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第6話 会談前の移動中にて

ー新天暦1812年 11月15日 午前9時20分 ベルリア王国 港町ユリールクー


王国の貿易拠点として、様々な商船と多くの商人で賑わっている港町ユリールク。しかし、この日に限っては別の意味で賑わっていた。理由はベルリア王国付近に現れたソビエト連邦の外交団がこの港町に来港するからである。そのおかげで港は警備が厳しくなっており、付近で

ソビエト連邦の外交団が来るのを待っている住民からは数多くの噂が流れ込んでいた。


「なあ、聞いたかあの噂!」


「ああもちろん、ここにソビエトのお偉いさんが来港するっていうから王都から飛び出してきたよ!」


「ソビエトってどんな国なんだ?」


「俺は角が生えた亜人族の国だと聞いたぞ!」


「そうか?こっちは俺らが知ってる列強国なんかより強い国って聞いたぞ!」


「もしかしたら新しく出来たエルフの国じゃないのか?」


住民達は、詳しいことが謎の国ソビエトの噂があちらこちらで共有されていた。



ーーおよそ一時間後


港にある木製の桟橋には、髪が少し長い中年ぐらいの男一人と、彼を護衛する兵士5人がいた。


「…ソビエトか。一体ソビエト連邦はどんな国なんだろうか…」


ベルリア王国外務使臣のアグラス・ファリルは、他の従者と護衛の兵士を連れて、ソビエト連邦の外交団が来港するのを待っていた。


「アグラス殿、ソビエト連邦の船がこの目で見れるのが楽しみですね!」


「そうだな。もしかしたら我々が見たことがない素晴らしいものを連れてきそうだな。」


「はい!」


そう会話していると、海の向こうからソビエト連邦の船団が近づいてきた。


その船団がだんだんと港に近づくにつれて、アグラス含め港近くにいた人々全員が、その圧倒的な数と本当に鋼鉄で出来ていることに驚愕した。


(な、なんて数が多いんだ!?海の向こうに見える船舶が我が国の軍艦なんかじゃ比にならないぐらい大きいぞ!しかも鋼鉄で出来ていて帆がないのに進んでおる!やはり軍部が言っていた鋼鉄の船は本当だったのか!)


港に向かおうとしていたソビエト連邦の船団は少し離れた沖合で停船した。港はソ連の軍港に比べとても浅いので停泊出来ないと気付いた。すると、ソ連海軍の揚陸艦『イワン・ロゴフ』から一隻の小型船みたいなのが出てきた。これも鋼鉄で出来てはいるが、小型船の下部分が膨らんだ黒いので出来ており、さらにとても高速だったのが気になった。ソ連海軍のホバークラフトである。


ホバークラフトが彼らが待っている桟橋に停泊すると、中からスーツを着た男3人と兵士約10人が出てきた。


(ほぅ…ソビエトは人間の国なのか。連邦だと聞いたので数多の種族が住んでいるかと思われたが、これは意外だ。それにしても、あの小型船からなぜあれほど兵士が出てきたのだろうか?護衛にしてはかなり多いぞ。ん?あの兵士とは違った服装のあの3人が外交団か?)


頭の中でそう考えていると、ホバークラフトから外交団と護衛が降船し、彼らの前に近寄った。


「はじめまして、我々はソビエト連邦外交団団長のアンドレイ・グロムイコと申します。この度は我々との会談を承諾いただきありがとうございます。」


「(意外と礼儀正しいな…)……私はベルリア王国外務使臣のアグラス・ファリルと申します。こちらこそ、我々に対して会談をご提案いただきありがとうございます。あちらに王都へと向かう馬車がございますので、どうぞこちらに。」


「お気遣い感謝します。」


ソ連外交団と護衛は、ファリルの指示のとおりについていった。そこには外交団とファリル達が乗る馬車と護衛のみが乗る馬車含め計3台が用意されていた。そしてソ連外交団は王城へと向かうべく出発をする。


馬車が出発して数分後には、外交団はファリルに対してこの世界に関することを質問し始める。


「申し訳ありませんが、王城に到着するまでの間、この世界に関することを質問して宜しいでしょうか?我々は転移国家ですので未だ詳しいことが掴めていませんので。」


「はい、もちろん構いませんよ。私が知ってるぐらいまでですが。」


「ありがとうございます。では早速ですが、この世界にはどれほどの種族が存在するのでしょうか?」


「そうですな……」

彼は以下のことを説明してくれた。


===

この世界には、おおまかに6つの種族が存在している。


○人間

・この世界で一番多く割合を占めている種族。肌の違いや文化の違いは多少あるが、基本的に言語は統一されている。(ちなみに話す言葉は変わらなくても文字は大陸によって異なるらしい)


・この世界には高度文明国家というのが存在し、その中でも優れている国7つは、7大列強国と呼ばれている。因みに7大列強国は『エルナヴィア共和国』『マルテヴァダ帝国』『リルヴァイン連合王国』『オーデマニア=ガルーシャ二重帝国』『フォーランツ連邦』『バーネング皇国』『ロストーラ大帝国』がある。なお列強国に成り上がりそうな国や、勢力が衰退している列強国は準列強国という扱いを受けている。


