プロローグ
高校2年の夏、部活に入っていない私こと望田 咲良は、東京で働いている姉 望田 彩奈の元に遊びに行っていた。
異世界漫画が大好きな私は、親という監視役が居ないことにより、毎日が幸せだった。
ある日、彩奈が突然
「この乙ゲーやっといて。もちろん、選択ミスは許さないから♡」
「はぁ!?絶対やだ!」
「母さんに、咲良は〜マンガ大好きな〜オタクだって言っていいの〜?」
「ダ、ダメ!」
「じゃあ〜やってくれるよね?(*^^*)」
「ぁ…ぇ…あの…」
「旅行から帰ってきたら、欲しい漫画10冊買ってあげる。」
「やります!!!!」
「ありがと♡じゃあ、ここに攻略本置いとくから、よ・ろ・し・く♡」
「あいあいさー!」
タイムリミットは、彩奈が旅行から帰ってくるまでの1週間。
「まずは、攻略本から!1日で網羅する!!」
そう意気込んで私はペラペラと攻略本を読んでいった。
「フゥー。読み終わった…」
私が読み終わったのは次の日の朝だった。徹夜で読んだが、テスト前の勉強よりかは幾分かマシだ。とりあえず、オタバレが怖いのでさっさとゲームに取りかかる。
このゲームの名前は 『ローズマリーの刻限に』通称ロー刻。中世っぽい時代の剣と魔法がある国で、王子様やその他の攻略対象と恋に落ちたり、落ちなかったりする乙女ゲーム。彩奈が狙っているのはもちろん、SuperHappy Endと呼ばれる最高の結末である。イケメンが描かれたキラッキラのスチルが手に入るらしい。
ハッキリ言って興味が無い。私はキラッキラの王子様よりも、すごく紳士的で、ダンディーで笑顔のステキなおじ様の方が断然いい!
まぁ、私の趣味は置いといて。しばらくこのゲームをしていて思った。このゲームに出てくる悪役令嬢、死に過ぎじゃない!?この悪役令嬢は、ほとんどのルートで殺されている。確かにいじめは良くない。「いじめダメ!ゼッタイ!」だけど、こんな美人普通殺す!?このゲームに出てくる攻略キャラは、どうやら常識というものが少しばかり抜けているらしい。
「私なら、絶対友達になるのに…」
そんなことを呟きながら全ての攻略キャラを彩奈が帰ってくるまでにどうにかクリアすることが出来た。
「やっとクリア出来たぁ…。とりあえず、寝るか…」
久々の睡眠!さすがに1週間ずっとは無理だったけど、3徹まではいけた。
「やっぱ、3徹はJKには辛いっすねぇ〜。彩奈が帰ってくるのは明日の夕方だから、それまでに起きればいっか。。。」
そんなことを呟いていると
『ガチャ』
と、玄関の方から音がした。念の為、もう一度言っておこう。今の私は3徹目で、頭がほとんど回っていない状況である。
「おかえり〜。私寝るから、明日の朝起こして〜。」
そんなことを言いながら、私は眠りについた。
ここまでが、私がかつて望田 咲良として生きていた記憶である。その後の記憶が無いことから、恐らくあの時ドアを開けて入ってきたのは不審者か何かで、寝ている間に殺されたのだろう。だが、私は今確実に生きている。それも、『ローズマリーの刻限に』の主人公、エリザ・マートンとして…