YOU WINの文字!勝負は決したッ!!


 「………」

 イツキ選手は無言です。言葉を失った表情は、対戦の敗北だけでなく、アエーシュマをデッキに組み込むという、レン選手の捨て身の作戦への敗北をも認めたものでありましょうか。

 ──あれは無理だ。絶対に読めない。

 ──見事、としか言いようがありませんね。

 解説の御二方からも賞賛の声が上がっています。

 これぞ、逆転オセロニア!素晴らしい試合でしたね。私も感服いたしました、



 「じゃあイツキ、ジュースを奢れよ」

「……は?聞いてねぇし」

「じゃあ、ジュースを賭けて、もう一回やるか?」

「望むところだ!」

 両選手、デッキを組み替えます。


 ──呼ばれたようです。

 ──俺もだ。じゃあな。

 では、解説の蘭陵王さん、デネヴさん、ありがとうございました。


 そして、この続きはゲーム内でお届けする事にしましょう。

 ご拝読、ありがとうございました!

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