○エルフ族

・寿命がかなり長く、生まれつき魔力に長けている種族。噂話ではおよそ2万年生きているが容姿が若いままのエルフもいるらしく、人口は2番目に多い。彼らは主に深い森に生活しているが、一部のエルフは森から離れて都市部に生活する者もいる。この大陸から南東辺りに離れた場所にエルフのみで構成されている国『エルーシア神聖国』がある。


○ドワーフ族

・採掘や加工、建築に長けた種族。人口割合では3番目に多く、身長は人間に比べ小さいが力は強く、寿命は人間とそう変わらない。(この世界での人間の寿命はおよそ70歳くらい)彼らの国は『パルガリズ王国』。


○魔人族

・この世界で一番嫌われている種族。その原因は悪魔的かつ凶暴的な容姿からだ。元々彼らは『エタシク王国』という王国を築いていたが、神の怒りに触れてしまったあげく滅んだ。現在魔人族を目撃したという事例はない。


○猫耳族

・この世界で4番目に多い種族。性格は自由奔放で単独行動を好んでいる。外見は猫耳としっぽがある以外人間と変わらない。猫本来の特性の俊敏さと夜目の良さは残ってることから軍の偵察員などに雇われたりしているが、それほど多くはない。彼らの国は『ミョガル王国』。


○犬耳族

・猫耳族の次に多い人口を持つ種族。猫耳族同様犬耳としっぽがあるが、猫耳族とは反対に集団行動を好み、結束力が強い。忠誠心が高いので、戦争の際に自ら身代わりになって犠牲になることも少なくない。彼らの国は『ザウレリエ王国』。


○兎耳族

・耳の聴力と足の速さが人間より優れた特徴を持つ種族。人口は6番目。学習能力が高いことから、複雑なこともすぐに覚えることが出来る利点があるが、その反面興味がないことにはあまり覚えにくい。彼らの国は『イッティラ国』


これら意外にもこの世界には多くの種族が存在している。


===


「……といった所ですね。」


「なるほど、それにしても何故これほどまで人間に似た種族が生まれたんですか?」


「分かりません。いくら種族の事が話せても、私はそれの元祖を語れるほどの知識はありませんから。」


「そうでしたか…失礼しました。では次に魔法に関する事を説明していただけませんか?」


「────ッ!?」


この発言にファリル達は驚きを隠せなかった。この世界にとって魔法は国の発展を支えるのには基本的な材料、切っても切れない関係のようなものだ。元から魔法なしに発展してきた国はあるにはある、だが列強と肩を並べれるほどの国はない。ではなぜ魔法なしの国がこれほど発展しているのかが謎で仕方なく、ファリルはソ連外交団に身を乗り出すように詰め寄った。


「で、ではあの船は、一体何で動いているんですか!?大量の魔法鉱石が動かしているのではないのですか!?」


「魔法鉱石とういうのがどういったものかは知りませんが、我々は基本的に魔法とういう概念はありませんし、元いた世界でも魔法は存在していません。」


「じゃあどうやって動いているんですか?」


「我々は科学とういうのを駆使して発展してきました。これは我々が元いた世界も同じことです。なので貴方が見た船は科学の力で動いていて、その中のガスタービンとういうのです。あと我々が乗って来た小さい船はホバークラフトとういうものです。」


「がすたーびん?ほばーくらふと?それって魔法科学か何かですか?」


「先ほど申し上げたように、我々は科学で発展はしましたが魔法は使っていません。それより魔法に関することを…」


「え?あっ、はい失礼しました!ええ、まず魔法は空気中の『マナ』とういうものを集めて使用する方法と、魔法鉱石を使用する方法があります。『マナ』を使う方法は主に火炎魔法や氷魔法、土魔法といった規模が中小ぐらいの魔法に使われます。魔法鉱石はその逆で風魔法や爆裂魔法、雷魔法といった規模が大きい魔法に使われます。『マナ』は空気中にありふれていますが、魔法鉱石は一部地域しか採掘が出来ないという欠点があります。」


「なるほど、魔法鉱石は我々でいうところの石油みたいなものですか…ですが一部地域しか出ない魔法鉱石をなぜ使ったりするのですか?」


「実は魔法鉱石の用途は、魔法に使用するだけでなく、武器や防具といった物にも使うことが出来るんです。これらは少しの攻撃や軽い魔法攻撃を防げれる事も出来ますし、武器ともなると魔法無しの攻撃よりも数倍威力が上がります。中には『魔導砲』というのもありますが、そのほとんどが高度文明圏国家にしか出回ってないので、文明圏外国家からすれば希有な存在です。」


「そうですか、では次に我々の衛星国が調査をした際に遭遇したドラゴンについて教えてくれませんか?」


「ドラゴンですか?ああ、飛竜騎士団のことですね!この世界では飛竜と呼ばれる生物が多くの国に兵器として使われています。なにしろ空から地上にいる敵を攻撃が出来るのですからね。飛竜というのは軍にとって戦争を左右するもの、なので飛竜の数で戦争の行く末が分かるぐらいです。ですが飛竜はあくまで生物ですので、餌といった面倒を見ないといけませんから、かなり手間と費用がかかります。」


「色々と大変なわけですね……」


「えぇ…。あ、もうすぐで会談が行われる王城に到着しますぞ。」


ソ連外交団とファリル達との会話が弾んでいた最中に、馬車は王都ザレンドルフに到着しようとしていた。


ソ連外交団はまもなく王城に到着し、ソビエト連邦にとって初となる異世界の国との会談がこれから始まろうとしていた。

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