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第4話 明るみになる条約機構周辺、そして…

ー1978年 11月9日 午前10時30分 ベルリア王国 王国近海上空ー


朝6時にルーマニアを出発し、その後謎の大陸を発見し大陸の一部の調査を行ったルーマニア空軍の偵察部隊は、ベルリア王国からの飛竜騎士団による追跡をかわしていたが、どこを調査しても結局は飛竜騎士団のしつこい追跡に遭い、予定よりも短い時間で調査を切り上げることにした。彼らは今、調査結果を報告すべくルーマニアへと帰還する途中だ。


「おいおい、この大陸にまさかドラゴンがいるだなんて信じられないぞ。しかもあいつら俺らのことをまるで敵みたいに追跡しだすから調査もこうもない。まあ攻撃されなかったから戦争にならずに済んだがな。」


An-30のパイロットが無線で呟くと、護衛の戦闘機が返答する。


「多分彼らの常識を考えれば追跡するのも仕方ない、俺らはドラゴンそのものがこの大陸で存在してることが有り得ないと思っているみたいに、別世界の人間もまさかドラゴン以外に飛ぶものがあったなんて有り得ないって思ってるだろう。だからあいつらが俺らを追跡するのもおかしくはないし、むしろあいつらにとってはそれが任務だからしょうがない。だがいくらなんでもあのしつこさは流石にやりすぎだと俺も思うがな……」


ルーマニア空軍の偵察部隊は、大陸で調査を行っている際、王国沖で最初に遭遇した時を含め計6回もベルリア王国の飛竜騎士団の追跡に遭っているのだ。そのため、大陸の調査と王国の飛竜騎士団両方に神経を集中させることが必要なためとても疲労が溜まった。そのため、パイロットの健康を考え早々と切り上げることにしたのだ。


「まあいいじゃないか、調査をした分は俺らが飛ばされた未知なる世界の情報が加盟国内に共有されて、少しでも明るみになるんだ。これほどやりがいがある任務はこれ以上ないと俺は思うな。」


「確かに、俺も同じだ。」


「はいはい分かったよ、だけどまだ仕事は終わりじゃないからな。本国に帰ったらそれらを報告書に書くという面倒くさい作業が残ってるぜ。それじゃ、まず最初に報告書に何て書こうか?」


「そうだな……」


報告書に書く内容についての話は、ルーマニア本国の空軍基地に帰還しても続いた。



ー新天歴1812年 ベルリア王国 王都ザレンドルフ 王城 会議室ー


王国の政治中心部の都市ザレンドルフ。ザレンドルフの中で一番大きな中央通りには国王が在住している王城が隣接している。その王城内にある会議室では、政務官や軍部が集結していた。


国王によって会議室に呼び出された政務官達や軍部の顔は真面目な顔をしていたが、一部は早く終わってほしいそうな顔もいた。


「さて、今回の不測の事態に対して皆はどう捉えるべきだろうか。今一度諸君らの意見を確認したい。」


彼はベルリア王国国王コルンシオ・ヴィルト。今回の会議に軍部や政務官達を集めさせた人物だ。


「軍部から話させていただきます。我々軍部の見解では、恐らく周辺諸国に侵攻を繰り返しているアルテガシア王国の新兵器かと思われます。追跡に出向かせた飛竜騎士団に対して攻撃をしなかったことから、これは恐らく偵察行動の類いでしょう。なので、これは王国に攻撃を仕掛ける前兆と捉えてもいいのではないでしょうか。」


すると政務官達はすぐさま反論しだす。


「王国に攻撃を仕掛ける前兆だと?ふざけたことを言うな軍部!どこを根拠にそう捉えた!」


「いいか政務官達!君達の平和主義の考えはいい加減にしろ!いつあの侵略国家と戦争になるか分からないんだぞ!」


「だがまだ講和で解決出来る時間は──」


「講和で解決だと?他の国々があの侵略国家に占領されてる時点で講和で解決出来てもとっくに遅いぞ!占領されてる国々はどうするつもりなんだ!そのまま見棄てるつもりか!」


「そうだそうだ!大陸に残ってる国々で団結し…」


いつの間にか政務官達と軍部達の言い争いに発展しているのを見ていた国王はあきれた表情で大きな溜め息をつくと、国王は声に力を入れて言う。


「もういい加減にせぬか!」


すると、さっきまで言い争い状態だった政務官や軍部は静まり返り、元の静寂な状態に戻った。


「だいたいあの侵略国家が飛竜ですら追い付くことが出来ない航空兵器を開発できるほどの技術力はないはずだ。そんな航空兵器は列強国ですら一部しかないのにここの大陸だったら尚更だ。」


すると、軍部の参謀長が発言をする。


「国王様、確かにあの国は飛竜より速い航空兵器を製造するのは技術的に不可能です。ですがもしかすると裏で列強国があの侵略国家に技術援助をしている可能性もありえます。」


