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第7話 異世界との会談

ー同日 午前10時40分頃 ベルリア王国 王都ザレンドルフ 王城前大通りー


ソ連外交団は窓から見える景色に目を奪われていた。多くの種族が共存して暮らし、街並みは中世ヨーロッパより少し昔風ぐらいだが、一人一人の顔が笑顔な表情をしているのが感じ取れる。


「これはこれは、なんと素晴らしいことか……」


恐らく東側諸国や西側諸国の街並みではない光景だ。多分護衛についている海軍兵士達も同じことを思ってるに違いない。そんな様子を見ていたファリル達は少し誇らしげな気分で王都の歴史などを話していた。


そして馬車の窓の光景を見ていると、そこには一際大きい建物が見えてきた。どうやらあの建物が王城らしいそうだ。馬車が正門を通過すると、馬車は王城の中枢みたいな場所の入口前に到着した。


ファリル達やソ連外交団、海軍兵士達が馬車からゆっくりと降りると、入口前には沢山の近衛兵が列をなして彼らを歓迎していた。


(我々は国賓級の歓迎を受けているな、初対面の国でもこれほど歓迎するとは……これがこの世界の掟なのか?)


中に入ると、広々とした空間が広がっており、彼らの前にはメイドと執事が待っていた。するとメイドの一人が彼らに挨拶をする。


「ソビエト連邦外交団御一行様、本日はベルリア王国にようこそおいでくださいました。本日は国王に仕えし私達が会談が行われる場所にご案内いたしますので、どうぞこちらにお越しください。」


そう言うと外交団と護衛の海軍兵士達はメイドや執事と一緒についていく。


(にしても広いな…流石は異世界ってところだな。)


しばらく歩いていると、ソ連外交団は他の扉とは違う金が施された大きい扉の前に到着した。


「こちらが会談の場所となります。只今から国王様と政務官に準備がよろしいかご確認してきますので、その場で少々お待ち下さい。」


メイドの一人が大きい扉をノックした後、ゆっくりと開けてもう一人のメイドと一緒に中へと入っていった。


(もうじきで異世界との会談か…我々の技術力や軍事力、そして敵対関係だった西側諸国の首都等を集めた写真を見たらどんな顔をするだろうか。実に楽しみだ。)


グロムイコが会談に期待をしながら待っていると、大きな扉が再び開いた。そこにはさっきのメイドがいた。


「会談の準備が整いましたので、どうぞお入りください。」


二人のメイドが両方の扉を全開にすると、ソ連外交団は国王と政務官が待っている謁見の間に入室した。


謁見の間には、豪華な装飾が施されており、シャンデリアといったものが飾られていた。すると、ソ連外交団が入室したことに気がついた国王は、自ら彼らに歩み寄った。その顔は立派な髭はしていないものの、少し温和そうな顔をしていた。


「おお、これはこれは。我が王国にようこそいらっしゃいました。私は国王のコルンシオ・ヴィルトと申します。あなたがたがソビエト連邦の外交団でございますか?」


「はい。私はソビエト連邦外交団団長のアンドレイ・グロムイコと申します。本日は我が国との会談に承諾していただきとても光栄です。」


「いえいえ、私も貴国に会談ができるのはとても素晴らしい出来事でございます。では、こちらにご着席ください。」


国王の指示でソ連外交団は、高級感のあるソファーに座った。そして、国王と政務官達を交えた会談が始まった。


「では早速ですが、貴国は我が国との国交を締結するためにこちらにいらっしゃった、間違いありませんか?」


「はい、合っています。ですが、まずそちらに我々が転移する前の世界の写真と、我が国の提案を紙に書いたものを見せていこうと思います。」


そう言うとグロムイコは、外交団の仲間が持っていた鞄を開けると、多くの写真や文書が出てきた。まず最初に彼らが机の上に置いたのは、ソ連地上軍の戦車が数多く列をなしている写真だった。これを見た国王や政務官は顔をしかめる。


「あの、それは何の写真でございますか…?」


「こちらは我が国の軍が写った写真です。この写真は、戦車と呼ばれる、火力、装甲、機動がバランス良く揃った完璧な兵器でございます。」


「センシャ、ですか…」


これを聞いた国王達は、その写真を思わず二度見するが、そんなことお構いなしにグロムイコから次々と写真が机の上に並べながら置かれていく。それらの写真も、彼らの常識が通じないものばかりだった。


(これはとんでもない国と遭遇してしまったな…さっき見たあのセンシャと呼ばれる兵器は喉から手が出るぐらいほしい。だがもっとすごいのは、彼らがもといた世界全体もまた同様の技術力かそれ以上に発展していることだな……あの世界での戦争は一体どんな規模なのか想像しづらい。)


国王は並べられた写真をじっくり見ながらそう思っていた。全部を見終えると、国王は国の体制に関することを聞き始めた。


「貴国は、宗教というものはありますでしょうか?」


「宗教ですか?ありませんね。というよりも我が国は基本的に無神論という、いわば神なんかは存在しないという考えなんです。宗教なんてただの災いの種でしかないですから。」


すると、今度はペンと外交文書みたいなのが彼らの前に置かれた。それを手にした国王は少し苦い表情をした。何故なら文書に書いてあるキリル文字が読めないからだ。


「すみませんが、この文書に書いてある字が読めないので、内容を口で言ってもらえないでしょうか…?」


「はい、分かりました。」


グロムイコは嫌な顔をせず国王と政務官に対して書いてあることを説明し始めた。


その内容をおおまかにいうと。


・貴国と友好的な関係で国交を結びたい。


・国交を結ぶ条件として、貴国が有事の際にソビエト連邦軍が軍事介入することに同意してもらいたい。


・貴国の領土の一部を我が国の領土として編入するのでそれを認めてもらいたい。


・これらに同意しなければ貴国との国交締結を取り止めにし、貴国を我が国の一部分とするため軍を派遣する。


というベルリア王国にとっては同意しても少し無利益、拒否すれば戦争な内容だった。だがベルリア王国はアルテガシア王国といつ戦争してもおかしくない状況だったので、ソ連軍がベルリア王国とアルテガシア王国と戦争になった際に軍事介入するというのはそれはそれでありがたかった。


(軍の駐屯か…ソビエトが軍を我が国に置くともなればアルテガシア王国と対抗するにはかなり有利だ。ただし我が王国の領土の一部をソビエトに編入させるという条件付きか…。まあ仕方ない、あの写真を見るからに彼らは大陸の全国家を集めてしても到底敵わない軍事力を持ってそうだ。そんな最強の軍がここに駐屯してくれるのだから、この世界の列強が出す不可能な要求に比べたらまだいい。)


国王は考えながら、一先ず内容を整理していくと、決断をした。


「分かりました。貴国の提案に同意します。」


グロムイコはこの答えに感情を表には出さなかったが、少し嬉しかった。


「ご協力いただき感謝します。では、こちらにサインをお願いします。」


国王は文書の下にある欄にサインをする。


「これでよろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫です。」


その後ソ連に譲渡する領土について話し合った後、ベルリア王国との最初の会談で国交締結することに決定し、およそ2時間半で終了した。



ー午後1時10分頃 王城内 来客室ー


「グロムイコ様、何かありましたらこちらのベルを鳴らしてください!メイドがすぐに来てくれますので!本日はお疲れ様でした。」


ファリルが来客室を去ると、ソ連外交団はソファーにひといきついた。


「同志お疲れ様です。」


ソ連海軍兵士の一人がグロムイコに水を差し出すと、グロムイコはほっとしたかのように水をゆっくり飲んだ。


「ハァー、何とか異世界との国交締結が運良く出来たものの、果たして列強がらみの戦争に巻き込まれたりしないだろうか…」


「国交を締結させるための条件は別として、我が国がどれほどの軍事力と技術力を持っているのかが彼らに理解できたと思います。なんせ我が国のモスクワの町並みの写真を見たぐらいで驚いていたぐらいですからね。」


「…我々含め条約機構が異世界に飛ばされて数週間、はやくも異世界から領土を獲得が出来た。異世界の国からもらった領土を開拓して、そこに条約機構の軍事拠点とかを置いたりするのもいいな。とにかくもらった領土を上手に有効活用しないとな。どうせこの世界の列強国なんか共存共栄を否定する帝国主義に満ちているに違いない。だから帝国主義という思想から人民を解放させるための拠点になるだろう。もしかしたらこの場所が苦しむ人民にとってのオアシスになるかもな。」


「そうですね。」


その後も外交団と海軍兵士達との和やかな会話は続いた。だがそれと同時に、ベルリア王国と国境が隣り合わせのアルテガシア王国が着々と国境に軍を集結させていた。



ー同日午後10時20分 アルテガシア王国 ベルリア王国国境沿いにある仮設司令部にてー


ソ連外交団含め多くの住民が寝床についていた頃、アルテガシア王国とベルリア王国の国境沿いにある平原では、数多くの兵士たちがベルリア王国側に体を向けながら将軍からの命令を待っていた。


(侵攻開始まであと10分か、この戦いでついに終わることになるとはな…もう大陸統一も夢ではなくなるな。)


彼の名はストルナデル、今回の戦争での全部隊を指揮することになった人間だ。


「ストルナデル殿、たったいま作戦戦力がこちらに完全に集結しました。」


伝達兵が彼に報告しに来た。


「そうか…で、今回の戦いでの戦力の詳細は?」


「はっ、歩兵師団が2師団、奴隷兵師団が3師団、騎士団がおよそ2師団、重騎兵師団が1師団、そして飛竜騎士団が5師団、以上の編成になります。」


「国もかなり戦力を投入しているな、伝達ご苦労。」


そう言うと伝達兵は、魔信がある司令部の中へと去っていった。


そして時間が午後10時30分ちょうどになり、ストルナデル将軍は愛用の芦毛の馬に乗ると、平野全体に聞こえるような声で言い放った。


「攻撃開始ぃぃぃ!!!」


「「「「うぉぉぉぉ!!!!」」」


ストルナデル将軍の合図で、地上にいる兵士達と空にいる飛竜騎士団は一斉にベルリア王国へと進み始めた。


こうしてアルテガシア王国が、ベルリア王国への侵攻を開始するのだが、彼らは後に参戦するソビエト連邦軍の凄まじい攻撃によって殲滅され、アルテガシア王国が瓦礫と死体の山と化することをまだ知らない。


次回は早々とソ連軍が動き出します。

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