「うむ…その可能性も充分にありえる。だが奴らは穏和そうに見えて他の種族を見下すという悪い癖がある、そんな民族なんかに列強国は技術援助なんかしてくれると思うか?」


「まあ確かに一部の列強国はプライドが高いですし、あの国が列強国に見下しなんかすればそう簡単に技術援助はしません。むしろ宣戦布告を選択するでしょうね……」


「……まあともかく、アルテガシア王国が我が王国に牙を向けるのはもはや時間の問題だ。我々は宣戦布告されるまでに列強国からの軍事支援がない限り、地の利を生かしての戦いになるだろう。だから皆の者はいつ戦争に突入してもいいように準備をするしか他ならない。いいか?」


「「「はっ!!」」」


政務官や軍部が一斉に起立して返事をし、会議は終了した。



ー1978年 11月9日 午後8時20分 ソビエト連邦 モスクワ カザコフ館 書記長執務室ー


ワルシャワ条約機構加盟国総出で行われた周辺の探索が終了していた頃、カザコフ館にある書記長執務室では、ブレジネフが調査報告を待っていた。


(まだだろうか…かれこれ十時間ぐらいは待っているが、やはり我々は衛星国共々地球から孤立してしまったのだろうか。それとも……)


ブレジネフが心配を抱えながら執務室のデスクで黙り込んでいると、突如執務室のドアからノックが鳴った。


「同志書記長、入室して宜しいでしょうか?」


その声は、ソ連国家保安委員会(KGB)議長のユーリ・アンドロポフだった。彼は後にブレジネフ死去後次の書記長となる。


「ああ、入っていいぞ。」


ブレジネフが許可をすると、ドアはゆっくりと開いた。そこには眼鏡をかけた年老いた男性と若いKGB職員4名の計5名がブレジネフの執務室の中に入室する。


「同志書記長、貴方が心待ちにしていたワルシャワ条約機構総出による全方面の調査が完了し、調査結果が出たことを報告します。」


「そうか、ん?なんだその大きい紙は?」


ブレジネフは職員が手に持っている丸めた大きい紙に目を向ける。


「これでしょうか?これは調査結果を報告する際に使用します。同志書記長、只今から報告しますのでこちらに来てくださいますか?」


アンドロポフが落ち着いた口調で言うと、ブレジネフは椅子から立ち、広い机のほうに移動をする。


移動したのを確認した職員の一人が、手に持っていた紙を机に広げる。その紙はソビエト連邦と東ヨーロッパの地図だった。すると、アンドロポフの説明が始まる。


「加盟国総出で周辺を調査した結果、ワルシャワ条約機構は地球と異なった異世界へと転移していたことが判明しました。我が国含め各国が指定された域をくまなく調査をしたところ、本来陸続きだった場所はほとんど海に囲まれていました。ですが一部の報告書からは、どうやら調査中に陸みたいなのを発見したという報告があります。」


アンドロポフの説明は続く。


「報告書の詳細を調べたところ、陸みたいなのが発見されたのは、ルーマニアから南東におよそ630km地点、我が国最東端のデジニョフ岬から東におよそ90km地点、東ドイツから西におよそ230km地点、ポーランドから北西におよそ890km地点といったところです。」


そう説明しながら言うと、アンドロポフは陸みたいなのが発見された場所に赤色のペンで丸を囲む。ブレジネフは興味深そうに赤く丸で囲まれた場所を見ていた。


「更に言うと、発見された大陸には都市みたいな人工物の集まりや、ドラゴンみたいなのと遭遇したといった情報もあります。こちらが一部の大陸で発見されたドラゴンを写した写真です。」


そう言うとアンドロポフは地図の上にその写真を置いた。その写真には、ベルリア王国の飛竜騎士団が必死に追跡をしている姿が捉えられている。


「ふむ、まさか異世界にドラゴンがあったとはな……しかもこれ、よく見てみると何やら人みたいなのが馬みたいにドラゴンの上に乗っているぞ。これについて何か分かることはあるか?」


「いいえ、ありません。恐らく別世界の航空兵器かなんかじゃないでしょうか?諜報機関だとはいえど、我々もそこまで見てはいませんので。」


「そうか…まあいい、とりあえず未解明だった条約機構周辺は解明出来た。さて、大陸があるであろう位置が分かったことだ、条約機構代表として我が国の外交官を大陸に派遣して、もしそこに国があれば国交締結もありえる。だがもし異世界と初接触の日に戦争なんかが勃発した時のためにソ連海軍の空母も派遣してくれ。何より我が国の力を見せないとな。」


「そうですね。やはり異世界とはいえど、我が国の国力を誇示しないと異世界の国に嘲笑されたりしますからね。」


「ああ、今日はありがとうアンドロポフ。おかげで私の不安が収まったよ。」


「いえいえ同志書記長、これも祖国いや、条約機構のためですから。」


そう言うとアンドロポフは、若い職員達と一緒に書記長執務室を退室した。


この報告からおよそ一週間後の11月11日に、ソビエト連邦はソ連外交団を搭乗させたキエフ級空母一番艦『キエフ』率いる新たに編成された異方艦隊がルーマニアから南東に630km離れた大陸へと向かうことになった。


そして今、異世界の国との接触が始まろうとしていた。

ついに条約機構代表のソ連が異世界へと足を踏みます!

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